働き方改革推進ゼミナール~生産性向上と労働環境改善を両立するために 企画開発本部長 百瀬 康倫インタビュー

働き方改革推進ゼミナール~生産性向上と労働環境改善を両立するために 企画開発本部長 百瀬 康倫インタビュー

そもそも働き方改革は、なぜ必要なのか

働き方改革が必要となる大前提として、生産年齢人口の減少があります。平成29年第1回経済財政諮問会議では、2016年から2040年までに約105万人の人口減少が生じ、それに伴って就業者数も200万人以上減少する可能性(労働参加「進展」シナリオ)が示されています※1。このため、企業は将来的に必要な労働力や優秀な人材を確保するという観点から、働き方の見直しを迫られています。

その上、ワークライフバランスや職場環境の問題から、現状では「働き続けることが困難な人」や、「働き始めることが困難な人」も数多く存在しています。 結婚、出産、子育て、介護、持病の治療等の生活状況と、働き方のバランスが取れないために、働き続けること・始めることが困難な人が多くいます。あるいは、長時間労働が重なったり、パワハラ・セクハラを受け続けていることにより、長期の療養が必要となった結果、働き続けること・始めることができない人も多くいるでしょう。 この現状から、企業は働き方改革を通じて「働き続けることができる人」や、「働き始める人」を増やし、必要な労働力や優秀な人材の確保に向けて、より一層注力する必要があります。

働き方改革の推進は企業にとってのメリットになるか

画一的な働き方で人材を管理していると、働き続けることができない人だけでなく、「能力を発揮できない人」が多くなり、企業にとって損失となります。言い換えると、多様性を踏まえた人材管理(ダイバーシティ経営)を行うことは、個人の能力を最大限に引き出すことにつながるため、企業にとってメリットをもたらします。

この問題は、特に女性の働き方・キャリア形成と密接に関連しています。以前に比べて職場環境の整備は進んだものの、現在でも結婚・妊娠・出産・子育て・介護に伴って退職する女性は多くいます。一方で、いくつかの調査から、女性の活躍は企業に大きな利益をもたらすことが明らかとなっており※2、利益率等の観点からも、女性活躍を推進することが望まれます。

また、ライフステージに応じて働き方が変化することから、その人の年齢・経験や得意分野に見合った仕事を割り振ることで、業務効率が改善されます。例えば、仕事を覚えて多くの経験を積む段階にある20代に適した仕事と、経験は豊富な一方で育児中につき時間的制約のある30代に適した仕事は異なります。さらに、同じ30代でも経験の蓄積度合いや生活状況等が異なるため、年代に特化して画一的に管理を行うだけでは個人の能力を十分に発揮できません。

このため、働き方改革に伴って、企業は人材管理の見直しを行い、各個人が能力を最大限に発揮できるようなマネジメントを実践したり、職場環境を整えることで、売上の増加や利益率・生産性の向上につながります。

ちなみに、当社(インソース)の2017年3月時点の女性比率は53.6%、女性管理職比率は20.7%と全国平均を上回っており、女性が働きやすい職場環境を整えることを成長戦略の1つと位置付けています。

働き方改革を進めるためには何が必要か

働き方改革を進める中で政府が具体的な数値目標を作成したのと同様に、企業も数値目標を立てることが必要です。これにより、職場環境改善の実現に向けた取組姿勢が明確になるとともに、「私たちの会社では、政府の数値目標を上回る実績を残しています」など、企業の広報・PRに役立ちます。

例えば、2016年には7.7%の従業員が週60時間以上働いていますが、政府は2020年までに同割合を5%以下にするという目標を立てています。このため、「私たちの会社では週60時間以上働く割合を2020年までに3%以下を目指します」という独自の目標を立て、それを実行することで、求職者にとって魅力的な企業となったり、社会的な評判・地位が向上することから売上の増加につながるでしょう。

さらに、数値目標を策定することは、働き方改革の推進における各階層の役割を明確にします。経営層は現状に基づいて具体的な数値目標を立てるとともに、トップダウンのメッセージを発するという役割を担う必要があります。また、管理職はマネジメントについて学ぶことで、効率的な業務遂行を目指す必要があります。そして、非管理職は仕事の進め方・タイムマネジメントを改善し、円滑に業務を遂行する能力を身につける必要があります。

労働生産性向上の鍵は何か

労働生産性を向上させるための鍵は、「データに基づいた経営」を行うことです。社内にあるデータを活用して経営計画や業務改善計画を立案することで、より具体的なプロセスを明示することができます。

海外では、既に生産性向上のためのデータ活用が進んでおり、職場環境や労働者の特性に応じて、同じシフトに仕事の早い人を配置すること(Mas & Moretti, 2009)や、関係性の良い人と同じチームを組ませること(Bandiera, Barankay, & Rasul, 2009)、在宅勤務を導入すること(Bloom et al., 2015)などが個人の生産性を向上させることが示されています。

このように、データに基づいたPCDAサイクルを作成することが、生産性向上に向けた取組の鍵を握るでしょう。また、働き方改革を推進する上でも、社内のデータを活用して数値目標を立てることが重要です。

ちなみに、「ビジネスデータの分析研修~統計の基礎を活用する」では、豊富なケースを通じて、社内にあるデータを活用するためのスキルを学ぶことができます。

▶【公開】ビジネスデータの分析研修~統計の基礎を活用する 

多様な人材を活躍させることの重要性は何か

ダイバーシティ経営を実践することによるメリットの1つに、「多様な価値観や意見を集めることで、新製品や新サービスを生み出すことにつながる」という点があります。

顧客の意見を集約した上で、商品やサービスの開発・改善を行うことは経営の基本ですが、化粧品などといった女性向けの商品で女性の意見を多く取り入れることと同様に、LGBTの意見を取り入れた商品開発が有益でしょう。そのため、LGBTの従業員はLGBTの消費者が求める商品やサービスを開発する生産性が高いことから、マーケットの拡大に貢献できる可能性があります。

同様に、外国人向けの商品・サービスに対しては、ターゲットとする国の人たちの意見を取り入れる必要があります。商品やサービスの「使い勝手」や「ニーズ」というのは、その個人の持つバックグラウンドによって異なるため、多様な人材の活用を通して「開発者」と「顧客」のバックグラウンドが共通している場合には、強みとなるでしょう。

なお、当社(インソース)もダイバーシティ経営を実践しており、6人の外国人と4人のLGBT、6人のシニア、9人の障がい者が活躍しています。

働き方改革を行う上で留意が必要な点は何か

働き方改革を通じて長時間労働が是正されることは、企業にとって残業代(人件費)の削減というメリットがある一方で、これまでと同じペースで仕事をすると売上高・利益が減ってしまうというデメリットがあります。

このため、企業は「1人当たり生産性」を向上させるための取組を進める必要があります。つまり、(残業時間が削減されることで)勤務時間が短くなりつつも、同じ人数で同じ分量の仕事を行い、成果を上げるための取組みです。

▶AI・機械学習研修

この取組の1つが、人材育成への投資拡大です。適切にマネジメントを行うことのできる管理職や、スケジュール管理を行うことができる営業、良い人材を採用できる人事などを育成することで、1人当たり生産性の向上につながります。

あるいは、「不要な業務を減らすこと」や、「システム化を進めること」もまた、1人当たり生産性の向上につながります。実際、当社(インソース)では営業効率化するPlantsや人事・総務の仕事をサポートするLeafといったシステムを活用して、生産性の向上に努めています。

それぞれの企業に応じた働き方改革とは

働き方改革を行う中で、「企業風土」や「人員特性」を考慮しつつ、職場環境の改善を進めることは非常に重要です。
生産性を向上させるために人材育成を行う場合でも、企業に応じて必要な研修は異なりますし、導入が必要なシステムも異なります。

このため、「データを活用して」経営状況を見極めたり、マーケットの動向を分析することがより一層重要となります。課題の特定を行い、それを解決するための数値目標を立て、実行に移すためのプロセスを確立するための能力・スキルが、今後より一層、経営者や管理職に求められるものとなるでしょう。

※1「2030年展望と改革タスクフォース報告書(参考資料集)」
※2山本勲(2016)「上場企業における女性活用状況と企業業績との関係 -企業パネルデータを用いた検証-」、Tsugawa et al. (2017) "Comparison of Hospital Mortality and Readmission Rates for Medicare Patients Treated by Male vs Female Physicians"

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