安藤弘一講師「管理職に求められる能力について」

安藤弘一講師「管理職に求められる能力について」
 

5.「課題解決力を鍛えるポイント」

課題解決のための手続き

会社における課題解決活動は

"問題の発見⇒目標の設定⇒原因の究明⇒手段の選択⇒実行と結果"

という流れから形成されています。問題の発見から原因の究明までを「問題発見プロセス」、問題を解決するための手段を選択するプロセスを「意思決定プロセス」、選択された手段を実施して高い成果に結びつけるプロセスを「実施プロセス」といいます。

皆さんは、これら3つのプロセスをしっかりとこなして尊い利益を確保しなければなりません。会社価値の最大化に向けて、絶えず、前進しなければなりません。このために、私は、皆さんに3つのクセをつけていただきたいと思います。

意思決定グセ

会社に入ると、最初は誰でも、上司から指示を受け、これに一所懸命応えようと努力します。これが入門時の姿勢です。しかし、いずれかの時点で、皆さんは、このような"指示待ち人間"から脱し、自ら意思決定して実行できるという"意思決定人間"へと転換しなければなりません。皆さんが"意思決定人間"へと早く転換できれば、さまざまな経験をより多く積むことができ、成長が促進されます。

しかし、この転換に高い壁があるのも事実です。

意思決定には、多くの情報と判断力が必要になるからです。このため、人は"指示待ち人間"でいる方がずっと楽かもしれません。しかし、皆さんは、これを乗り越えて、"指示待ち人間"でいるよりも、"意思決定人間"になることの方がもっと楽しいことを味わわなければなりません。皆さんが、"意思決定人間"になれるかどうか。これは、日ごろの"意思決定グセ"にかかっています。

皆さんは、「どうしましょうか」と上司に尋ねるのではなく、「このようにしたいのですが、よろしいですか」と上司に了解をもとめる姿勢をもたなければなりません。また、判断がつかないときは、「A案か、B案かで迷っています。それぞれ利害得失があるのですが、部長は、いかがお考えですか」と、複数の案を示しながら、上司に相談しなければなりません。

「意思決定の中心に自分がいて、相談し、了解をもとめる対象に上司がいる」。皆さんには、この認識と行動が不可欠です。これが"意思決定グセ"を励行するということです。

皆さんが、意思決定に悩んだとき、いい対処方法があります。それは、"フォアザカスタマー、フォアザカンパニーの精神"に徹することです。

ある社長が「お客様と会社の立場に立って徹底的に考え、決断を下せば、失うものは一つもない。この安心感が自らの意思決定に勇気と自信を与えてくれる」と説いています。

実際、多くの経営者が、この"フォアザカスタマー、フォアザカンパニーの精神"に助けられ、成長してきました。

皆さんは、この"フォアザカスタマー、フォアザカンパニーの精神"が、先に説明した"会社経営の本質"に根ざしていることにも留意してください。つまり、"会社経営の本質"の3つの要素である

  1. 尊い利益の確保
  2. 顧客志向の重視
  3. 変革とスピードの重視

に照らして意思決定すれば、これは、"会社価値の最大化"を念頭においた意思決定であるということです。

多少技術的な点に及びますが、"意思決定グセ"を励行するにあたって、「解決すべき問題の原因を深く究明すること」が重要です。「原因の究明が終われば、課題解決活動の7,8割は終えたようなものである」と指摘する人がいるほどです。それほど、原因を究明することが大切なのです。

意思決定によって選択する解決策とは、問題の原因を取り除き、目標を達成するための手段です。この点、原因の究明が甘くなると、端から適切な解決策を導くことができなくなるからです。

しかし、現実には、この原因の究明がなんともお粗末です。人は、原因究明もそこそこに、手段にはやる傾向を有しているからです。

「いいアイデアを思いついた。これで何とかなるだろう」と決め込んで、実行します。しかし、これで、本当にいい課題解決になるのでしょうか。皆さんは、問題の解決にあたって、真の原因を究明することの大切さをしっかりと認識してください。

逃げない・諦めないグセ

「逃げない、諦めない」という言葉にはストイックな響きが漂います。課題解決活動に、なぜ、このような戒め的な覚悟が必要なのでしょうか。

たとえば、「チャレンジする」といった前向きな覚悟では不十分なのでしょうか。答えは、言うまでもなく、不十分です。「チャレンジする」では「頑張ったけれどもダメだった」という結果が許容されます。言い換えれば、諦めが選択肢の一つになります。

これに対して、「逃げない、諦めない」という覚悟には、成功するまで永久に頑張りつづけなければならないという厳しさが含まれます。つまり、会社における課題解決活動には、この厳しさが不可欠なのです。

皆さんは、もう一度、"会社価値の最大化"が要求しているハードルの高さを思い起こしてください「目標を可能な限り高く設定して、これをやり遂げる」。このためには、「チャレンジ」では弱いのです。「逃げない、諦めない」が必要なのです。

ある自動車会社のトップは、若い人に伝えたい言葉として、「逃げない」という言葉を掲げているほどです。このトップは、若い人に会うたびに「いやだなと思っても逃げるなよ。自分にこのクセをつけることが大切だ。艱難(かんなん)辛苦(しんく)が自分を肥やす」と諭しているそうです。皆さんが逃げなかったときに得られるご褒美は成功体験です。また、成功体験は、逃げずに得られたものだけが本物なのです。

皆さんが"逃げない、諦めないグセ"を身につけるには、確かに厳しいものがあります。しかし、皆さん。こうしたことは決して長くは続きません。なぜなら、逃げなかったことによって味わう成功体験の喜びや大きさが、新たな成功体験を求めて、「逃げない、諦めないこと」の効用を喚起してくれるからです。

少しの辛抱です。自分自身に「逃げるなよ」と言い聞かせて、ひとつ成功体験をつくってください。そして、これを積み重ねてください。"逃げない、諦めないグセ"に病みつきになる日が遠からずやってきます。そして、「会社の中で真に頼れる者は、自分をおいて他にいない」という使命感に燃え、また、周りの人からもこのように信頼される日が必ずや訪れるはずです。

目標3割アップグセ

問題発見プロセスの中に、達成すべき目標の設定があります。また、PDCAを回すうえでも、目標の設定はつきものです。実は、この目標の設定に大変重要な意味が含まれています。

なぜなら、この高さが、課題解決活動の最終結果を規定するからです。誰でも、目標達成に向けて頑張りますが、この上を目指して頑張ることは、通常、ありません。「はじめ良ければ全てよし」といわれますが、経営者は、このため、目標の"高さ"にこだわり、この"高さ" を上げることに執念を燃やすのです。

十年以上前、銀行での出来事です。ある人が、上司から「金融自由化を踏まえて、わが行はどのように対処すべきか」と質問を受けたことがあります。そのとき、彼は、「金融自由化は、外国勢や他業態からの市場参入を促します。大変な時代がやってきます」と答えました。あとになって、彼は、そのとき、なぜ「変化があるときにはチャンスがあります。わが社は、このチャンスをしっかりととらえて、グループの発展につなげるべきです。そうすれば、脅威を跳ね退けることもできます」と答えられなかったのかと後悔したそうです。

「金融自由化によって大変な時代がやってくる」と思っていては、掲げられる施策が"守り"になります。「金融自由化こそチャンスである」ととらえれば、逆に"攻め"になります。

もちろん、"守り"の重要性や必要性を否定することはできません。しかし、"守り"の姿勢だけで"会社価値の最大化"を実現できるのでしょうか。志高く目標を掲げることが質の高い課題解決活動に取り組むための条件であり、これによって、会社は、"会社価値の最大化" に向けて前進できるのです。

"目標3割アップグセ"は、以上の考え方を行動に移すものです。ここで3割という数字に意味があるわけではありません。3割アップという言葉に象徴される目標の高さに意味があるのです。いま皆さんが考えている目標を、量的にあるいは質的に、1ランクないし2ランク上げてみましょうそうすれば、新しいアイデアも出てくるし、より確実な成果も得られるのです。

それでは、"目標3割アップグセ"をいかに具体化すればいいのでしょうか。

「同じことをやるのであれば、2分の1の時間で、同じ効果が得られないかと考えるべきだ」

「来店いただいたお客様に、いかに2倍の買い物をしていただくかが重要だ」

「誰でも売上には目が行くが、コストには目が行かない。コストをよく見たら、1,2割のカットは直ぐにできる」

「いい商品をつくることが大切だ。そうすれば、わざわざセールスに行かなくても、顧客が訪ねてくる」

・・・など考え方や手法には事欠きません。

"尊い利益"の確保を意識して創造性を発揮することは仕事を楽しくさせます。この点、皆さんにとって、"目標3割アップグセ"は、比較的身につけやすいクセといえます。

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