「OJT研修」を語る

「OJT研修」を語る
株式会社インソース
専任講師 舟橋清之



はじめに

熱血OJT講師が研修を語ります。OJTの課題は、自立していない若者を現場で“考えて”“動ける”自立した人間へと育成することです。 小手先のテクニックではなく、企業や組織の理念、考え方に合わせた骨太なOJTを行うことが求められます。


1.OJTリーダーに求められるもの

――OJTを行う際に重要なことは何ですか?

OJTを行う際には、企業組織の理念や考え方に合わせた形で行う必要があります。OJTの指針は、会社の理念や企業の風土など「組織の考え方」にあります。OJTの本質は、「考え方の軸」(理念や風土に基づいた企業の思想・ビジョン)、 いわば企業のDNAを、指導する相手の頭のなかにしっかりとすりこむことです。部下・後輩に、この「考え方の軸」ができれば、仕事の現場で判断に迷ったり、間違った判断を することが少なくなります。その結果、部下・後輩が組織の中で自立して動くことができるようになり、 仕事の成果や働く意欲の向上につながります。さらに、「考え方の軸」が組織の中で確立すれば、 組織全体の力を集約して強力に発揮できます。

OJTリーダーはこの「考え方の軸」を正確に理解すると、それに則って目指すべき方向を明確に示す ことができるようになり、自信を持ってOJTを進めることができます。

――でも、なかなか自信を持って指導するということは難しいのではないでしょうか

なぜ、そうできないリーダーが多いのでしょうか?

――うーん。やはり、厳しいことを言うと、「嫌われるんじゃないか」とか遠慮したり、 厳しいことを言おうにも、自分が自信が持って言えることがあまりないということもあるのではないかと思うのですが。

そういうことを払拭して、自信を持って指導するためには、(1)「仕事の意味・目標を明確化する」、 (2)「考え抜いた計画」、(3)「周到な準備」の3つを徹底することで指導に対する不安を克服する 必要があると思います。

また、OJTを行う際には、「覚悟」と「責任」も求められます。 「たとえ、部下・後輩がミスをしても、その責任は全部自分が持つ」という意識が、部下の信頼を生み、 その信頼感がリーダーの指導力の源泉となります。さらに、部下・後輩と信頼関係を築くことは、彼らの仕事に対する積極性やモチベーションの向上につながります。


2.ほめ方・しかり方

――OJTの指導を行う上で、「ほめ方、叱り方」ということも重要ですが、 これに関して何かアドバイスいただけることはありますか

「とりあえずほめましょう」というような話はありますが、やたらめったらほめることはよくないと思います。

――具体的にほめ言葉の種類や使うタイミングなどについて教えてください

たとえば、「君は誠実そうだね」「優しそうだね」などの個人的な雰囲気や特徴に関するほめ言葉は、 相手との関係が築かれていなくても相手が素直に喜ぶものです。これらはOJT指導を始めた初期から使えるほめ言葉です。 それに対して、「君は文章が上手いね」とか「論理的だね」など、相手の能力に関するほめ言葉は、 相手との関係がある程度築かれた後でないと、相手もなかなか受け入れにくいほめ言葉です。 相手が喜ぶ度合いも大きいですが、タイミングを間違えると逆効果となります。

――しかる方はどうですか?

指導することやしかることは、OJTリーダーの責任です。しかし、しかることと怒ることを混同する人も少なくありません。しかることは、相手のことを思って、その成長を願うことです。怒ることは自分自身の感情をぶちまけることです。指導する(しかる)際には、「相手のため」にそれを言っているんだという姿勢を明確にすることが重要です。より具体的に、改善を求める理由を明確にするとともに、指導した点を改善しないと、 「また同じ失敗をしてしまう」ことや、「自分やお客様に危険が発生する可能性がある」ことなどを伝えると、 相手も受け入れやすい上に、「自分のためを思っていってくれている」と相手が感じやすいと思います。

――指導する相手とコミュニケーションをとる際に気をつけることはありますか?

コミュニケーションは仲良しクラブを作るのが目的ではないので、仕事でのコミュニケーションをとれることが大事なんです。

――それは何か狙いをもって相手に関わっていくということですか。

相手が今、すべきことは何なのか。それを順々に理解させることがコミュニケーションだと思います。 どこを主に置くかで、伝わり方は違います。「相手」を主語として行うことが、全てのOJTの基本ではないかなと思います。

――やはり自分のことを心配してくれているという信頼感や安心感があるから、そういう人間の話は聞きますよね。

例えば、「お前昨日、餃子を食っただろう、お客様のところに行く前の日に餃子なんか食べるな」と言われ、 相手が「食うものまでいわれたくないわ」と思ったとしても、それが後々ね、その人の役に立つのです。 本人が理解したときに、初めてそこに仕事を通じた信頼感が生まれるのです。

――確かに、機嫌をとったりして築いた仲ってすぐに壊れますよね。ところで、「しかる」基準ってありますか?

自分が全く介入しなくても、ほったらかしでも自分と同じくらいにできるというのは「マル」 としてください。自分がちょっとでも介入して、確認しなきゃいけないことがあるのでしたら「三角」にしてください。 まだまだあぶなっかしいなあ、といつでも見てなければいけないというところは「バツ」と。

叱るときは、「三角」の人間も叱らなければならない。叱ることによって、現状と到達点と、 明確にして、あなたは「三角」を「マル」にするために、この部分をしなさいよと指導します。

――新人が、同じことを二回、三回繰り返してしまった、こういうときにはOJTリーダーとしては どんな対応が必要なんでしょう。

何回も繰り返すということはそのことの目的を理解していない訳です。理解していないから繰り返すのです。 問題が発生したときにリーダーとしては、その人に問題があるのか仕組みに問題があるのか、 それともモノに問題があるのかを検討しなければなりません。

コーヒーを出すにしてもコーヒーをいつもこぼす、この辺に。そうするとカップが小さいのかもしれません。 出すときにもしかしたらトレイを使っていて、トレイが45cmあるのに、通路幅が50cmしかないのかもしれない。 その人は、手が震えるのかもしれません。そのように、突き詰めていくと、その人自身に問題があるのか、 職場の環境など外的なものに原因があるのかがはっきりします。