株式会社インソース
取締役顧問 大島浩之
代表取締役 舟橋孝之
大島ビジネスで求められているものは、基本的に2つのことではないでしょうか。きちんと話せることと、きちんと書けるということ。これで自分の意思をしっかりと伝える。これは基本中の基本みたいなもので、野球選手で言えば素振りみたいなものですよね。名選手は何度も何度も繰り返ししていることなんですよ。同じようにビジネスでは、話すことと書くこと、これはもう基本中の基本なんですね。ところが、これが実際には出来てない人が多いんですよ。これさえ出来れば、わたしはもうビジネス社会で成功できると思うんですね。その周辺に、礼儀やマナー、段取り力など社会人として身につけなければならないものがあるんですね。
舟橋ただ、それらのことはすべて当たり前のことですよね。
大島そうです。だから、当たり前のことを当たり前にやればいいのかなと思います。自分のことをよく分かっている人は、新入社員でなくても5年10年たっても自分で話す力や書く力を伸ばしているんですよ。だから、学生時代で全部おわったなんて大間違い。そもそも学生時代に書く文章では、結論が最後にきますよね。あるいは、自分が考えた筋道をそのまま書く。ところがそれは、聞き手・読み手からすると非常につまらない。
舟橋そうですね。結論は何なんだって思ってしまう。
大島特に忙しい人はまず結論を言え、それから理由を言ってくれとなる。それで、説得力があれば初めて、じゃあ中身を教えてくれって話になりますよね。でも、これは学生時代には教えてもらえませんよね。実は社会人になってからも教わらないんですよ。「話すこと・書くこと」って、日本人なんだから当たり前のことで、きちんと出来るとおもっているんですよ。ところが実際は出来ていない。優秀な人だけが、こういった基本的な部分を絶えず訓練しているんですよ。
舟橋どうしてその当り前のことが、実際に出来ていないんでしょうか。
大島それは、本人が「自分が出来ていない」ということに気がついていないからですね。
舟橋教育の問題もあると思います。今は創造性なんかが非常に重視されている。例えば、国語なんかでは物語を読んでこの犬の気持ちを考えてみましょうってなる。そういった心情読みとりみたいなものが中心に来ていて、国語力のベースとなる文章を書くことや論理の構成みたいなものが非常におろそかになっている。こういった教育がまかり通っている。創造性を育むような教育が必要ないわけではないんだけど、ベースを教える、A地点からB地点まで確実に行くという部分が抜け落ちている。本当に必要なものが教育の場では伝えられていないわけです。だからまず、教育を文学みたいなところから、ビジネスとか実業の手に返していく必要があると思います。
大島それは教師が社会に出ずに、大学からそのまま教育の場に入っていってしまうからでしょうね。
舟橋それがひとつ。もう一つは、マスコミが文学部の出身者で占められているから。結局、彼らはビジネス社会のことを知らないんです。ビジネスの世界でやっていることは胡散臭いこと、汚いことだと思っている。そしてそのマスコミが描くイメージに、若い人はみんなのせられてしまう。それは、当然実際の社会のこととは異なる。けれど、子どものころから彼らが作るそうしたレールに乗っていると、大人になってじゃあ自由にやりなさい・方向を考えなさいと言われても、それは出来ない。やったことがないんだから。
大島実社会における書く力とか話す力の必要性が、あまり理解されていませんよね。
舟橋国語教育で文学作品の心情読みとりばかりやっていて、書くとか話すとかが狭間に落ちてしまっている。別に国語教育を批判するつもりはないけれど、でも学校教育の場とビジネスは全く違う。感情とは切り離さないといけない。事実をいかに追えるか。事実をいかに冷静に追えるか。
大島だから、形容詞は省かないといけませんよね。そうすると自然と文章は短くなるし、話すことも短くなります。ビジネスの場では、自分の意思を正確に伝えることがまず必要ですからね。それが出来ないと、いろいろイザコザなんかがおきるわけですよ。
舟橋だからといって、全部アメリカの教育スタイルにしろとか英語にしろというわけではない。そういう話とは違うんですよ。でも、ビジネス文章を書くというのは中学校の英語に似ていますよね。かたちを覚えていくというのは。だから学問ではないんです。むしろスポーツみたいなもの。練習するものなんです、解説するものではなくて。
大島英語に関していうと、ビジネス現場の英語は基本的に中学レベルの語彙と構文で十分ですよね。日本語でも、売れている小説家なんかは、みんな中学生レベルの文章を念頭においていますよね。だから、決してこむずかしい文章なんて念頭においてないですよ。
舟橋会社でも、特に若い会社なんかだと、簡単なことを難しく言ったり比喩をやたら使ったりしているんですよ。でも、ぼくらは平たい言葉で分かりやすく説明している。ぼくらはビジネスで勝ってきたから、別に肩はる必要もないしね。
大島自信がないと、あいまいな言い方とか書き方になってしまうんでしょうね。自信があるなら、同じことを3回言ったり書いたりすればいいんですよ。
舟橋そういった観点から書くとか話すって考えてみると、短い時間でもその事実にだけ着目して練習すればすぐ書けるようになるんです。うちの文書研修でも、受講者は最初はとっつきがない。でもほんの数回練習するだけでかなり上手くなるんです。ある受講者が言っていたのは「文章には骨格がある。文章の中に骨格が見えて、そこだけを取り出して短文を作ることが出来るようになりました」、と。でもそれさえ分かれば、すぐに上達するようになると思うんですよ。
大島そういう訓練する方法としては、ややこしい文章を要約するのがいいんじゃないかと思いますね。そうすると一言で言うとなんなのっていうのが分かってくるんですよ。
舟橋ややこしい文章を要約する。これが書く訓練ですね。それをさらに、50字くらいにまとめると、それが話す練習になるんです。つまり、一言でいうとなんなのかが単純にいえるようになる。よくいるんだけど、手短に言うというのは、早口で話すのとは違うんです。書くことが出来ると言うことが話すということになる。だから、クレーム対応とか企画力とか、自分が考えていることやトラブルに対処する方法は書けなきゃいけないと思います。その場で考えたり、ウィットで答えたりする前に、まずロジカルに考えて書ける必要がある。書けないことはやれないんです。
大島だから、日々そういったことをしていると、クレーム対応能力も強くなるんですよね。というのは、本質が分かってくるからなんです。そうすれば揚げ足取られてよけいにクレームが大きくなったりすることもなくなる。だから、まずはしっかり書けたり話せたりする必要がありますよね。意識してね。自分は日本人なんだから特別なことをしているんじゃないと思ってしまうとだめなんでしょうね。そうではなく、やらなきゃならない、と思わないとだめ。だから、書く・話すっていうのは全てのベースじゃないかなって思います。クレーム対応に限らずね。
大倉これまで「話す力・書く力」に関するお話しをしてきましたが、「聞く力」というのは話すこと・書くことと、どんなつながりがあるんでしょうか?
大島書くとか話すというのはアウトプット。それは当然相手がいる話ですよね。だからインプットはしっかりしなければいけません。うまく聞かないと当然上手く話せない。
舟橋インプットは重要なんだけど、気をつけなければいけないのは、たとえば英語の単語をいくらインプットをしても、それは仕事の出来には関係がない。そうではなく、業務知識や一般知識のほうが大切なんです。たとえば、不動産の売買をしたら手数料は3%で、1億売れば300万払う、こういった世の中の仕組みと連動したことを知っている必要がある。そういったことに興味を持っていると仕事の現場では使える。たとえば、じゃあ先方の部長クラスを連れて行くお店はどこがいいか、みたいなね。それで、会社の予算はいくらくらいで、これくらいなら許容されるといった段取りが出来るとすごいデキルやつなんだよね。そういう所でデキルというのは、おべんちゃらが上手いやつではない。でもそれって誰も言わないんだけどね。
大倉そういったことを身に着けるにはどうすればいいんでしょうか。研修では教えてくれませんよね。先輩から学ぶんでしょうか?
大島学ぶというよりも盗むって感じかな。
舟橋あとは世代の違う人と付き合うこと。20代であれば30−40代の知り合いを何人か持つ。それで聞けばいい。同じ世代とばっかり付き合っていてはダメ。
大島やっぱり考え方の違う人と接すると全然違ってきますよね。
舟橋だからそういうところが大切。入社試験じゃ出ないところが大切なんですよ。
大島世の中にテストに強い人は多いんですけど、それだけじゃダメなんですよね。その辺も学校と社会の違うところなんじゃないでしょうか。