「交渉力研修」を語る

株式会社インソース
代表取締役 舟橋孝之

「交渉力研修」とは?

(1)交渉は“成果がすべて”
交渉は、議論の巧みさや自分の正しさを証明するものではありません。自分がいかに論理的に相手を説得しても、成果が上がらなければどんな交渉も失敗です

(2)交渉において大切なもの
 A:「一般常識」・「真剣さ」・「まじめさ」
交渉において、まず大切なのは、相手に人柄が良いと思われることです。
 「時間に遅れない」「問い合わせにすぐに対応する」などはビジネスの常識ですが、それらのことを必ず守る「真剣さ」「まじめさ」を持っている人間だと相手に思ってもらえば、相手の中に信頼感が生まれ、たとえ下手な交渉になってしまっても好意的に受け取ってもらえます。

 B:「業務知識」
もちろん、話しの中身も大切です。話す内容(自分の仕事)について、豊富な業務知識を持ち、仕事に自信と責任を持っていることが、交渉においては成功のカギとなります。

(3)3つの説得技法
 A:功利的説得〜相手が得をする(有利になる)行動を勧める
   〜「・・・した方がいいですよ」など
  【メリット】
   相手の自由を認めた上で、相手に有利になることを働きかけるために、
   有効な説得方法。
  【デメリット】
   相手の価値観を大前提としているため、自分の目指す交渉とズレる可能性
    がある。

 B:規律的説得〜相手のモラルに訴えかける説得
   〜「約束は守らなければならない」、「言ったことに責任を持て」など。
  【メリット】
   道徳・倫理は相手を説得する強力な武器となる。
  【デメリット】
   相手の利己心が深い問題には無意味な説得方法。

 C:情緒的説得〜相手の感情へアピールする説得法
  【メリット】
   説得の論理の弱さを感性の力で補う。
   功利的・規律的説得を補完する説得方法。
  【デメリット】
   単独で使用しても意味をなさない。

また、3つの説得法を“ケーススタディ”で実践!
 
「交渉力研修」について、詳しくはこちら!

交渉はどのような場面で必要か、その目的は?

大倉まず、交渉とはいつどんな場面で必要なものなのか、その目的は何なのかについて聞かせてください。

舟橋私は銀行に長くいましたが、その前半はプログラマーとしてものづくりをやってきました。
その頃は幸せで、機械と対話してればよくて基本的に自分ひとりで何でもやれました。

それがプロジェクトを束ねる立場になるとすごいシンドイ。
自分の実力もなければいけないし、他者と交渉しなければならない。

コストを考えたら出来ないこともあるし、やれと言われたことをやらなければいけないこともある。
そうしたものを自分のコントロール出来るところへ持っていかなくてはいけなかったので交渉の連続でした。

その後が企画を立てる仕事をするようになりましたが、企画を立てるとそれを実現していかなくてはいけない。そのプロセスと言うのはまさに交渉の連続ですね。

舟橋基本的に組織の中では新しいアイディアがあっても、それをやりたい人がいるかといえば、ほぼ全員がNOなんですね。
今の仕事の仕方を変えなければいけないし、もしかしたら今の仕事を奪われるかもしれない。
だから、企画を通していくって行為は実に大変です。新しい企画が採用され、新事業をやることになったとします。

しかし、社長がやれと言っても、誰もやりません。
仮に配属されました、辞令が出ましたってなっても、「私はやり方がわからないから出来ません」と言うんですね。
それはやり方が分からないからではなく、仕事に対して「嫌だ、承諾しかねる」と暗に言っているんですね。
私は人生において「やり方がわからないから出来ません」みたいなことは、100万回くらい言われましたね。
そういった中で、やってくれない人をどう動かすかって事が「交渉」なんですよ。

交渉は相手を言い負かすことではない

大倉非常に難しそうですね。交渉と聞くと激しい議論やディベートのようなものを連想するんですが、そういったものとは違うんでしょうか。

舟橋まず交渉ってなにかを考えたときに、似ているようで違うものはディベートだと思います。
ディベートと言うのは相手をやり負かす、言い負かすっていう口と頭の勝負だと思うんですね。しかし交渉は違います。
生身の人間が全人格を使い戦う、これが交渉なんですね。交渉とディベートの違いは、結果がハッピーエンドでなければいけないということです。

大倉結果がWin-Winにならなければいけないって事ですか?

舟橋そうですね。たとえWin-Winじゃなくても、少なくとも自分がハッピーにならなければいけない。
あとは経済的利益が伴うのが普通です。だから、ディベートが上手いからといって交渉が上手いかというと、全然そんなことはありません。
むしろ、ディベートの気分で交渉すると、相手に嫌われてしまうことがあります。

大倉結局それが自分の利益にならないって事ですね。

舟橋そうです、ビジネスでは嫌われたら終わりですからね。そこがディベートとの大きな違いです。
だから、交渉のプロというのは基本的に穏やかに笑ってるんですね。激しく議論するっていうのは、交渉においてはマイナスなんです。これは全世界共通だと思います。
悪いやつほどいい笑顔で笑うんですよ。例えば、アメリカの映画なんかで激しく議論してたりするけどあれは素人の交渉なんですね。ビジネスにおける交渉はにこやかに行われるんですよ。

交渉に必要な能力

大倉ディベートのように我を出しすぎると、交渉ではマイナスというのは分かりました。では、どのような能力が求められるのでしょうか。

舟橋どのような能力が必要だと思いますか。あるいは、逆に交渉が下手な人ってどんな人だと思いますか。

大倉そうですね、話下手の人は人を説得するのが難しそうですが…。

舟橋一般的に口下手な人は、そう思ってることが多いんですよね。でも実は交渉は口下手でも構わないんですよ。ある意味しゃべらなくてもいいです。そこがディベートなんかとは大きく違うんですね。

おれは話すのが得意だとか、ディベート大会で一番になったっていう人が実社会では交渉が下手だったりするんですよね。
交渉は口先で決まるものでもないし、そうするものでもないんですよ。
実を言うと、一番必要なのは「考える」ことなんですよ。ある課題についてものすごく考える、そして交渉のシナリオをたてるということをやれば、ほとんどの交渉はわりと上手く出来るんですね。

大倉要するに、どのように話を展開していくのかを事前に組み立てておくのが重要だということですね。

事例研究に即したロールプレイング

大倉では、研修では具体的にどのようなことをするのでしょうか。

舟橋まず企業対企業、あるいは組織の中での交渉にはいろんな方法があります。それを具体的な事例に基づいて考えるという研修です。受講者に近い事例を踏まえた、ケーススタディを使った実戦を行います。事前課題で受講者が過去に行った交渉の例を出してもらいます。それを踏まえて、インソースでケーススタディを作ります。

大倉受講者の提出した事前課題を参考に、オーダーメイドでケーススタディを作るという事ですか?

舟橋そうです。まったくの架空の話ではなく、現実に限りなく近い話を何題か作ります。
そしてその課題について、それも一筋縄ではいかない交渉を、その瞬間に考えるのではなく、チーム単位でまずじっくり考えてもらいます。
この交渉の前に考えるというプロセスを実際に体験してもらいます。

次に、そのチームを半分に分けます。4人ならそのうちの2人を別のチームに派遣して、その課題について実際に交渉の当事者になって戦ってもらいます。
もう一方の二人もその課題について考えているので、格好の論戦相手になるわけです。そこで、自分のシナリオどおりになるように戦ってもらう。そうすると、自分も相手も筋書きを書いていて交渉するわけで、結論から言うとすごい楽しい。

大倉確かに面白そうですね。

舟橋インソースの研修のポイントは、これまでやったことのない方法をその場でやって、身に付けてもらいます。
交渉のための準備をして戦えば、ある程度戦えることが分かります。
口下手な人でも、自分は頭が回らないと思ってる人でも、すごく鮮やかに交渉が出来るというのがインソースの研修の特長ですね。
何々が出来ないと言う人は、過去にそれをやったことがないって場合が多いんです。
交渉が出来ないと言う人は、それまで考えて交渉をやったことがないだけで、本当に出来ないってわけではないんですね。それを研修の場で実感してもらいます。

3つの説得方法

大倉研修ではそういったグループワークが中心になるんでしょうか。

舟橋もちろん、座学で説得の技法についても学びます。まず学ばなければいけないことは、交渉には3つの類型があるということです。「功利的説得」、「規律的説得」、「情緒的説得」、この3つの説得技法について講義をします。

大倉それぞれどのようなものなのでしょうか。簡単に説明してもらえますか。

舟橋まず、「功利的説得」というのは「こうしたら儲かります」といった相手の損得に対して働きかけるものです。「規律的説得」は、相手の規範意識、例えば「これが決まりです」といったものに対して働きかけます。「情緒的説得」というのは「お願い」で、相手の感情に訴えかけます。実際の交渉ではこの3つを織り交ぜてやっているんですね。

大倉なるほど、確かに言われてみればそんな気がします。

舟橋功利的説得というのは、こうすれば儲かりますよって事なんですが、これが交渉の王道ですよね。
ただし実際にはこれだけではなかなか交渉には勝てない。だから、相手の規律意識、規範意識に働きかける。

例えば地球環境を守れみたいな理由はよく分からないけれど、なんとなく正しいようなことを言うんですね。世の中で多分正しいだろうことを押し付けてるだけだから、相手によっては反発するんだけど、そういったことを織り交ぜる。

あと、情緒的説得っていうのは、例えば「あなたそれ人間としておかしくないですか」、みたいなもので、相手の感情を突く。ただ、こればっかりやっていると人柄が悪く見える。だから、あまりやりすぎない方がいい。ただ、功利的な説得だけだとなかなか打開できないときがあるから、そのときに規律的・情緒的説得を織り交ぜるといいんです。この3つの技法を織り交ぜて交渉するというのをまず座学で学んで、それからケーススタディを徹底的にやります。

大倉たとえ相手を説得しても、納得してくれなければ相手は動いてくれないと思うのですが、そのあたりはどうなんでしょうか。

舟橋ですから、最後にはお互いに歩み寄るってことを練習します。
自分の意見を徹底的に通す説得・交渉の訓練も行うんですが、その後お互いにどうやって歩み寄ったらいいかを学びます。
交渉が下手なタイプに、我を通しすぎる人がいるんですね。ディベートが得意な人に多いんですけどね。

そういう人はどうすればいいかと言うと、和解するにはどうすればいいかを考えるんですね。シミュレーションとして。そういう人は自分のプライドや立場を守ることにこだわりがちなんですが、無理やり和解しろと言われたら和解状況を考えざるを得ません。そういう人は元々頭のいい人だから、和解状況を考えろと言われたらそれは出来るんです。

だから、シミュレーションでもいいから、それをたくさん練習してもらいます。そうすると上手に交渉が出来るようになるんですね。突っぱねる交渉も和解する交渉も両方出来るようになれば無敵ですよ。

大倉交渉というと、ロジックを駆使して相手を説得すると言うイメージがありますが、論理力というのは交渉でどの程度必要なんでしょうか?

舟橋論理的なだけでは説得は出来ないんですね。それで、論理的であればあるほど説得とか交渉には弱くなってしまいます。というのも、論理って言うのは100%正しくないと、論理にはなりませんよね。

ところが、実際の交渉というのは確からしいものを重ねていくんですね。ですから、論理的であろうとすれば推定のようなものが使えなくなってしまう。だから、論理的な説得・交渉というものを意識しすぎると、少しシンドくなることが多いんですね。

大倉実社会では、100%確かなことってあまりないですからね。

舟橋まずありませんね。だから、ロジックのみの説得って言うのは子供っぽいものになってしまう。あとは、情緒的説得ばかりでも子供っぽいものになります。「どうしても嫌」とかね。品がなくなってしまう。あと技法以外で非常に大切なのは、人柄なんですね。

大倉そういえば、最初に「生身の人間が、全人格を使い戦うのが交渉」とおっしゃっていましたね。

舟橋自分はいい人ですよ、世の中に対して誠実ですよ、っていう顔を見せなければならないんです。だから、しっかりとした格好で、にこやかに笑っていなければいけないんです。
ベンチャーの社長とかがカジュアルな格好で交渉に出てきたりしますが、そうするとあいつは変わり者だって思われてしまう。そうすると相手は警戒するから、その時点で大きな勝ちは取れなくてしまうんですね。だから、マナーや服装なんかをしっかりして自分の仲間だって思わせることも大切なんです。また、業務知識もしっかりなければいけない。

たとえば、自分が全く知らない捕鯨についての交渉をやれって言われても、それは勝てませんよね。だから、その分野の仕事のプロでなければならない。また、長期的に勝つか、短期的に勝つかっというものもあります。交渉の場で勝っても、嫌われてたらその後の仕事は進まなくなりますよね。

大倉なるほど、分かりました。では最後に研修のポイントをもう一度簡単にまとめてもらえますか。

舟橋オーダーメイドのケーススタディ使い、実際に交渉をやってみるというのがポイントです。準備をしたうえでの交渉を体験してみる。そして、これがとても楽しい。これがこの研修の最大のポイントですね。なぜこのような研修が出来るかって言うと、うちの講師はビジネスの現場で実際に交渉をやってきた人だからなんですね。ビジネスのプロで、長い間ビジネスを勝ってきた人たちなんです。その講師が、事前にその業界のことを勉強した上で研修をします。だから、満足できる研修となるんですよ。