
株式会社インソース
取締役 大島浩之
現在、「リスクのインフレ」、もしくは「リスクの洪水」が起きているように思います。というのは「○○リスク」という言葉が多すぎて、どれが一番優先順位の高いリスクなのかわからなくなっています。
私が社会人になりたての頃は、恥ずかしながら、「リスク」という言葉を知りませんでした。ということは、裏を返せば、「リスク」という言葉は、ここ最近になってみんなが使うようになった言葉だということです。そのため、「リスク」の定義は非常に曖昧模糊としたものなのですが、私の定義では「リスク」にあたる日本語は「危険」であって、「危機」ではないと思います。
「危機」については、極端な例でいうと鳥インフルエンザのような、人間に危害を及ぼすことが予測できないものを意味していると思います。これはかなり重大かつ迅速な対処を要するものですので、それなりのセンスや能力のある人でないと、対応が難しいと考えます。
それに対し「危険」という言葉は、例えば台風のように毎年5~6個ぐらい接近して、そのうちいくつかは必ず上陸するという、確率の問題として置き換えられ、予測することができるようなものです。
これは頻繁に起こることなので、それに対処する経験が蓄積され、マニュアル化することも可能ですのです。つまり普通の人でも訓練によって比較的簡単に対応できるようになるのです。
「リスクマネジメント」に関する課題の一つとして、リスクが頻発し、またそれに関わる人が増えてくると、現場全体が一種の「無責任体制」になってしまうことです。
それが典型的に表れていると思うのは、何かトラブルが起き、組織としてすぐにその問題に対処しなければいけない場合に、手っ取り早く「人を増やしてチェックを厳密にすればよい」という対応方法です。 人が多くなってチェックする項目が増えてしまうと、リスクがバラけてしまって、誰もが無責任になってしまいます。要するに他人事(ひとごと)になってしまうのです。
たしかに人の目を借りてチェックするのは重要なことですけれども、多すぎてもいけません。責任を持ってリスクに対処するためには、やはり適正な数のチェック項目の設定と、権限と責任を合わせ持ち、リスクマネジメントに関わるための適正な人数があると思います。
以上が、リスクマネジメントの現状として、私が非常に問題視していることです。
弊社の「リスクマネジメント研修」は非常に単純です。「自分の中からリスクを洗い出して」、次に「そのリスクに優先順位を付けて整理する」。研修ではこの2点をじっくりやります。これらのことができれば、7割~8割方はリスクに対する見方が体得できます。
「自分の中からリスクを洗い出す」ことは、帰納的な方法です。自分の経験と照らし合わせて、とにかくできるだけ多くのリスクを出してみます。
それに対し、「優先順位をつけて整理する」ことは演繹的な方法です。整理の仕方としては、「重要度」と「緊急度」という2つの物差しでリスクを分類し、どのリスクから優先的に手をつけなければいけないかということを、受講生の皆さんに整理していただきます。こうした作業により、大半のリスクが洗い出され、優先順位付けがされていきます。
しかし、リスクの洗い出しや優先順位をつけることは、普通の会社では意外にされていないものです。どうなっているかというと、全部「ひとごとのリスク」になっています。具体的には、専門セクションや「偉い人」が決めたリスクという認識が強いようです。