「頑張る」って可能性を探ること:07- らしく

「頑張る」って
可能性を探ること

田中健太TANAKA KENTA

07

今回は、デザイナーとして活躍する田中健太さん(仮名)にお話しを伺いました。
前職では「もう、そろそろ俺は死ぬだろう」っていうくらい肉体的にも精神的にもボロボロだった、と新社会人の頃を振り返る田中さんに、「仕事とは何か」を尋ねました。「仕事とは、自分が楽しむこと」「相手のために何ができるだろうかを考え続けること」と語る田中さんの「らしく」とは―― 
インタビュー実施日:2017年4月19日(らしくインタビュアー渡辺)

■デザインとは、コミュニケーションを設計すること

――今のお仕事を教えてもらえますか?

担当している仕事は簡単にいうと、デザイン全般です。弊社の「WEB」のデザインやチラシなど「紙」のデザインを担当しています。一般的な肩書でいえば「デザイナー」です。今の会社は2社目です。デザイナー職がある会社と条件で調べて、検索にヒットした企業に面接に行ってみて、受かったので、働くことにした、という感じです。業界や業種も、特別、こだわりがあって検索したわけではないんですよ。

――「デザイナー職に就こう」と思って転職を考えていたんですか?

デザインって「コミュニケーションを設計すること」だと思うんです。「どう伝えるか」を考えること。自社の商品や魅力を伝えるという意味では、営業職もデザイン職も同じですよね。

だから、別になんでもいいかな、って思って転職しました。デザイナーじゃなくてもいいや、営業職での採用だったら、それはそれでいいかな、って。あんまり肩書とか職種とかに執着心はないんですよね。でも、履歴書に書いた前職がいわゆる「デザイン制作会社」だったのと、デザイナー枠の募集がある会社であれば何の職に就いても「ちょっとデザインやってみてくれ」って言われることがあるだろうから、結局はどういう職種で入ろうと、最終的にはデザイナー職に落ち着くだろう、と思っていました。事実、そうなったんですけど(笑)

――デザインの仕事に就きたい、というのは昔から思っていたことなんですか?

中学くらいまでは建築とか建物のデザインに興味があったんですよね。高校になってからはファッションとか雑誌とかが好きになって、そういうデザインが楽しそうだな、と思い始めて。専門学校に行こうと思っていたんですけど、親とか学校の先生とかに止められて、反対されたんです。高校は進学校で、僕の成績もそこそこよかったので、周りは「大学に行きましょう」と言ってきて。親も「大学は行ったほうがいい」ということだったので、「ならば、大学には行くけど、もし卒業して、まだ専門学校に行きたいと思っていたら、そういう進学にかかる費用は出してね」と約束を取り付けて、普通の大学に行くことにしました。交渉しました(笑)
ただ、一方で、大学に入ったら4年間は自分次第でいくらでも勉強できるだろうし、デザイナーになるための準備もできるかな、って思っていました。

――いわゆる「普通の大学」に入られたわけですが、その後は専門学校に通ったんですか?

結局、大学に入った後は、単純に早く仕事に就きたい、世の中に自分のものがあるっていう状況を作りたかったので、専門学校に行くことはせず、就職しました。初めて務めた会社は、社員が10人に満たない、小さなデザイン制作会社でした。

■誰かが見て「おおー」って言ってくれることが働くモチベーション

――デザインの話ばかり聞いて恐縮ですが、田中さんにとっての仕事のモチベーションって何ですか?

前の会社では、自分が作ったデザインが、広告として世の中に出ているということが自分のモチベーションでした。でも、今は、どちらかというと、会社が良くなるために、利益が出るために、自分に出せるものを出そう、と思いながら仕事をしています。今の会社はB to Cの会社ではないので、街中で自分が作ったデザインが人目に触れることは少ないし、それが必ずしも価値ではない。それよりは、自分のデザインを見た人が、何かについて「わかりやすくなった」とか、サービスに対して「欲しくなった」「申し込みたくなった」「申し込みやすくなった」とか、会社の利益が上がること自体が、モチベーションになっています。

でも、話しながら考えましたけど、もっと単純な話をしてしまえば、誰かが見て「おおー」って言ってくれることが働くうえでのモチベーションかもしれないですね。それが世の中の消費者なのか、会社の中の人、例えば経営者や担当者なのかが違うだけで、僕の中ではどちらもそう変わらない、同じことです。

――褒められるのとは逆に、ダメ出しされたりすると、凹みますか?

そうでもないです。もし作ったものをダメだされたら、その時は「マジかよー」って凹むけど、「じゃ、頑張るわー」っていう感じです。超ポジティブです。「仕事」なので。仕事の中のストレスって自分にとっていいストレスなんですよ。何か作るとき、何か生み出すときって、ストレスは絶対にあるし、皆、色々と言って口を出したり挟んだりするのが普通なんですよ。

■表現をするのではなく、「相手にとってのベストって何だろう」って考えてつくるのがデザイナーの仕事

――田中さんにとってストレスフルな状況ってどんな時ですか?

んー、別に、そんなにストレスな状況はないですが、「はっきりしないこと」が嫌いです。デザインって、ぐちゃぐちゃしているデザインも、シンプルで洗練されたデザインも、どっちもいいデザインだと思うんです。ただ、仕事としてデザインするなら、相手がどういうデザインを求めているのかを把握して、アウトプットするので、相手が迷っていると、こちらとしても迷ったりはします。
デザインの成果物イメージをヒアリングした時に、「ああいうテイストもいいけど、こういう感じもいい。でも、そっちもいい」みたいな感じだと、「はっきりしてほしいな」と思うことはあります。「どっちがいいんですか」って単刀直入に聞ければいいんですけど、そうもいかないことが多いので。

――「おいおい、わかってないなー」って思っても、表に出さないですか?

割り切ったら仕事的にダメだな、って思ったら、ちゃんと言おうと思います。でも、ただ言うだけでは、なかなか分かってもらえないことが多いので、そうしたら、もう作った方が早いので、デザインを作ります。何パターンか作って、「選んでください」って迫ります(笑) 「こっちか、こっちか、どっちがいいですか」と。「二択、三択だよ」と。

――田中さんの話を聞いていると、ものすごくロジカルな人だなぁ、って思います。売上や利益に言及していますよね。ビジネスパーソンだなぁ、と感じるんですけど、これは私の主観ですが、アートをやっている人って、もっと感覚的な人かと思っていました。「こういうのを表現したい」っていう人が多いのかな、って思って。だからこそ、美大生とかデザイン学校を出た人が、就職活動の時にぶつかるんじゃないかな、って思っているんですけど。

アートをやっていた人、表現したい人って、正直言えば、デザイナーには向いていないと思います。僕、表現をするのが好きなわけではないんです。「相手がこうしたい」と言ってきたことに対して、「自分が何を出せるか」が楽しいわけであって、「相手にとってのベストって何だろう」って考えるのがデザイナーだと思っています。
一方で、プライベートでは、色々なものを見て「これもいいよね」「これもかっこいいよね」と結構ミーハーです。普段は色々なものを見ます。例えば映画を見るとなったら、オタクの人が見るアニメ映画も見るし、すごいマニアックな精神的でドロドロした映画も見るし、一般的なエンタメ系の映画も見るし。全部違った良さだな、と思って楽しみます。でも色々なものを見ながら、色々な気づきを取り入れていくのがおもしろいんです。「こういう演出があるのか」とか、「こういう風にすると、こういう印象になるのか」とか。だから、こだわりとか偏りとかなく、色々なものを見たり聞いたりしていますね。そういう意味で、強い執着心とかこだわりとかはないです。特に芸術に関しては、すごい無地です。

――嫌いな仕事とか、これはやりたくないなって作業とかってありますか?

ないんですよ、それが。なんでもやります、基本的には。あんまり嫌だって思うことはないですね。生産性もクリエイティブ性もないような仕事でも、はいはい、やりますよ、っていう感じですね。梱包作業をずっとやっていろ、と指示されたら、多分、ずっとやってられます。特に不満や愚痴もなく。きっと、単純な作業の中にも、楽しみは見いだせると思っています。

■私にとっての「仕事」とは、楽しくやること

――あなたにとって「仕事」って何ですか? お金? 肩書?

楽しくやること、です。仕事をしていること自体が趣味、みたいな感じです。どんな仕事にも発見はあるし、面白さは多分あるんですよ。だから、それをやればいいんじゃないですかね。ベースとして「いつ死んでもいいように、後悔しない生き方をしよう」って思ってます。だって、何時間か後に死ぬかもしれないじゃないですか。だったら、今、楽しんでいた方がいいと思うんです。デザイナーやっているか、サラリーマンやっているかなんて、どうでもよくて、自分が楽しいことをやっていればいいじゃないですか。
デザイナーって世間からは「かっこいい、クリエイティブな仕事」と見られていることが多いんですが、やってみたら、すごい辛いこともあるし、泥臭いし(笑) 僕は、憧れの職業として、デザイナーを見ていないんですよね。ただ、楽しいから、いいじゃないですか。

普通に育って、普通の大学を出て、全然違う世界に飛び込んでみて、何とかなってきたんだから、「まぁ、これからも何とかなるんだろう」って自信を身につけてきたんだと思います。

■無理やりでもやってきたからこそ何かが見えた。本気でやる、ということが


今、思うと、社会人になったばかりの当時は、突き詰める楽しさを知ったんだと思います。僕、いわゆる「ゆとり世代」なんだと思うんですけど。どっちかっていうと苦労しなかったし、何かにすごく打ち込むっていうことを、大学までやってこなかったんです。ただただ生きていた感じなんです。でも、社会に出て、「何よりも仕事が優先」、「どんなに小さい仕事でも頑張る」っていう環境になって。相当ブラックな状態で働いてきたと思うんですけど、徹夜なんて当たり前だし、土曜日とかに友達と遊んでいても会社から電話がきて、「今すぐデザインを直して、クライアントに持っていけ!」みたいな生活だったし。
でも、無理やりでもやってきたからこそ、何かが見えたんだと思います。本気でやる、本気でやってみる、ということを、最初こそはやらされていて、「なんだよ、くそ」とか思っていたけど、それをずっとやっていったら「なかなか面白いじゃん」って気づけたんだと思います。

頑張るって、苦しいイメージがあるじゃないですか。でも、頑張るって、そういう苦しいだけじゃなくて、「相手のために何ができるだろうか」って可能性を探ることなんだってわかったら、すごい楽しいんですよ。自分のために頑張るって辛いんですけど、「相手のために」って考えて、「どうしたら相手が喜ぶかな」って考えるのが楽しいんです。100喜んでもらうだけじゃなく、101、102喜んでもらうことに楽しさが見えたんです。すごいいい経験だったと思います。

――サラっと笑顔でおっしゃいますけど、結構、大変な経験だったんじゃないですか?

個人的には、本当に死にそうにならないと、考えって変わらないんだな、って思いました。「もう、そろそろ俺は死ぬだろう」っていうくらい、肉体的にも精神的にもボロボロだったんですけど。何日も徹夜してもダメ出ししかされないし、深夜3時から朝の7時まで説教しかされない、みたいな生活でした。やっぱりきつかったんです。でも、そういうのがないと自分は頑張れないなってこともわかったんです。追い詰められないと、頑張れないんもんな、って。自分はやっぱり可愛いし、早く寝たいし、おいしいものを食べたいし、遊びたいし(笑) 自分にこだわっているうちはダメだな、と思って。仕事は「相手」なんだ、と。「相手のために、どこまでできるのか、突きつめてみよう」みたいな考え方に切り替わったんです。考え方が変わったら楽になりましたね。考え方が変わったら、見え方が変わりました。「仕事って面白いじゃん! 楽しいじゃん!」って。まぁ、洗脳みたいなもんですけどね。

――考えを変えたのが、社会人2年目とか、そのくらいの時ですよね。すごいですね・・・

まぁ、でも、結局は、相手のためにやっている自分が好きなんですよね。どこまで相手のためにできたかっていう自分を褒めたいだけなんですよね。かといって、別に自分へのご褒美とかないんですけどね。「あー、自分頑張ったわ。これは褒めていいわ」っていうのを電車の中で、静かに、よっしゃーって思うだけです。そのまま焼肉食べて、美味しい酒を飲むか!とかはなくて、普通にコンビニでサラダ買って帰るか、っていう感じです。だから、結構、周りからは「変な人」って言われますけどね(笑)

田中健太さんが勤務するのは・・・
株式会社インソース
株式会社インソース 新卒採用ページ
株式会社インソース 中途採用ページ

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