日本企業の事業活動は、いまや日本国内にとどまらず、世界各国に展開する時代となっています。金融、商社、メーカーなどあらゆる業種で、日本本社の主導の下、それぞれの業種にとって重要な拠点となる国に子会社等の関連会社を保有し、これらと連携を保ちながらグローバルに事業展開を進めています。一方、本社サイドでは、こうした事業展開について、実態の伴うものであり「租税回避」や「タックスヘイブン課税」とは無縁だと考えているようです。しかしながら現行の税法では、こうした実態のある関連会社のほとんどが「タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)」の対象となります。そして、税務調査の結果、意図せず課税を受けることもよくあるようです。大企業の実態のある海外子会社について、想定していなかった課税が起きているのが実情なのです。
こうした状況下、国税当局は、さらに「タックスヘイブン対策税制」による課税強化に向かいました。平成 29 年度税制改正において、「タックスヘイブン対策税制」を抜本的に改正し、合算課税の対象範囲を広げました。これは、明らかに課税強化の内容となっています。また、税務執行面においては、昨今、国際課税専門の調査官を増員し、海外子会社等との関係や取引に着目した税務調査を重点的に行っています。
本講座では、実際に課税された事案を参考として、税務調査等における課税当局側の主張と企業側の対応策及び税制改正による変更点、留意点について検討します。