人的資本経営 研究教育センター

人的資本経営 研究教育センター

人的資本経営という概念

目次

人的資本経営研究教育センターの設立

 このたび、株式会社インソースと神戸大学大学院経営学研究科の間に包括連携協定が締結され、その象徴として神戸大学大学院経営学研究科内に「人的資本経営研究教育センター」が設置されました。私はセンター長を仰せつかっております上林憲雄と申します。何卒よろしくお願い申し上げます。
 当センターの活動や研究プロジェクトについてはホームページに掲載されていますので、詳細はそちらをご参照頂くことと致しまして、以下では「人的資本経営」という概念が、これまで用いられてきた「人的資源管理」という用語とどう異なるかについて、私の考えるところをご紹介し、最初のご挨拶に代えさせて頂きたく存じます。

意外に歴史のある人的資本という用語

 「人的資源管理」(Human Resource Management)という語は、組織における従業員の管理を示す人事管理や労務管理に代わる語として1990年代に登場しました。文字通り、人をコストではなく経営にとって役に立つ資源としてみようというのがこの用語の最も基本的ニュアンスです。
 実は、意外に思われるかもしれませんが、「人的資本」(Human Capital)という用語それ自体の歴史は人的資源管理よりも古く、1960年代にベッカー(Becker, G. S.)というアメリカの経済学者により主張されたのが最初です。ただ、少なくとも当時は、実務的にはあまり知られることはなく、社会へ広く流布することはありませんでした。

人をベースにした新たな価値の創出

 人的資源管理という用語は、シニア以下の管理職層とそれに続く従業員全体のマネジメント、換言すれば彼ら彼女らを管理・監督することが基軸の概念であるのに対し、人的資本経営では、末尾が「管理」から「経営」へと変わっていることからも窺える通り、人材の単純な管理・監督ではなく、彼ら彼女らを中核に据えながら組織全体を経営していこうとする志向を含んでいます。
 加えて、人材は資源ではなく、資本であると捉える点も、私は大きな意味を有していると認識しています。資源は費消されるもの、つまり使用すると枯渇していくものです。翻って資本という語には、何かを産み出し、新たな価値を創造する元手というニュアンスが込められています。いわば、人間は組織によって使われる存在から、主体的に価値を創出する存在へと捉え方が進化している点が、この人的資本経営という概念の最大の特徴といっていいでしょう。

人的資本経営の社会実装へ向けて

 ヒト、モノ、カネ、情報といった経営資源のうち、ヒトこそが価値を生み出す競争優位の源泉であるという点はかねてから指摘されていましたが、それを別の角度から端的に表現したのがこの人的資本経営という概念だとも捉えることができるでしょう。
 このたび設立された当センターも、人を基点に社会にとって有為な経営を実装していく存在として皆様のお役に立てるよう、センター長として精一杯努力していく所存です。関心をお持ちの読者各位におかれましては、どうかお気軽にセンターまでご相談ください。