人的資本経営 研究教育センター

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組織の中の人間行動のマネジメント

目次

個々の能力と組織の中での人間行動

スポーツに限らず、高い能力を持つ人々を揃えれば必ずしも良い成果に繋がるわけではないことは経験として我々は理解しています。個々の能力は確かに重要ですが、もう1つ大事な点は、その能力から成果に繋がる必要な行動を引き出すことができるか、またそれらの行動をいかに組み合わせるかという点にあります。私が研究している組織行動論や経営組織論は、組織の中の人間行動に焦点を当ててマネジメントを考えています。

過度な数値目標の繰り返しと職場の劣化

長らく私は良好な組織と個人の関係とその構築について双方の視点から考えてきました。その中で組織と個人を繋ぐ職場の意義を考え、いかに良き職場を構築するかが良好な組織と個人の関係を構築する鍵になると考え、最近は職場のマネジメントの中心を担うマネジャーのリーダーシップを研究しています。特に成果主義の中でしばしばみられる達成目標としての数値の強調がもたらす負の側面について研究を進めてきました。
数値目標は、Do your Bestによる管理よりもより良い成果をもたらすことが過去の研究から言われていますが、それが繰り返し行われることや過度に強調されることで非倫理的な行動を引き出してしまうことも言われています。また私の研究では、個々の数値目標が強調されることで、仲間を助けたることや教えるような行動が減り、豊かな職場を阻害する可能性があることもわかってきました。このような問題は、数値が強調されることが一時的にも成果に繋がることがあるからです。マネジャーは自身が数値を強調するようマネジメントを行う結果、数値が一時的に上がるため、その背後で進行する職場の劣化に目がいかなくなってしまい、むしろ自身の成功体験として捉え、それを繰り返してしまう危険性があります。

リーダーシップの育成と新しい日本のマネジメント

この延長線上で、リーダーシップの育成についても関心を持っています。近年、管理職になりたくないといった考えを持つ若手従業員が増えています。その理由はいくつか考えられるものの、その対応を含めたマネジメントはまだ多くの企業で途上かと思います。これまでリーダーシップの育成は経験によるものが大きいとされてきました。その重要性は認めつつも、知識としてリーダーシップを学びながら、リーダーとしての考え方や視野の広さなどを養う方法はあるのではないかと考えています。リーダーシップを発揮することやマネジメントの仕事をすることは責任が重い仕事ではありますが、一人ではできないことを成し遂げることができる面白さもあると考えています。リーダーシップの育成の研究を進めながら、リーダーシップを発揮する役割を積極的にとらえるようなことができればと考えています。
また少し異なる視点として、お仕事マンガと呼ばれるマンガを分析対象として、日本人の働き方や仕事観などを分析する研究も行っています。日本の人的資本のマネジメントは日本的経営の中核を担ってきましたが、日本企業の世界的プレゼンスの低下に伴い、世界的にはあまり注目されない存在になってしまいました。この30年の間、日本企業(特に人のマネジメント)は全く成長・変化をしてこなかったわけではありませんが、新しい日本のマネジメントはあまり世界には発信されてこなかったかと思います。マンガによる分析を通じて、改めて日本企業の人のマネジメントの特徴を見出し、世界に発信できればと考えています。

ご興味をお持ちになられた方は、人的資本経営研究教育センター(hcmrec@b.kobe-u.ac.jp)までどうぞお気軽にご相談ください。