ミンツバーグで自分のマネジメントを振り返る~3つの活動と10の役割

ミンツバーグで自分のマネジメントを振り返る~3つの活動と10の役割

マネジメント理論については、P・F・ドラッカーが有名ですが、もう1人ヘンリー・ミンツバーグという巨匠もいます。ドラッカーが主にマネジメントの原理・原則を説くのに対し、ミンツバーグのマネジメント論は理論に縛られず実践的で、具体的という特徴があります。 ミンツバーグのマネジメント論は、自分のマネジメントの抜け漏れや見直しを行うのに有効なものとなっています。

1.ミンツバーグのマネジメントとは

(1)マネジメントにおいて重要なこと

まず、ミンツバーグが特にマネジメントについて重要とするポイントについてみていきます。

①実践を行いながらマネジメントの技能を磨く

ミンツバーグは、マネジメントとは、「実践の行為」であり、現場との具体的な文脈(状況や環境)を踏まえながら行う必要があり、そのため、マネジメントの技能・手法は現場の「経験」を通じて習得していく必要があるとしています。

②有効なマネジメント技能・手法はその現場限りのもの

ミンツバーグは、マネジメントの実務は、暗黙知が多く、マニュアル化が困難であるので、マネージャーは、直接現場でマネジメントを実践しながら技能や手法を強化する必要があるとしています。また、マネジメントは特定の文脈に立脚しているので、その現場で習得したマネジメントの技能・手法は、同じ会社であっても他の部署でそのまま通用せず、もちろん別の組織であれば、もっと応用することが難しいとしています。

③自分で物事を一つずつ分析し、マネジメントの「全体像」を定め推進する

また、ミンツバーグは、

分析によって細かく分析された世界を、どのようにして一つにまとめればいいのか。ものごとを一つにまとめ上げることは、マネジメントの本質中の本質だ。一貫性のあるビジョン、統一された組織、統合されたシステムといった形で、すべてを総合しなくてはならない。だからこそ、マネジメントは難しく、そして楽しいのだ。では、細かく断片化された情報に取り囲まれた状況で、マネージャーはどうやってものごとの全体像を把握すればいいのか。組織は美術館ではない。周囲を見回しても「全体像」という名の絵など飾られていない。自分の頭の中に、みずからその絵を描いていかなくてはならないのだ

ヘンリー・ミンツバーグ著、池村千秋訳『エッセンシャル版 ミンツバーグ マネージャー論』日経BP社、2014年、185~186p

として、マネジメントに最初から答えはなく、自分で物事を一つずつ分析し、マネジメントの「全体像」を定め推進していく必要があるとしています。

④部下がパフォーマンスを発揮するための環境を整えることが重要

さらに、マネジメントは、自己実現をするためのものではなく、部下が安心して自らの能力を発揮し高いパフォーマンスを生み出す環境を作ったり、部下がより多くを学べる環境を整えるためにあるとしています。

具体的にミンツバーグは、

マネージャーは現場から距離をおいて活動する。マネージャーは現場から一歩離れて、自分では直接手を出さずに、ほかの人間が行動する背中を押す。つまり、組織のメンバーのコーチングを行ったり、モチベーションを高めたり、チームを築いたり、組織文化を強化したりすることによって、ほかの人間を通じてものごとを成し遂げる

ヘンリー・ミンツバーグ著、池村千秋訳『マネージャーの実像~「管理職はなぜ仕事に追われているのか』日経BP社、2011年、72p)


ことがマネジメントであるとしています。

つまり、メンバーをまとめ上げてチームワークを高めたり、部署内やチーム間のコンフリクトを解決するなど、すべてのメンバーが安心して働き、高いパフォーマンスを発揮できる心理的安全性が担保された職場をつくることが、マネジメントを行う上で重要だとしています。

(2)マネジメントの3つのスタイル

また、ミンツバーグは、マネジメントの要素を「サイエンス」(科学)、「アート」(芸術)、「クラフト」(実践で得た技能)の3つで捉え、いずにも偏ることなく、3つのスタイルをバランスよく発揮しながら、マネジメントを行わなければならないとしています。

まず、サイエンス(科学)とは、体系的な知識やデータに基づいて合理的に物事を考えたり、判断・決断することです。サイエンスのスタイルが強いマネージャーは、分析を重視する「頭脳型」なスタイルとなります。

アート(芸術)とは、ビジョンを示したり、アイデアを創造・発想したりすることを指します。アートの要素が強いと、様々なことからインサイト(本質的な直感)を得て、イノベーティブなアイデアを作り出したり、ビジョンを示しながらメンバーを導く天才肌の「洞察型」マネージャーとなります。

最後に、クラフト(技能)とは、実践経験の中で習得した技能を活かしてマネジメントを行うことです。クラフトの要素が強いと、部下に積極的に関与しながら、自らの経験に即して具体的に現場に指示を出す「実践型」のマネジメントスタイルとなります。

上記3つをバランスよくマネジメントで発揮することが重要で、
・サイエンスの要素が強すぎると、データの裏付けがあり合理的に物事が動くが、面白みに欠けた窮屈な環境となりチームが活性しないということになってしまいます
・アートの要素が強すぎると、自己陶酔型のナルシストなマネジメントになってしまい、メンバーが付いてこないという事態になります
・クラフトの要素が強すぎると、マネージャーが自分の経験の範囲内で判断しすぎて視野が狭くなり(タコツボ型)、大局的でスケールが大きいアイデアや施策が生まれないなどの問題が発生します

さらにミンツバーグは、

アートとクラフトだけで、サイエンスによる体系的分析を欠くマネジメントは、支離滅裂な無秩序型になりかねない。アートとサイエンスだけでクラフトの要素を欠くマネジメントは地に足のつかない現実遊離型になりかねない。サイエンスとクラフトだけでアートとビジョンを欠くマネジメントは、刺激のない無気力型になりかねない。
マネジメントを成功させるためには、アートとクラフトとサイエンスの三要素をブレンドしなくてはならない。マネージャー個人が三要素をあわせもつか、そうでなければマネジメントチーム全体として三要素をすべてもっている必要がある。マネジメントはサイエンスとイコールではないが、ある程度はサイエンスの生み出す秩序が必要だし、クラフトが生み出す現実的な態度も欠かせないし、アートが生み出す情熱もなくてはならない。

(ヘンリー・ミンツバーグ著、池村千秋訳『マネージャーの実像~「管理職はなぜ仕事に追われているのか』日経BP社、2011年、193~194p)

としています。

上記の通り、サイエンスとアートとクラフトは、マネジメントを行う際にバランスよく実践する必要がありますが、ミンツバーグは、必ずしもマネージャーが一人でそれを身につける必要はなく、メンバーも合わせて、チーム全体で3つの要素を兼ね備えれば良いとしています。

■マネジメントの3つのスタイル

みなさんのマネジメントスタイルは、どの形に当てはまるでしょうか。 下記の「マネジメントスタイルの自己診断ツール」を使って、是非自分のスタイルを確かめてみてください。下の表のそれぞれの行の3つの言葉のなかから自分のスタイルに最も近いものを選んでください。10項目を選び終わったら、それぞれの縦の段ごとに集計してみてください。左の段はアート、中央の段はクラフト、右の段はサイエンスに対応していますが、その合計数が多いものが、あなたのマネジメントスタイルとなります。

■マネジメントスタイルの自己診断ツール

1アイデア経験データ
2直感実践分析
3ハート頭脳
4戦略プロセス結果
5鼓舞する関与する情報伝達する
6情熱がある手を貸す信頼性がある
7斬新現実的ブレない
8想像学習組織構築
9見るやる考える
10可能性無限!仕事をやり遂げようこれで完璧だ
合計点

(前掲『エッセンシャル版』145p)

2.マネージャーの3つの活動と10の役割

さらに、ミンツバーグは、細かくマネジメントの活動と役割を定義しています。 ミンツバーグは5人の経営者の仕事を観察しながら、マネージャーの仕事を3つの活動と、10の役割に分類分けしました。

ミンツバーグは、マネージャーの活動は、主に「対人関係」「情報伝達」「意思決定」の3つに分類できるとし、その3つの活動からさらに、3つの対人関係の役割、3つの情報関係の役割、4つの意思決定関係の計10の役割があるとしています。

「役割」とは、役職や職位につく人間が行動した結果が凝縮されたもので、各マネージャーの行動には個人差があるが、マネージャーの個性は、役割がどう演じられるかには及んでも、演じられる役割そのものには関係しないので、ミンツバーグは、ある程度、マネジメントの役割は一般化することができるとしています。

下記がその一覧となります。

  

以下、それぞれの役割の説明とともに、自らマネジメントにおいてその役割を果たしているかチェックするリストも用意しましたので、是非、自己診断をしていただければと思います。

(1)対人関係 ①フィギュアヘッド(組織を代表する)

フィギュアヘッドは、自分の組織を代表するという象徴的なマネージャーの役割です。会議などに部署を代表して参加するなど対外的に自部署を象徴したり、部署で成績優秀者を表彰する、部下の結婚式でスピーチするなど儀礼的な役割を果たします。

マネージャーには、このような組織を代表するという責任があるので、日頃から言動に注意したり、コンプライアンスを遵守することが求められます。フィギュアヘッドが問題を起こすと、自部署のメンバーに悪影響を与えるだけでなく、対外的に組織の問題として責任を問われることになります。

また、対外的に会社・部署を代表する者として、好印象を持たれるように、マナーや身だしなみにも注意する必要があります。

チェック 内容
部署、組織を代表しているというオーナーシップ(当事者意識)がある
部署のメンバーに慕われている。人望がある
社会・組織のルール、コンプライアンスに違反しないように注意している
他部署、顧客に対して影響力をもっている(キャリア、能力、実績など)
相手に好印象を持たれるためのマナー・身だしなみに留意している

(2)対人関係 ②リーダー(リーダーシップ・部署運営)

リーダーの役割は、部下とコミュニケーションを取って動機付けをするなどのリーダーシップ、人員配置など部署運営を行う意思決定を行うことです。

ミンツバーグは、

リーダーシップとは、率いるものと率いられる側との対人関係である。非公式集団ではふつう、人はリーダーの肉体的なパワーやカリスマ性についていく。公式組織では、リーダーは上から任命されており、マネージャーは自分の役職に付与されたパワーにたよらねばならないことがよくある。 原始的な集団には、体力による勇敢さや精神的な鋭敏さ、あるいは説得力といったリーダーのパーソナリティの優劣が作用してできる権力構造が存在する。しかし、権限構造はこれとは別で、ある種のパーソナリティではなく、構造の中に正当化された地位がもたらす秩序によって人が動くのである

(ヘンリー・ミンツバーグ著、奥村哲史・須貝栄訳『マネージャーの仕事』白桃書房、1993年、100p)


としており、リーダーの役割は、個人の人間力ではなく、あくまでも組織からマネージャーに公式に与えられた権限の行使であることを確認しています。

その他、リーダーの役割の具体例としては、チームの核となり集団をまとめる(チームビルディング)、チームの意思決定を行うために集団の総意を汲み取ることなどが挙げられます。

チェック 内容
部下と普段から会話したり、1対1面談でじっくり話すなど密にコミュニケーションがとれている
部下の長所や仕事のこだわりなどを把握して、やりがいをもって部下が仕事をできる環境づくりができている
部下から公平に意見を聞いて、意思決定ができている
部署のミッションを達成するために必要なポートフォリオを描けている(必要なスキル、人員構成、適切な人材配置など)

(3)対人関係 ③リエゾン(人と人を結びつける)

リエゾン(liaison)とは、本来は「音がつながること」を意味するフランス語で、「仲介」「橋渡し」「つなぎ」という意味もあります。

軍隊には、連合軍隊などの各軍の間の調整を行う「リエゾン・オフィサー」という役職があり、そこから転じて、ビジネス分野でも異業種間の提携・企業内の別部署間の連携などの際に、調整的な役割を担う「連絡窓口」に、リエゾンという言葉が使われるようになりました。

これまでリエゾンは、医療や特許といった高度な専門知識が必要な職種に限られていましたが、近年ではより幅広い人材に求められるスキルとして注目されています。

その背景には、グローバル化の進展、消費ニーズの多様化があります。経済環境の複雑化により、既存の取引先に加えて異国間・異業種間の連携や提携が増えたことから、関係者を上手く橋渡しするリエゾンの役割が重要視されています。

また、社会貢献などのCSR活動に力を入れる企業が増えており、顧客・従業員・株主・地域の人々といったあらゆる利害関係者から信頼を得ることが企業のビジョンの一つとなっています。

リエゾンの役割を果たすためには、まず人の話を聞く(傾聴)、さらに、多様な意見を論理的にまとめ上げ、分かりやすく伝えるための思考力や説明力、ステークホルダーとの調整力や交渉力も必要です。また、自部署だけではなく、他部署、顧客などのステークホルダーを巻き込みながら成果を出していくリーダーシップも、リエゾンの役割を果たすために欠かせない資質といえます。

チェック 内容
自部署のメンバーとのコミュニケーションを円滑にとり、チームビルディングができている
他部署、顧客、協力会社などのステークホルダーとの関係が良好である
相手の意見を引き出せる傾聴力がある
多様な意見を論理的にまとめ上げ、分かりやすく伝えるための思考力や説明力がある
多様な意見を論理的にまとめ上げ、分かりやすく伝えるための思考力や説明力がある
ステークホルダーとの調整や交渉を円滑に行える
様々なステークホルダーが参加するプロジェクトを主導できる

(4)情報関係 ①モニター(組織内外の情報収集)

マネージャーは組織の情報中枢として、様々な判断や意識決定が必要なため、多様な情報を収集する必要があります。モニターの役割は、有効な施策を行うために、現在の組織の状況などの内部分析や、マーケットやニーズ、ライバル社の強み・弱み、新しい技術などに関する知識などの外部情報を定期的に収集することです。また、情報を集めて、分析をすることで、変化をキャッチしたり、チャンスをみつけたり、問題発見をすることもモニターの役割に含まれます。

チェック 内容
様々な判断や意識決定のため、多様な情報を日頃から収集できている
内部の環境分析を行い、現在の組織、部署の強み・弱みを把握できている
マーケットや顧客、新しい技術・知識などの外部情報を定期的に収集している
ライバル社の強み、弱み、財務状況などを把握している
収集した情報を分析して、変化をキャッチしたり、チャンスをみつけたり、問題発見を行えている

(5)情報関係 ②「周知伝達役」(情報の提供・共有)

周知伝達役とは、モニターの役割として、内部・外部から集めた情報について、マネージャーが組織内や自部署のメンバーに伝えるべき、価値のある情報を伝達する役割です。蜜蜂があちこちの花を飛び回って花粉を媒介するように、マネージャーは組織内で情報を媒介する役割を果たしています。

マネージャーがもたらす情報は、「事実に基づく情報」(事実情報)と「価値に基づく情報」(価値情報)の2種類に分類できます。

「事実情報」は、マネージャーが自分のネットワークから集めた、他では得られない情報のことですが、こうした情報をマネージャーは自分の元に集め、組織や部署のメンバーに伝達・共有し、組織力を高める必要があります。

また、「価値情報」とは、マネージャーの価値基準を言葉として部下に伝える情報のことです。この情報は、部署としての判断基準をそろえたり、また部下が自分と同様の基準やレベルで判断ができるようになるように指導するために使われます(部署として年間の活動方針、直近1ヶ月の行動方針、商品・サービスの値付け方針など)。

他に、部署内で暗黙知となっている知識や情報をマネージャーが言語化して部署内で共有したり、モニターとして収集した情報の中で、自分しか理解できない情報についてはかみ砕いて部署内で共有したりすることも周知伝達役の役割となります。文書化された情報(形式知)は伝達が容易ですが、部署内でマネージャーが入手する情報は、感覚や記憶というような未加工な情報で、そのままの形では伝達が難しいため、マネージャーを媒介して伝達する必要が発生します。

チェック 内容
組織や自部署に利益となる有益な情報を収集し、定期的に部下などに伝達している
部署内の価値基準を揃えるため、部下に自分の考え方や価値基準をしっかりと示している
部署内で暗黙知となっている情報を、組織内で共有できるよう工夫して伝えられている

(6)情報関係③スポークスマン(外部への情報発信)

マネージャーはスポークスパーソンとして、対外的に組織を代表して話をし、組織の主張を通すための働きかけを行ったり、組織の業務の専門家として公の場で振る舞ったり、組織の状況について外部の利害関係者に最新の情報を提供する役割もあります。

スポークスマンの役割は、情報を外部に広めることです。先ほどみた周知伝達役の役割が組織の内部への伝達だったのに対し、スポークスマンの役割は組織の外部に情報を伝達することにあります。自部署の価値を高めるため、他部署のマネージャーや、トップや経営陣に自部署の計画や方針・成果などをアピールします。また、顧客に対する評価を高めるためにも、スポークスマンの役割が期待されます。

チェック 内容
部署内の円滑なマネジメントだけではなく、外部に対して自部署の価値をどのように高めるかという活動も行っている
自部署の価値を高めるため、他部署のマネージャーや、トップや経営陣に自部署の計画や方針・成果などをアピールしている
顧客に自社や商品・サービスの価値を高めるため、有益な情報提供をしている

(7)意思決定①「企業家」(組織の変革)

「企業家」は、マネージャーへの組織変革を期待する役割です。 変革を実現するために、まず、マネージャーは、組織・部署の全体を観察し、モニターの役割の一部として、組織を細かく調べ、情報を分析します。それを踏まえ、マネージャーは変革を企画・設計し、その計画の実現するためにプロジェクトを主導します。

また、組織で変革を行う際には、現状のリソースから、部署内の業務改善を行って、変革を行う人材を捻出したり(部署内の2割程度の人材を捻出)、変革に対する協力や理解を得るために他部署に調整や根回しを行ったり、変革の実行やリソースの確保のためにトップや経営陣に「ロビー活動」を行うことも必要となります。

チェック 内容
部署内の安定だけではなく、変革に対する意欲、行動も行っている
部署内の業務改善を行って、変革を行う人材を捻出することができる(部署内の2割程度の人材)
変革に対する協力や理解を得るために、他部署に調整や根回しを行うことができる
変革の実行やリソースの確保のためにトップや経営陣を粘り強く説得できる

(8)意思決定②「障害処理者」(トラブルシューター)

また、マネージャーには、自分の組織が脅威にさらされた場合の障害処理者(トラブルシューター)の役割もあります。マネージャーは予期できない問題やトラブルに対しても、逃げずに自ら矢面に立って部署を代表して対応する勇気が必要です。

企業家の役割が組織変革を成し遂げる自発的な行動であるのに対し、障害処理者の役割は、マネジャーのコントロールが及ばない不測の事態が起きたり、忘れていた問題が再燃したり、新たなライバルが市場に参入した際などの危機対応となります。

また、部署内での、チームメンバー同士の不仲・あつれき、部署内のチーム間でのいざこざなどの人間関係から、自部署と他部署の間でのトラブル、顧客からのクレームなどのトラブルなどの様々なトラブルシューティングもマネージャーの役割となります。

チェック 内容
予期できない問題やトラブルに対しても、逃げずに自ら矢面に立って部署を代表して対応できる
問題やトラブルが起こりそうなリスクの芽をしっかりと把握している
チームメンバー同士の不仲・あつれき、部署内のチーム間でのいざこざなどの人間関係に対処できる
自部署と他部署の間でのトラブルに対応できる
顧客からのクレームを上手に収められる

(9)意思決定③「資源配分者」(資源の配分の仕方を決定)

マネージャーは、自分の組織・部署の重点方針を決め、その達成をより少ない資源(リソース)で実現するために、資源をどこに投入するか適正な配分を行う役割もあります。

組織の資源には、ヒトやそのヒトが生み出す人的資本(集合知、ノウハウなど)、商品などのモノ、お金や時間などがありますが、これらを組織・部署でどのように使用していくかについて、決定する権限がマネージャーにあります。

チェック 内容
自部署の重点方針をしっかりと定めている
部署内の人員構成、部下の強み、スキルなどを理解している
ヒト・モノ・カネを適正に資源配分できる
自部署と他部署の間でのトラブルに対応できる
顧客からのクレームを上手に収められる

(10)意思決定④「交渉者」(組織内外の困難事項を交渉・調整)

交渉者の役割としては、その名の通り、フィギュアヘッドとして組織を代表して、組織の利益を確保するために、スポークスマンとしての役割を踏まえ、重要な事案について、組織に利益をもたらすように交渉することです。

交渉とは、関係者がそれぞれの目的・利益について主張し、相互に議論をしながら合意に至るための話し合いのことです。

交渉でより良い合意を得るためには、関係者間で十分に話し合い、その結果を双方で吟味して、お互いの落としどころを検討する時間や機会を十分にもつことが必要です。

また、最終的な合意内容が、交渉を行った関係者の中でできる限りWIN-WINとなるもので、合意した内容を無理なく継続できる内容とすることが理想的な交渉となります。

チェック 内容
組織を代表して、組織の利益を確保するために交渉を行うことができる
自分の利益だけでなく、相手ともなるべくWIN-WINとなるよう、双方で良い合意を得ることができる

以上、マネージャーの3つの活動と10の役割を個別に説明してきましたが、これらは一つひとつが簡単に分離できず、それぞれが関連し合って統一的な全体を形作っています(ゲシュタルト)。

例えば、リエゾンの役割が不足すると、モニターの役割が果たせなくなり、周知伝達役やスポークスマンの役割を果たせなくなります。また、営業マネージャーは対人関係の役割に重点を置いたり、製造現場のマネージャーは意思決定に多くの時間を割いたり、サービス現場のマネージャーは情報関係の役割を多く果たしたりなど職種ごとに重視するマネジメントは違いますが、どの職種のマネージャーも抜け漏れなく役割を果たす必要があります。

3.まとめ

ミンツバーグは、下記のように、マネージャーの仕事、役割についてまとめています。その内容は、マネジメントの目的は、業務を効率化すること、高い生産性を上げられること、部下を成長させられる環境を整えること、安定と変革をバランスよく職場で実践することとしています。

マネージャーは安定した組織業務をデザインしその安定性を維持しなければならない。つまり、組織業務をプログラムし、そのプログラムがきちんと決まった仕事の流れを確保しているかどうか監視しなければならない。誤差が発生した場合にはそれを修正し、必要とあれば新しい資源を配置して業務のスムーズな流れを確保しなければならない。またリーダーとしては、必要な仕事を行っていけるような雰囲気を育て、維持しなければならない。マネジャーの基本的使命は、組織が一つの統合されたユニットとして機能することを確実にすることなのだ。

マネジャーは組織の戦略策定システムに責任をもち、そのなかで統制された方法により変化する環境に組織を適応させていかなければならない。モニターとして、環境の動向に詳しく、企業家およびリーダーとして組織に方向を示し、また組織が不必要に混乱せずその方針に従えるような方法で変革を導入しなければならない。安定と変革の間のバランスを保つのはマネジャーの課業のなかでももっとも難しい部類にはいる。

(前掲『マネージャーの仕事』153~154p)

ミンツバーグのマネジメント論を、自らマネジメントする部署の成果を持続的に上げ続けること、また安定と変革を交互に演出しながら、組織を停滞させず、部下や組織を成長に導く組織運営の参考にしていただければと思います。

ミンツバーグも、

読み終わったとき、読者が知識を増やしていてほしいとは思わない。著者である私と一緒に想像をめぐらし、自分の経験を振り返り、問いを発するきっかけにしてほしい。マネージャーの仕事の質は、どれだけ自分の頭で考えて行動できるかで決まるのだから

(前掲『エッセンシャル版』20p)

と言っています。

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