アサーティブコミュニケーション~不安に打ち克ち、勇気を持って相手に率直に話す方法

アサーティブコミュニケーション
~不安に打ち克ち、勇気を持って相手に率直に話す方法

昔と比べ個々の価値観が多様化している現代は、より複雑化なコミュニケーションが求められる機会が多くなっています。また異なる立場や考え方を持つメンバーとも、協働して仕事を進める場面も増えています。

そのような中、相手に言いたいことを言えずにストレスを抱えてしまったり、逆に感情的な言い方をして相手との関係が悪くなってしまったりなど、職場のコミュニケーションにおけるお悩みをよくお聞きします。

そこで今回は、自分の伝えたいことを、自信・勇気をもって相手に真正面から伝え、相手へのメッセージ力を高める「アサーティブコミュニケーション」の方法についてお伝えします。

自分と相手どちらも尊重できるアサーティブな姿勢をとれるようになるには、まずは自分自身の思いと「まっすぐ向き合う」ことが重要です。部下や上司とのコミュニケーションが上手くいかないとお悩みの方に、参考としていただければ幸いです。

1.人の考え方・行動のパターンとは
  ~アサーティブになれない人の特徴

上手くいかないコミュニケーションの背景には、多くの人が取ってしまいがちな「考え方」や「行動のパターン」があります。

■上手くいかないコミュニケーション:人の考え方・行動における典型的な3パターン

①我慢・非主張型 : 自分の考えや気持ちを抑え、相手に言わないでいる
・相手に配慮しているが、我慢し過ぎると、自分にストレスがかかる
・相手が、あなたに対して、自分の言いなりになって欲しいと思っているとは限らない
(例)「上司に文句を言ったら自分の立場が悪くなるかもしれない」と考え、大勢の人の前で怒鳴られても我慢する。

②反発・主張型 : 自分の考えや気持ちを第一に考え、相手に主張する
・我慢するストレスはないが、自分の考えを押しつけることで周囲の反発を受ける
・反発・主張型の行動を続けていると、次第に周囲から避けられるようになる
(例)「後輩に指導するのは先輩として当然」と考え、自分のやり方を押しつける。
   無視されると「さっさとやれよ!」と命令し、イライラする感情をぶつける。

③作為的 :まわりくどい言い方や態度で、相手に結論を言わせようとする
・相手が結論を察してくれればよいが、相手が期待する行動をとるとは限らない
・相手に非があるように思わせるコミュニケーションのため互いによい気持ちがしない
(例)残業を頼まれてしまったが、本当は早く帰りたい。そこで、依頼者の前で体調が悪そうにして、「今日は帰っていいよ」と言わせる。

このように人間関係に摩擦が起きるのを避けるために、有効なコミュニケーションスキルとして知られているのが、「アサーティブ」です。

自分と相手双方の考え・気持ちを同等に扱い、正直に勇気をもって率直に相手に伝えることで、下記のようなメリットを感じることができます。

・コミュニケーションや人間関係におけるストレスが減る
・双方納得のいく結論を目指し、自他尊重したコミュニケーションが実現する
・相手への理解が進み、よい人間関係を築くことができるようになる

しかし、ずっと我慢していたことを伝えたり、立場が上の人に自分の考えを主張したりするのは、とても勇気がいることです。 相手に拒絶されるかもしれないという「不安」に打ち克ち、上手く自己表現できるようになるには、アサーティブの本質を理解する必要があります。

2.アサーティブの「4つの柱」とは

アサーティブな姿勢で相手とコミュニケーションを取るうえでのベースとして理解しておかねばならないのが、アサーティブを支える「4つの柱」です。これらの4つの柱を自分の"核"として落とし込むことで、難しいコミュニケーションの場面でも勇気をもって、言うべきことを感情的にならず言えるようになります。

■アサーティブの「4つの柱」 ~誠実・率直・対等・自己責任

①誠実
・自分に対しても、相手に対しても誠実である
・自分に対して正直になることで、相手にも誠実になれる

自分に対しても、相手に対しても誠実であることが、アサーティブの基本です。 相手との関係性において自分の中に不安や恐れがあるならば、まずは正直に言葉に出して認めましょう。それが、相手に対して虚勢を張ったりせず誠実に向き合えるようになるための第一歩です。

②率直
・主語は「私」(上司が、みんなが、○○さんが、などと他者を介さない)
・相手に伝わる"ストレートな"言葉で伝える

「率直」とは、"ありのままで隠すところ"がないという意味です。変化を望んでいるのは自分なのに、あたかも他の誰かがそう思っているかのように伝えたり、遠回しな言い方をして相手に察してもらうことを期待していても、相手に「本気」は伝わりません。

主体者であるべき自分を表に出さず、他者を介在させてしまうことで、相手に「あなたはそう思っていないのに、なぜそのことを私に言うのか」と思わせてしまいます。さらに、「みんなが」「他のメンバーが」など複数人のことを持ち出すと、相手に数の脅威を与え、相手を追い詰めることにもなりかねません。

③対等
・自分も相手も尊重する
・心も態度も対等な姿勢で向き合う
(必要以上に卑屈にならない、相手を見下さない)

職場の上司あるいは部下に対して上下関係を全く意識せずに接することは、実際にはあり得ないでしょう。地位や年齢といった様々なものさしにとらわれてしまうと、勝手にコミュニケーションの仕方を変えてしまいがちです。

しかし、自分の率直な考えを伝えるためには、対等な姿勢で相手と向き合わなくてはなりません。立場が違う相手でも、同じ一人の人間として見ることで初めて、自他尊重を実践することができます。

④自己責任
・言ったことだけでなく言わなかったことも、自分の行動の結果を自分で引き受ける
・コミュニケーションの結果を相手や環境のせいにしない

自分の率直な思いを伝えることで、その後の状況や相手との関係性が良い方向に変われば最高ですが、例え改善しなかったとしても、自分にとって重荷、懸案であったことに対し真正面からぶつかったことで、達成感を得られます。強敵・難案件にひるまず挑んだ自分に対し自信を深めることができますし、ずっと引きずっていた思いに区切りをつけ、気持ちを新たにすることができます。

3.アサーティブな対話を始める前の準備とは
  ~3ステップで考える

「4つの柱」を自分の"核"として落とし込み、アサーティブになるための力を得たら、いよいよ対話を始める時です。

これまで相手に率直に伝えられず、一人で抱えてきた問題の中には、本当は相手に何を望んでいたのか分からなくなってしまったものもあるかもしれません。 相手に伝えたいことを明確にするには、以下のステップで自分の"心の中"を整理していくのがおすすめです。

■アサーティブに話すための準備 ~3つのステップで伝えることを整理

不安に打ち克ち、勇気を持って相手に率直に話す「アサーティブコミュニケーション」

【ステップ1】 問題の状況の整理 ~何が問題となっているか

①何が問題なのかの「焦点」を絞る
まずは、これまで相手がしてきたこと、してこなかったこと、自分を怒らせたこと、嫌な思いをしたことなどを洗い出します。問題を具体化して、相手の行動を「その人自身」から切り離すことによって、自分が不愉快になった行動を正確に具体的に表現することができるようになります。

②相手の「行動」に問題を絞ることで、相手に冷静に受け止めてもらう
問題は「相手」そのものではなく、相手の「行動」であることがはっきりわかるように伝えると、相手は「自分」そのものを批判されたとは感じないので、冷静に受け止めることができます。

(例)× いつも遅刻してくるAさん → だらしないAさんに問題がある
   ○ Aさんはいつも遅刻する → 定時に出社できないのは良くない

このように問題の答えが絞れてくると、相手に対して独善的な態度をとったり、一方的なレッテル(自己中心的だ、無能だ、など)をつけて自分の優位性を誇示すること(いわゆるマウンティング)を避けられます。「何が起こっているのか?」を具体的にしていくことで、感情に押し流されることなく、冷静に相手とコミュニケーションをとることができます。

【ステップ2】 問題に対する感情の整理 ~問題に対してどのように感じているか

①問題の発生によって感じていることを具体化
ステップ1で明確になった問題により、自分がどんな感情になるのかを具体化します。自分の中に沸きあがる怒り、悲しみ、不安、恐怖などを言葉にして一旦外に出してみましょう。 言語化して自分の感情を客観視すると、不安に飲まれて言いたいことを我慢したり、感情に押し流されるまま攻撃的になってしまうことを回避できます。

②理由・原因ではなく相手に感じていることを整理
問題が発生する理由や原因を考え出すと、自分自身の率直な思いに向き合うのではなく、相手にとっての言い訳を探したり、相手のモラルのせいにするといった方向に意識が向かってしまいます

(例)× Bさんが厳しく叱るのは、私を嫌っているからだ。
   〇 Bさんから、他の人も見ている前で叱責されると嫌な気持ちがする

(例)× Cさんには丁寧さが足りない。もっと慎重になるべきだ
   〇 Cさんのチェックに漏れが多く、検品ミスが増えているので改善してほしい

「●●でなければならない」という「べき論」の押し付けは、相手からの反発を招きます。自分が感じていることを率直に伝える方が、相手もそのような姿勢に影響されて、感情的にならず素直に指摘を受け入れやすくなります。

【ステップ3】 問題の解決方法の整理
 ~どのように改善・解決したいか、相手にしてもらいたいことは何か

①相手をなるべく批判しない
自分が言いたいことは、きっと察してくれるはず......これでは話し合いは前に進みません。相手にどのように変わってほしいのか、具体的に言葉にする必要があります。しかし、相手のミスや実力不足、あるいは性格的な問題といった「弱点」を指摘し、「こうあるべきだ」と批判するだけでは、自分の要望を受け容れてもらうのは難しいでしょう。

相手に本当に変わってほしいと思うなら、誰にとっても合理的だと考えられる解決策を考えてみましょう。たとえ相手が望まないことであったとしても、その要望に合理性があり、かつ正当で建設的だと感じてもらえれば、協力してもらえる確率は高まります。

(例)× いい加減な性格を直さないと、いつまでたってもミスはなくならないよ!
   ○ ミスを未然に防げるよう、まずはチェックリストを作ってみてはどうだろう

②自分の理想、希望を押し付けない
特に、上司・部下などの上下関係がある場合、多かれ少なかれ、相手に対して「〇〇であればいいのに」、「こうなってほしい」という理想、希望を持っています。しかし、そのような要求を一方的に押し付けても、相手がそれを受け容れる可能性は低く、それどころかかえって防御的な姿勢を取らせてしまいます。

相手の変化を促すためには、できれば相手が変化することの必要性について自ら理解し、納得してもらうことがベストです。相手が同意しないまま、力関係で要求を押し付けるのは、相手を力で封じ込めるだけであり、相手の心からの真の変化にはつながりません。どうしたら相手の理解を得られるか、対等な立場に立ったうえで、実現可能な提案を考えてみましょう。

③相手が受け容れることが可能な量、質で依頼する
相手に行動を具体的に変えてほしければ、相手が受け容れることが可能な量、質で相手に依頼することが必要です。そうでなければ、相手も「自分を変えなければいけない」という積極的な気持ちになれません。人は自分の能力の範囲内でできることなら、相手から何かを変えてほしい要望されても前向きに応じようと思うものです。

※参考:アン・ディクソン『それでも話し始めよう アサーティブネスに学ぶ対等なコミュニケーション』クレイン, 2006

まとめ

いかがでしたでしょうか。
「率直」と「対等」、この2つのキーワードが、真のアサーティブコミュニケーションを実現するカギを握っています。今回の内容を通じて、言いたいことを上手く伝えられるようになるための力を得た、と感じていただけたなら幸いです。

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【動画教材・eラーニング】考え方と行動パターンから考えるアサーティブ・コミュニケーション講座

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