OODAループをビジネスに活用する具体例~

OODAループをビジネスに活用する具体例
~"前例踏襲"が通用しない時代を勝ち抜く!

現代は外部環境の変化が非常に激しく、複雑で予測不能な「VUCA(ブーカ)」の時代であると言われます。昨今のコロナ禍では、これまでの経済のしくみや社会の価値観が一変してしまう可能性もあり、この予断を許さない状況は当面続いてくものと見込まれます。

激しい環境変化に対し、組織として臨機応変な行動を取るためには、管理職や経営層の判断力・決断力の向上が欠かせません。

そこで今回は、重要な判断や決断を迅速に行うための「意思決定プロセス」として知られる「OODA(ウーダ)ループ」を、ビジネスやマネジメントに活かすための方法をご紹介します。

OODAループをビジネスに取り入れると、組織の成長スピードが高速化します。
"前例踏襲"が通用しない新時代においても、「業績向上」という組織の目的を達成したいとお考えの皆さまにとって、参考になれば幸いです。

OODAループとは

OODAループとは、米軍の意思決定プロセスを理論化したものです。
米空軍のジョン・ボイド大佐が提唱した理論であり、米軍の組織構造、行動原則、戦略の基軸とされています。
OODAループをビジネスに活用することで、組織には以下のようなメリットが生まれます。

1.環境変化に対して柔軟な対応ができる

現場のトップが、上位者の決定を待つのではなく、たえず行動を微修正しながら 活動できるようになるので、突然の環境変化にも柔軟に対応できます。

2.施策のスピードアップが図れる

現場のトップに意思決定が委ねられているので、行動のスピードが早く、 すぐ成果につながります。

3.生産性が向上する

小集団単位でとにかく実行によって成果をあげることができるので、 組織全体で「指示待ち」の時間が大幅に削減されます。

OODAループの「4つのプロセス」

刻々と変わる状況に対して迅速かつ柔軟に対応するためのOODAループには、以下4つのプロセスがあります。

1.Observe(観察)

自分の身の回り、組織の外部・内部で現在起きていることを、「先入観なしに、ありのままに」受け止めます。

観察が弱ければ対処を誤り、致命的な失敗の原因となります。

2.Orient(方向付け)

「方向付け」を"瞬時に"行います。直感の「ひらめき」を優先しますが、「ひらめき」に深さがなければ、ただの思いつきでしかありません。

経験、教育、情報に裏付けられた現実的な解決策が「ひらめき」です。

3.Decide(決断)

判断のための時間が十分に確保できること、情報が十分に集まることは稀です。

「方向付け」に問題がないか、実現可能性やリスクと成果のバランスといった観点から判断し、ためらわずに決断します。

4.Act(行動)

「決断」のプロセスで決めたことは、即行動に移します。行動が遅れれば遅れるほど、「観察」のプロセスの情報が古くなり、「方向付け」の進路に誤りが生じてしまいます。

「行動」によって再び「状況変化」が起こったら、「観察」に戻って一連のOODAループを回します。

OODAループの図

OODAループの具体例1:製品の需要と製造状況(メーカーの製造部門)

Observe(観察)

・製品Aの受注ペースが前年同月比で10%上昇している

・製品Aを組み立てる自社工場の月間製作ペースが前月比で5%落ちている

・製品Aの部品調達が遅れている。調達ルートが1社しかない。

Orient(方向付け)

・このままでは需要が供給を上回り、欠品が生じる可能性がある

・自社工場でしか制作していないのはリスクが高いのではないか

・部品の調達ルートが他にあるかもしれない

Decide(決断)

・月間製作ペースを元に戻すため、外部の工場に製品Aを発注しよう

Act(行動)

・外部の工場から見積もりを取り、収支を計算した上で実際に発注する

状況変化

・製品Aの月間製作ペースが前年同月比と同じペースまで戻った

・外部の工場で制作した製品Aの返品率は、元の工場より5%多かった

⇒これらを踏まえて、再び「Observe(観察)」

OODAループの具体例2:メールによる広報活動(マーケティング部門)

Observe(観察)

・メールを開いてくれる人の割合が先月より5%ダウンしている

・今月は先月好評だった〇〇を別切り口で特集したメールを配信した

・同業他社のメルマガでは、今も〇〇の内容がよく取り上げられている

・最近は、今までになかった△△についてのお問合せがときに見受けられる

Orient(方向付け)

・読んでみたいと瞬時に思ってもらえず開封されなかったのではないか

・〇〇は情報が増え、徐々に世の中に飽きられてきているのかもしれない

・△△という新しいトレンドが生まれ始めている可能性がある

Decide(決断)

・メールのタイトルを少し盛って、キャッチーにしてみよう

・次のメールでは内容をガラッと変え、△△を特集して配信しよう

Act(行動)

・実際にメールを配信する

状況変化

・メールを開いてくれる人の割合が20%アップした

・△△についてのお問合せが急増した

・メールの配信停止依頼が10件あった

⇒これらを踏まえて、再び「Observe(観察)」

事業活動におけるOODAループの一連の流れを、打ち勝ちたい相手よりも少しでも速く回すことで、優勢な立場で物事を進められるようになるのが、OODAループの本質です。

例えば、B社が競合他社に先んじて新商品を発表したとします。
その結果、後手に回った競合他社は、B社の新商品を研究したうえで今後の戦略を立てなくてはなりません。B社はその間に、新商品のプロモーションやさらなる新商品の開発といった「次のフェーズ」に移ることができます。

このように、OODAループを「速く」回し続けることで勝ち続けられる組織こそが、業績向上を実現できるのです。

OODAループとPDCAサイクルの違いとは

OODAループとよく比較されるフレームワークとして浮かぶのが「PDCAサイクル」です。
PDCAサイクルとは、「Plan(計画)-Do(実行)-Check(チェック)-Action(改善)」の頭文字を取ったもので、"仕事を進める"ための手法として広く知られていますが、OODAループとは用途が異なります。

「PDCAサイクル」=「品質改善モデル」

PDCAサイクルは、業務の円滑な改善を実現するためのフレームワークです。
自組織を取り巻く環境は変わらないことを前提とし、達成すべき目標に向けて仕事を計画通りに進めるための「プロセス管理ツール」として使うと有効です。

【営業活動の例】目標「1カ月のテレアポ量を2倍にする」

Plan(計画)

毎週月曜をテレアポの日にする

Do(実行)

計画に沿ってテレアポを実施する

Check(チェック)

1カ月後に検証→テレアポ量が1.5倍にとどまった
(原因を掘り下げて考える)

Action(改善)

週にもう1日テレアポの日を増やす。架電リストを作成する

「OODAループ」=「意思決定モデル」

OODAループは、迅速な意思決定と行動を可能にするフレームワークです。
外的要因によって常に環境変化が起こることを前提としており、その変化に臨機応変に対応するための「思考ツール」として使うと有効です。

【営業活動の例】

Observe(観察)

ライバル社が新拠点を開設するという情報を手にした

Orient(方向付け)

人員を割き、従来の拠点周辺が手薄になるので、営業のチャンスでは?

Decide(決断)

従来の拠点周辺への営業強化を決断

Act(行動)

飛び込み訪問・テレアポ

「PDCAサイクルは、変化の早い時代に合わない。今はOODAループだ」というお話を耳にすることがあります。しかし、PDCAサイクルが今の時代にマッチしていないと感じるのは、PDCAサイクルを回す過程において、計画と実行にスピードがないからに他なりません。

そこで、各プロセスにおいて求められる判断や決断を、OODAループによって迅速に行えるようになれば、PDCAサイクルを回すスピードが飛躍的に上がり、組織の成長スピードも速まります。つまり、PDCAサイクルを強化するための「エンジン」としてOODAループを活用するのが、組織にとっての「最適解」と言えるかもしれません。

OODAループを組織で実現するためには

OODAループを組織において実際に回していくためには、各人の行動だけでなく、組織の体制・仕組みを適応させる必要があります。ポイントは、大きく以下の2点です。

1.「経験」「教育」「情報」の組織内での共有を徹底する

OODAループの実現には、経験の積み重ねによる「ひらめき」がカギとなります。
「ひらめき」の質を高めるには、前述のように、経験、教育、情報が重要です。
これらはメンバー各個人の努力に左右されるだけでなく、柔軟な組織の体制や、積極的な上司の取り組みが欠かせません。

【例】

・営業活動における成功・失敗事例などを伝え合う勉強会の開催

・自社メンバーであれば必須のスキルを定義して研修などの共通訓練を実施

・最新情報を常に全社で把握する仕組みをつくる(共有サーバー、ツール)

以上のような取り組みを組織が推進し、カルチャーとして定着させることで、全員の能力が高まり、一丸になって成果をあげることができるようになります。

2.鍛錬を重ねた人材に、大胆に権限を委譲する

組織が大きくなればなるほど、経営陣や管理職一人ひとりの「組織を動かす力」に、限界が訪れるものです。そこで、「権限委譲」が重要になります。
充分な経験を積んでトレーニングを重ねてきた部下に、現場における重要な判断・決断を任せることが、状況変化に柔軟に対応できる組織をつくる近道です。

権限委譲のポイント

(1)共通の判断軸の浸透~部下に「基準」を伝える

最も重要なのは、組織における判断の拠り所(原理原則)です。
部下は、ここが曖昧なままでは、満足に権限を行使して仕事を行うことができません。
充分な成果をあげられないままに、易きに流れ、事故、トラブルを発生させることさえあります。

経営理念や組織方針、すなわち組織の判断軸を、ミーティングや指導を通じて、管理職が部下にブレイクダウンして"日々"伝えることが大切です。
共通の「基準」が徐々に育まれ、管理職と部下の判断に、ズレが減っていきます。

(2)チャレンジさせることが重要~部下の成長を見逃すな

実力が備わっているにも関わらず、権限委譲に対し「自信がない」と、しり込みする部下もいます。そんな場合、見守りながらも「やってみよう」とチャレンジさせることが重要です。ミスを許容するカルチャーを形成し、部下に対して「過保護な上司」よりも「チャレンジさせる上司」を目指しましょう。

ただし、任せた以上いちいち口を挟むのは良くないと考えて、大切なフィードバックを控えてしまうのは問題です。様々な判断をさせながら、間違いがあればその都度指摘・指導を行い、権限移譲した後もさらに鍛えていくことが欠かせません。

最後に

米軍の海兵隊では、業務、職種に関わらず、全メンバー共通の徹底的な基本訓練がなされています。 厳しい訓練によって「型」を体得し、得られた経験の共有を通じて隊員の行動原理が統一されているからこそ、戦場の混乱のなかでも迅速な判断や決断が可能になるのでしょう。

自社の仕事における「基本」「型」は何でしょうか?
いま一度組織の経営理念に立ち返りながら基本動作を見直してみるのも、激しい環境変化の中を生き抜くには大切なことかもしれません。
世界経済が不透明で先の見えない今の時代だからこそ、極限状態を生き残るための 意思決定モデルであるOODAループを取り入れ、強い組織づくりに活かしていきましょう!

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