キーワードで知る!コンサルの「眼」

 

キーワードで知る!コンサルの「眼」

社員のやる気を上げるには ―経営学説から学ぶモチベーション向上要因―

社員のやる気を上げるには ―経営学説から学ぶモチベーション向上要因―

◇上林 憲雄氏(Norio Kambayashi)◇
英国ウォーリック大学経営大学院ドクタープログラム修了後、 2005年神戸大学大学院経営学研究科教授、経営学博士。専攻は人的資源管理、経営組織。
■経営学が発見した"確かな"命題
以前このコーナーでも取り上げたテイラー(F. W. Taylor)以来,経営学が誕生して100有余年になります。経営学には学術的観点からは未熟でまゆつばものの理論が多いのが実情で,大半の命題は,今後さらに追試や再検討が必要なものばかりです。100有余年の歴史といっても,経済学や法律学などの他の学問領域に比べて遙かにその歴史が浅いということも,あやふやな理論が多い背後の事情です。
ただ,その中で殆ど唯一といってもよい"確かな"命題があります。それは,「社員のやる気を上げるには,仕事の内容を面白くしてやらないといけない」という命題です。
■賃金よりも仕事の中身こそが鍵
「仕事内容のおもしろさ」でやる気を出させるということの裏に秘められた意味は,賃金を上げたり,職場の雰囲気をよくしたりするだけでは,働く人々のやる気は決して上がらないということです。
もちろん,これらの賃金や雰囲気といった要因も悪いとダメなのですが,それらの要因は通常レベルであっても問題はなく,個々人が日々こなしている仕事(職務)の設計,職務の中身の在り方こそが,人々のやる気の向上にとっては最重要な鍵となることを,この点は示唆しています。
■少し難しい仕事がモチベーションを上げる
では,職務はどのように設計すればよいのでしょうか。経営学の解答は,「職務をこなす各位の能力より,少し難しいレベルの仕事を社員に与える時,やる気は上がる」ということになっています。
やや抽象的ではありますが,ここで込められている意味は,各自の保有している能力を十全に発揮でき,できればその持てる能力を少し超え,更なる能力開発ができるような難度の職務に就かせる時,社員は「考えること」を通じてやりがいや満足を感じ,自己実現が達成されて「やる気」が上がる,というメカニズムです。
■マネジャーの心の余裕
こうした「少し難しい目の職務」を社員に与えることのできる前提は,1つにはマネジャーに,働く社員への信頼があることが必要です。社員への信頼がないと,コスト増を恐れるあまり,誰がやってもできそうな簡単な仕事しか与えないことになりかねません。
そしてもう1つの前提は,日々の短期的な仕事の出来映えではなく,長期視点に立って評価してやることです。言い換えると,社員を育成しようとする視点が重要ということになるかも知れません。人の育成は即席にできるものではなく,大いに時間がかかるものだからです。
この2つの前提はいずれも,マネジャーの心の余裕が必要であるということを示しています。ただ,もう1つ,見落とされがちではあるが重要なポイントがあります。
■社員も自ら努力が必要
それは,職務に就く社員自身による創意工夫も必要ということです。満足感や自己実現は,所詮は主観的な要因であり,要は働く人々の心の持ちようが最終的な鍵となります。マネジャーがいかに「少し難しい目」の職務を設計し社員に付与していても,それをどう受け取るかは,詰まるところ社員自身の心に帰着する問題なのです。
このことを裏返していうと,どのような職務を与えられていようと,それに社員オリジナルな創意工夫を加え,努力しようとする姿勢があれば,やりがい感や満足感は自ずと向上するということを意味しています。
■社員の視野を拡げさせる
このように,社員のモチベーションを向上させようとする際に,社員自身も努力することが必要であるというのは経営学でも見落とされがちですが,非常に重要なポイントです。以前このコーナーでも触れたように,一面的な「ものの見方」しかできない社員の眼を見開かせ,より広い視点から考察できるようにしてやることが重要になってきます。
社員をやる気にさせるためのエッセンスは,働く社員とマネジャーの双方で「仕事の在り方」を考え直す機会を持ち,改善へ向けた努力を重ねることであるといえるでしょう。
☆次回もお楽しみに!
           
           
前回のバックナンバーはこちら

無料PDF資料 人材育成、成功のコツ

  • 研修担当者の虎の巻

    はじめて研修担当となる方向け
    「研修の手引き」

    「そもそも研修ってどういうもの」「担当になったら何からやるの」など、研修ご担当者になったらまずは読んでいただきたい内容をまとめてご紹介しています。

    今すぐダウンロード

インソースからのお知らせ
(障がい者福祉のオンラインショップ)

mon champ

インソースでは、障がいのある方々が製造するお菓子やドリンクを取り扱うECサイト「mon champ」を運営しています。そして、ここで得られた売上を、製造元の福祉団体・パートナーへ還元しています。

商品は、皆さまが日頃よりお世話になっている大切な方へ、是非、真心を込めてお贈りいただきたいおいしいものばかりです。この気持ちを、製造者さまからインソース、インソースから皆さま、そして皆さまから大切な方々へと、つないでいただければ幸いです。



各種コラム

人材育成関連

  • 人材育成ノウハウ ins-pedia
  • 人事・労務に関する重要語辞典 人事・労務キーワード集
  • 人気のメルマガをWEBでもお届け Insouce Letter
  • インソースアーカイブス
  • 全力Q&A インソースの事業・サービスについてとことん丁寧にご説明します
  • インソース 時代に挑む
  • 全力ケーススタディ 研修テーマ別の各業界・職種向けケース一覧
  • 新入社員研修を成功させる10のポイント
  • 研修受講体験記 研修見聞録
  • 人事担当者30のお悩み

仕事のスキルアップ

  • 上司が唸る書き方シリーズ ビジネス文書作成のポイントと文例集
  • はたらコラム はたらく人への面白記事まとめました
  • クレーム対応の勘所
  • 人事のお役立ちニュース

銀子シリーズ

  • 七十代社員の人生録 銀子の一筆
  • シルバー就業日記 銀子とマチ子
  • 人気研修で川柳 銀子の一句

開催中の無料セミナー

  • WEBins
  • モンシャン