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モチベーションのマネジメント(2) ―マグレガー理論のありがちな誤解―

モチベーションのマネジメント(2) ―マグレガー理論のありがちな誤解―

◇上林 憲雄氏(Norio Kambayashi)◇
英国ウォーリック大学経営大学院ドクタープログラム修了後、 2005年神戸大学大学院経営学研究科教授、経営学博士。専攻は人的資源管理、経営組織。
■アメとムチのマネジメント
前回はマグレガーのX/Y理論の概要について述べました。今回はその続編で,このマグレガー理論に対する,ありがちな誤解について述べようと思います。X理論に基づく,"人間性悪説"的なマネジメントでは,従業員に対し強制,賃金,罰則などの「アメとムチ」を適宜与えながら外から統制するのが適切なマネジメントとなるはずです。性悪説に基づく従業員管理手法では,通常人間は仕事嫌いであると仮定しますので,業績を上げるためには従業員を管理・命令し,強制して信賞必罰で臨む必要があると考えられるのです。
■信頼して任せるマネジメント
逆に,"人間性善説"のY理論の前提に立てば,従業員各自が個々に成長し,自分を人間として伸ばしていきたいという自己実現欲求を充足させることを通じ,組織目標の達成を志向していくという手法が適切ということになるでしょう。
Y理論では,大概の人間は仕事嫌いではなく,自主的に目標を設定し,創意工夫を主体的に編み出しながらその目標を達成しようとすると捉えられますから,当然に,マネジャーは従業員一人ひとりを信頼し,基本的に「任せる」マネジメントとなるはずです。したがって,従業員を厳しく管理することなく各人の主体性に任せる経営管理手法となるのがY理論です。
ここまでは,マグレガー自身が書物の中で説明しているそのままです。誤解が生まれやすいのは,この後にマグレガーが書いている点についての解釈についてです。
■X理論は古いか?
マグレガーによると,X理論は古い時代の管理論(「経済人モデル」)の人間仮説であり,今後の企業はX理論よりもY理論に立脚したマネジメントに変えていかなければいけないと述べられています。・・・しかし,本当にそういえるのでしょうか。
このマグレガーの書物の文脈で重要なポイントは,人がなぜ働くのかに関して全く異なる2つの考え方が,たとえ現代企業であっても存在しうる,ということです。実際,マグレガーがこの理論をまとめた契機は,管理職の人々と話し込んでいて,人が働く理由に関連して2つの相互に対立する考え方が存在していることを発見したからだといわれています。どこの企業でも,マネジャーは部下を管理しようとする際,それぞれ自分なりの何らかの人間モデルを頭に抱いていて,それらは大別すると2種類あるということをマグレガーは発見したのです。
■X理論の有効性
そして,さらに重要なポイントは,何も「X理論=悪い考え方」ではないということです。当たり前のことですが,一見まじめに働きそうな従業員であっても,大した仕事をせずサボってしまうことがあります。こうした従業員に対してY理論的マネジメントだけで済むかといえば決してそうではありません。X理論も真実の一面を捉え,いいところはあるのです。
■業種や仕事に応じてX理論/Y理論を使い分ける
現代企業では,各社のホームページや会社紹介,人事採用関連のサイトには,表だって書かれているのは,人に一見やさしく映るY理論の考え方であることが多いようです。
しかし,業種によっては,例えば従業員の主体性を認め過ぎると人命も脅かすような危険を伴うような仕事も存在しています。ごく一例を挙げると,原発を運営する電力会社,交通を担う電鉄や飛行機の会社などです。
こうした業種では,Y理論をそのまま許容するのも問題です。こうした業種でどのような人材育成が指向されているか,具体的に調べてみるとおもしろいかも知れません。
■日本企業はX理論/Y理論の"いいところ"どり
このマグレガーのX理論・Y理論という考え方をベースに敷きながら,この2つにはあてはまらないマネジメント手法として,「Z理論」という考え方を提唱した人もいます。ハワイ生まれの日系3世でUCLA教授を務めたW. オオウチ(William Ouchi)という研究者が発表したもので,日本企業の経営はX理論とY理論の両方の優れたところを集めたものではないかという仮説を立て,検証したのです。
あまり指摘されませんが,このオオウチの研究は,日本的経営についての研究系譜や,1980年代以降にアメリカで展開された人的資源管理論の先駆けとなった重要な研究です。
           
           
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