ビジネスにおける「円滑なコミュニケーション」とは、"お客さま"がそれを快く感じることができるコミュニケーションのことです。自分を基準に考えてはいけません。
つまり、コミュニケーションの良し悪しは、
「自分がどのくらい上手く会話できたか?」ではなく、
「お客さまがどのくらい快く感じたか?」「話しやすかったか?」「聴いてもらえた実感があるか?」にかかっています。
親しく話をしたい人、あまり多くを話すことが苦手な人など、お客さまには様々な方がいらっしゃいます。
十人十色の「期待」があるということを認識したうえで、相手は一体何を求めているのかを考えます。まずは、相手からのメッセージに耳を傾け、素直に受け取りましょう。
それから、自分のメッセージをどのように伝えるかを考えることが大切です。話のスピードや、声の大きさ、あいづちやクッション言葉を交えた間の取り方、質問の仕方などによっても、相手に伝わる印象はかなり違います。
■適切なあいづち
「あいづち」は、お客さまとの信頼関係を結ぶために、相手の話を「しっかり聞いています!」という気持ちや態度を相手に伝えるための言葉です。
その際に大切なのは、(1)適切なタイミング、(2)適切なニュアンスです。
(1)適切なタイミング
お客さまが特に伝えたいと思っていることを察して、その話が出たら、そこでしっかりとあいづちを返しましょう。
あいづちのタイミングが早く、お客さまの会話と重ならないように注意してください。
(2)適切なニュアンス
「はい」というあいづち一つでも様々なニュアンスがあります。
たとえば、力強く言えば「了承」、余韻を残すような感じで言えば「共感」、深く頷きながら重く言えば「恐縮」など、強弱や抑揚をつけ、表現を工夫することにより、さまざまな意味が追加されます。
また、あいづちは「以心伝心」です(心をもって、心を伝える)。
相手の心情を気遣って、短い言葉の中に、まごころを込めることが大切です。
■良いあいづち・悪いあいづち
「はい」「さようでございます」や、「はい、かしこまりました」
「はい、私がうけたまわります」など、「はい+・・・」という2語にして、バリエーションをつけて相手の言葉を受け止めたり、クッション言葉をあいづちのように使用したりするのが、良いあいづちです。
一方、「はい」「そうですね」のみでバリエーションが少なかったり、「ええ」「えええ」や、「あっはい」(「あっ+~」という形)
「は~い」「そうですね~」(語尾伸び)などといった不適切なものや、タイミングが早く、お客さまの会話と重なるあいづちなどは改善する必要があります。
■あいづちの巧拙の違い
また、先ほども述べたように、あいづちを打つ際には、「表情豊かにタイミング良くあいづちが打てているか」ということや、「適切に複数のあいづちを使い分けているか」ということが問われます。
スキルの高いオペレータは、「感情を込めて」「表情豊かな」「バリエーションのある」あいづちを使いこなせますが、スキルの低いオペレータは、「あいづちが単調で」「会話の中でのタイミングが悪く」「あいづちに抑揚がない」などの問題点があります。
■良いあいづちを打つために
良いあいづちを打てない原因は、お客さまがどのようなことにお困りなのかまたは、どのようなことを期待・要望して電話をかけてこられたかというお客さまの電話の背景を読み取ろうとする意識が薄いからだと考えます。
お客さまの心情を理解できる「聴く力」や、お客さまとの間で適切な間がとれるような能力は、一朝一夕でつくようなものではなく、一定の経験が必要です。
しかし、経験の浅いオペレータでも、先ほど述べたようなお客さまの電話の背景を読み取る努力をしたり、お客さまの話をじっくり理解しようとする姿勢や意識を徹底することにより、良いあいづちが打てるようになり、お客さまとの会話のキャッチボールがスムーズになります。
■クッション言葉
次に、クッション言葉ですが、これは、その名の通り、こちらからの言葉を相手にとって受け止めやすくする"クッション"の役目を果たすことばです。
当たり前のことですが、応対中にお客さまに失礼があることは厳禁です。しかし、こちらがお客さまに失礼なことを言ったつもりがなくても、お客さまが不快になる場合があります。
このような場合、お客さまの心情や理解を無視して一方的な説明を行ったために、お客さまが気分を害されたというケースが少なくありません。
こうした事態を防ぐためには、お客さまに「共感」しながら、そのペースや理解に合わせて応対を進めることが必要です。
そこで、クッション言葉が、お客さまに対する「共感メッセージ」の役割を果たしてくれます。クッション言葉を使うことで、こちらからの依頼や質問がお客さまにとって受け入れやすいものになります。
投げかける側の「手間をかけて申し訳ない」という気持ち・ニュアンスや伝わるかどうかは別として、「差し支えなければ」提案させていただきたい、という姿勢が感じられるからです。
クッション言葉を応対の中で的確に入れることができるかどうかは、オペレータ自身が元々備えているコミュニケーション力による所が大きいのが現実です。
しかし、よく使用するクッション言葉に絞って、その使用を強く意識するだけで、誰でもかなりスキルアップし、応対の印象がよくなります。
以下にあげた5つのクッション言葉は、特にコールセンターでよく使う機会があるものです。最低限、これらを確実に使えるようにしましょう!
■「すぐに使える5つのクッション言葉」
(1)お客さまにご協力を仰ぐ場合、お手を煩わせる場合
~「お手数ですが」「お手数をおかけしますが」
(2)お客さまにお名前など個人的なことをうかがう場合
~「お差支えなければ」「もしよろしければ」「恐れ入りますが」
(3)お客さまに申し上げにくいことを言う場合
~「お客さま申し訳ございません。あいにく・・・」
(4)こちらから何か提案をする場合
~「もしよろしければ」
(5)お客さまの言葉が聞こえなかった場合
~「恐れ入りますが」
お客さまにご質問したり、何かをしていただく場合、必ず、その言葉の前に、クッション言葉をはさむように習慣づけましょう。