株式会社インソース
企画開発部次長 山本健太
――今回は、ビジネスゲームや体験型研修を開発した動機や意図についてお聞きしたいと思います。
最近、日本経済新聞にグループ型の体験型演習とか、ビジネスゲームを取り入れる会社が増えてきたという記事が載っていましたが(2007年10月29日・朝刊15面)、やはりそれは山本さん自身もそういう実感がありますか?
増えてきていると思います。実際、お客さまに研修提案のヒアリングをしていても、「実際に体験してみることで『気づき』を得ることができる方法はないですか?」とよく尋ねられます。
今はやはり、「自分でやってみて感じる」という有効性を人事担当者の方が追求されているのではないかと思います。
「研修担当者レベルアップ研修」では、社内のニーズを把握し、そのニーズをプログラム、カリキュラム、テキスト作りに落とし込む所までのご説明をいたします。
――講師が受講者に一方的に講義する、いわゆる「お勉強スタイル」によるノウハウ習得よりも、自主的に動いて「気づき」を得るほうが、世の中の流れ的にも受け入れられるのでしょうし、その方が、受講者に実感が残るのでしょうね。
記憶にも残りやすいです。その意味で、受講者に対するインパクトは大きいと思います。現場業務が忙しい中、いやいや集められて・・・と、研修を受講される方も少なくないと思います。
体験型演習の「何か面白そうだな」というゲーム性は、受講者のモチベーションが自然と高まることにもつながります。受講者の雰囲気も一気に和みます。
――ゲームを通じて、一つの目的に向かってメンバーと協力する、ということで連帯感も深まりますよね。新人研修の一発目にいいかも。 あと、民間企業以外でも、体験型研修についての関心は高まっていますか?
高いです。すでに自治体様からご発注いただいていますし、これからもニーズが高まると思います。
――次に体験型の研修の醍醐味というか、普通の研修にない効果が得られる点ということについてお聞きしたいのですが。
「体験型」という定義にもいろいろあると思います。 コミュニケーションスキルや、ビジネス文書スキルは、ロールプレイングや演習を繰り返すことでスキルアップを図りますが、これも広義の体験型研修です。自ら、考えながら体験しながら課題を発見し、克服していくからです。
この手法は弊社の全ての研修で実施しています。研修中に学んだ知識を活かしながら、どんどんステップアップしていくので、自分でも「うまくできるようになった」という実感が湧きます。ただ、ロールプレイングや演習を取り入れにくいテーマには、ゲーム性の高いビジネスゲームを組み込みます。ビジネスゲームは、そのような点にも対応できるところが特徴だと思います。
例えば「ルールを守りましょう」「リーダーシップを発揮して仕事をしましょう」と言葉で言うだけでは全く意味がないです。当たり前のことだから、伝わりにくいのです。ビジネスゲームを通じて、「ルール、リーダーシップの大切さ」について「気づき」を得た後だと、この言葉が響いてきます。
後で詳しくご説明しますが、例えば、「ドミノインテリア」というビジネスゲームでは、チームで協同作業するために、ルールをチームメンバーで共有し、それを全員で徹底していくことが重要な要素になります。「ルールの共有と徹底は大切です」と座学で強調してもそれほどインパクトはないですが、ゲームで実際にその重要性を体験することにより、その言葉が心に響きます。
――さて、それでは次に、山本さんが開発した「ドミノインテリア」の概要やねらいについて話を聞きたいのですが
「ドミノインテリア」は、インテリア製品の製造販売会社の「営業」と「製造」のメンバーとなり、お客さま(講師)から、積み上げるドミノの形や配色を指定された製品を制限時間内に数多くつくることを目指すビジネスゲームです。
「ドミノインテリア」は、「チームビルディング」を大きなねらいとしていますが、その他にも、「チームワーク」(メンバー同士でコミュニケーションを深め意思疎通を図れている)、「計画性」(効率的に作業するためのルールを作り、守っているか)、「リーダーシップ」(チームメンバーの合意のもとで意思決定しているか)、「タイムマネジメント」(制限時間内に作業を終えているか)、「目標設定」(目標達成に向けて、工夫や努力をしているか)などの研修要素が入っています。
――ゲームの中で何か変わったことが起こりますか?
ドミノを積み上げる方法がチームによって違いますね。最初に土台を一気に揃えていくチームと、ひとつひとつ完成させていくチームがあります。
最初、私がこの「ドミノインテリア」を作った際には、土台を一気に揃えてしまう方法を想定していなかったのですが、 実際に研修で、半分くらいのチームが土台を一気にバーッと作りはじめて、焦ってしまいました。
私の方では、制限時間内で積み上げられる個数は9個くらいだと予測していたのですが、10以上の土台を一気に作りはじめたチームがありました。
「これはやばい、簡単に目標を超えられてしまう」と思いましたが、結局は土台を作ったものの未完成のものが多く残ってしまい、目標の9個に達成せずという結果になりました。
失敗したチームは、2回目から作戦を改善して、やみくもに土台を揃えるのではなく、目標を何回かに分割して土台作りをしました。このように、一度失敗して、その改善策をチーム全体で考え、それをまたチーム全体で実行するということもこの研修の醍醐味です。
チームでは、ドミノを積み上げる前に、「いくつ作るか」の目標を決めて、その目標を達成できる作戦を立てます。ゲームは、3回繰り返しますが、受講者は課題を発見し、克服しながら、2回目・3回目と改善を積み重ねていきます。
また、ドミノを積み上げる際には、お客さま(講師)から、その形、配色について指示があるほか、 「1人で2段連続積み上げられない」というような制限があります。
つまり、ドミノを積み上げる作業は複数人で行わなければいけないわけですが、 そうすると、チーム内で作業を行うルールを設定する必要が出てきます。
ゲームが終了した後、振り返りの時に、チームで決めたルールの効果について、 例えば、「作業の段取りを高めるのに有効であったかどうか」「みんながルールを守れていたかどうか」などについて振り返ります。
良い結果をおさめるチームは、やはりきっちりと全員でルールの意思統一ができており、チーム内の全員がルールを守って作業をしています。さらに、検討を深められたチームは、例えば、「ドミノが途中でくずれた場合は、見放してそのままにしておく」など、リスクが起こったときのルールまで作ったりします。
チーム内での情報共有、ルールの策定、一つのタスクに共同して作業を行うなど、「ドミノインテリア」を通して、「チームビルディング」や「リーダーシップ」など、さまざまに「現場」で活きる気づきを得る場面がこのゲームの中にはたくさんあります。
――もう一つの「ドミノハウス」についてもご説明してもらえますか?
「ドミノハウス」は、ドミノを使って何を作るかはチームの自由ですが、作ったものを、できるだけ多くのお客さんに買ってもらえるような魅力あるものにする、というのが課せられたミッションです。
チームで「どんな家を作ったらいいか」を考えて、チームメンバーの意見を取りまとめながら設計・試作してみる。そして、完成したドミノハウスのデザインや形のこだわりなどをプレゼンして、より多くのお客さん(他のチーム)に買ってもらう(評価してもらう)という流れになっています。
単にドミノを積み上げて「できました」ではなく、「色使い一つ一つにどのような意味があるのか」、さらに「その商品にはどのようなストーリーがあるのか」という思いを組み入れていきます。
この研修のねらいは、「ドミノインテリア」と同様に、チームメンバーの合意形成を行う「チームワーク」、計画を形にするための「仕事の段取り」「目標管理」「リーダーシップ」、にあります。特にドミノハウスでは、「本当のお客さま志向」をテーマに、「お客さまのニーズをとらえているか」「お客さまの期待をこえる企画をたてられたか」という面もゲームの要素としています。
もともと製造業のお客さまで始まった研修でもあり、「製品に対するこだわり」がテーマにもなっているのです。いわゆる「職人」というか、製品対するこだわりは、仕事のプロフェッショナルとして重要なのだと思います。商品の個性やウリをどう考えるかという部分も、このゲームで重視している点です。