研修を語る

人格の陶冶シリーズを語る

2024/03/28更新

人格の陶冶シリーズを語る ~人としてのあり方や人間性が問われている時代に求められる研修とは?

テキスト作成部門として開発に携わった大畑と安西が、本研修が生まれた背景や特色についてたっぷりと語ります!

研修によって「人格」は身につけられる?

―まず、非常にユニークな研修名ですが、どのような意味が込められているのでしょうか。

大畑:

「人格の陶冶」とは、 実践を通して人間としての正しい生き方を磨き上げていくこと、という意味だそうです。また別の解説では、人間として正しい行動が取れるように自己研鑽すること、と表現されていました。

「優れた人格」とか「人格の形成」といった表現があるように、「人格」には望ましい姿があることは何となく理解できます。「人格」が意図的に高められるものであるとすれば、研修によって「人格」を身につけることもできるのではないか――そんなことを議論している中で、「人格の陶冶」という言葉に行き当たりました。

―なぜ「人格」を身につけるための研修を開発することになったのでしょうか。

大畑:

近年社内の営業担当から、「"人としてのあり方"や"人間性"といったものを教えることはできないか」というお客さまのお悩みをよく聞くようになったのがきっかけです。「ルールの話ではなく、一人ひとりのモラルや倫理感といったものが問われている」と。

安西:

私も、そういったお悩みの声を本当によく伺っていました。いわゆるコンプライアンス、ハラスメント防止の教育はもう社内で実施しているけど、それ以前の問題として最近モラルが低いとか、常識外れな行動を取る人が増えており、そういう人たちに対して一体どんな研修が当てはまるのか、打ち手がないと......

大畑:

そこで、新作研修開発のための議論を始めました。しかし、コンプライアンスやハラスメント防止のような「正解」がはっきりしているテーマと違い、倫理やモラルというものは、捉えどころがないというか、人によって正解がひとつとは限らない。そういったテーマを研修で教え込むのはなかなか難しいよね、で終わってしまったんです。

―それがなぜ開発にこぎつけられたのでしょう?

大畑:

ちょうど同じタイミングで、当社の役員から「"人柄"や"人間性"といった観点は研修にならないか」という相談を受けたんです。改めてチーム内で協議したところ、

「正解がない問題に対して研修をやるなら、受講者の皆さんがそれぞれに解を探っていただくしかない。ワークショップ形式のプログラムならそれができるかもしれない」

という結論に達し、具体的なプログラムの開発にこぎつけることができました。

―これまで多くのニーズが上がっていた研修が開発されたことで、現場からはどのような反響がありましたか。

安西:

お客さまに「『人格の陶冶』という研修がありますよ」とご紹介すると、「そうそう、こういうのが欲しかったんだよね!」とおっしゃって、実施いただくケースが増えています。お客さまのニーズにピタッとはまる研修ができて本当によかったです。

「自身を制御する」モラルや倫理観を改めて教える
必要性

―それにしても、今なぜこんなに「モラルを教える研修」のニーズが高まっているのでしょう?

大畑:

そもそも、従業員のモラルが問題になっている組織内では、すでにルール違反が起きているというケースが多いと思います。その場合、まずはコンプライアンス教育を再度徹底していただくことが必要です。しかし、ルール違反をする手前で、人格的な部分で自身を制御することができれば、ルールに抵触するところまでいかずに済むのではないでしょうか。

実証するデータはありませんが、ここ最近、この「自身を制御する力」が弱くなっているという人が増えている気がします。これまでなら「ルールじゃないけど、普通はここまでやらないよね?」と思われていた基準を超えて、ルールを破ってしまう人が増えている。
そこで、従業員がルール違反をしないようにするには、自身を制御するモラルや倫理観といったものを改めて教える必要があると考える方が増えてきたからだと思います。

講師は「正解」を教えない。議論を通じて自分なりの解を見出す研修

―それでは、本シリーズの研修プログラムの進め方を具体的に教えてください。

大畑:

通常の研修のように、正しい知識をインプットし、それらを咀嚼して正しい回答の仕方をワークで実践する、というスタイルではありません。講師が教える部分をできるだけなくし、受講者が「人格」に関するテーマで議論し合うワークショップの形で進めます。

テキストには、議論をするための"参考情報"として、いろんな考え方や先人の言葉などが紹介されています。しかし、これらの言葉を「正解」として、講師の方から「今後これらを徹底しましょう」と説明することはありません。

そうした情報を踏まえたうえで、講師は「では、皆さんの身近でこのような問題が起きたらどうされますか?」というケースを提示します。どのように対応するのが望ましいのか、グループで議論してもらうというシナリオ建てです。先人が遺した言葉や、議論のなかで出てきた様々な意見と照らし合わせながら、自分はどのような行動が正しいと思うのかを考える形で展開されるのが最大の特徴です。

安西:

「人格」というものは、知識として身につけたり、スキルとして定着させたり、という類いのものではありません。様々なケースを通して受講者同士ディスカッションしていくなかで、自分なりの「正解」を見出していくことが、「人格の陶冶」につながるのだと思います。

―講師が正解を教えないとなると、受講者にゆだねられる部分がかなり多いように感じます。これまで答えがうまくまとまらないといったことはなかったのですか?

大畑:

新入社員向けに実施する際、このような質問をされるご担当者さまがいらっしゃいました。

「自分で答えを見出してほしいが、受講者層が若いと議論が先に進まない、あるいは間違った方向で進んでしまうこともあるかもしれない。その場合、講師の方からある程度誘導してもらえるのか」

講師が議論を一方向に誘導するのはやり過ぎですが、ちょっと方向がずれてしまっていると感じた時は声をかけるとか、軌道修正は必要かなと思います。もっとも、これまでの事例では、明らかに間違った方向に進んでしまう受講者はいないようです。

基本的なコンプライアンスやルールについては十分理解している人でも、「ルール違反といっても法令に違反するほどのことではない、でも社会的には好ましくないよね」といったグレーなケースで迷うことはあり得ます。こうした自分一人で正解を見出すのが難しいケースについて、講師がうまくファシリテートしますので、この研修の場で大いに議論を深めていただきたいと思います。

「お客さまに対して正々堂々と胸を張って営業活動を行っていきたい」

―では、そのような「グレーなケース」を議論するにあたり、どのようなワークが用意されているのでしょうか。具体的に教えてください。

大畑:

そうですね、例えば人気のアミューズメントパークには、追加でお金を払えばアトラクションの待ち時間を短縮できるサービスがありますよね。このサービスをもし人気ラーメン店で始めたらどうなのかについて考えるワークがあります。

アミューズメントパークではビジネスとして成立しているサービスなのに、なぜラーメン店だとしっくりこないのか。ひとつの基準で決めることは難しいと思います。違和感を覚える理由を議論していく中で、ビジネスと社会倫理との折り合いをつけられる場所を、一人ひとり見つけていただくことがねらいです。

こちらのワークは、「ビジネスにおける『正しさ』を考えるワークショップ」の中に入っています。
社会的な「正しさ」と、営利目的で活動するビジネスパーソンとしての「正しさ」は、時に相反することがあります。このプログラムでは、「正しさ」の性質をさらに細かく「誠実」「正直」「利他」「公平」という4つの観点に分け、それぞれのケースで議論していただきます。

―人気のラーメン店にはいつも行列ができているので、お金を払ってでも並ばずに入りたいと思う人はいそうですね。でも、不公平だと感じる人も少なくないと思います。ラーメン店に対しても、そこまでして儲けたいの?なんて思ってしまうかも(笑)

大畑:

誠実であるのはビジネスパーソンにとって不利なのか、正直すぎるとバカを見るのか、利他的であることにメリットはあるのか、公平さなんてビジネスに何の利益ももたらさないのではないか......こうした問いかけに対して、言葉尻だけで議論するだけの「べき論」にならないよう、具体的なケースを通じて議論できるようになっています。

受講者の方からは、「正しさを意識し、お客さまに対して正々堂々と胸を張って営業活動を行っていきたい」「正直で誠実な姿勢で、公平や平等を意識し、行動することが重要であると再認識した」といった感想をいただいています。

「プチ不正」をやってしまう人とやらない人との差はどこから生まれる?

―自分の職場でも起こりそうな、より身近なケースを扱うプログラムはありますか?

大畑:

「職場における『モラル』を考えるワークショップ」があります。職場の先輩や同僚のちょっとグレーな行動について、「このモヤモヤ感はなぜ起きるんだろう」というところを議論しつつ、モラルや倫理観を明確にすることがゴールです。

具体的には、誰でも平等にやるべきコールセンター業務において、朝イチの面倒なコールを取らない人や、退勤直前にはコールを取らずにトイレに行ってしまう人など、「いつも一人だけラクしてるよね」と言われそうな人を例にあげています。

他にも、経費で買った正規チケットを転売して自分は格安チケットで出張に行く先輩、下請けのベテラン社員に偉そうに物を言う元請け側の若手社員、上司にいい評価をされようとウソの報告をする先輩など、実際に職場にいそうな人の例を扱います。

チケット転売のような「プチ不正」は、普通は良くないことだと思われている。良くないと思いながらやってしまう人とやらない人の差はどこから生まれるのか。そのようなことを議論していただきます。

―どれもリアルな例ばかりですね。こういうケースでは社内の人だと直接注意しにくいので、外部講師からの話としてもらえると助かる、というニーズがありそうです。

安西:

そうですね。そうした「プチ不正」をやっているのが上の階層の人だから困っている、というお話も伺います。そういう場合、通常のコンプライアンスやハラスメント教育に加え、モラルの話を外部研修の形でやってほしいというニーズはありますね。

―安西さんのおすすめプログラムもぜひご紹介ください!

安西:

「先人から学ぶ!徳のある人材になるためのワークショップ」です。
各章の冒頭で偉人たちのエピソードを取り上げ、それについての解説やワークが続くという構成のプログラムになっています。

先人が遺した言葉は、書籍などで誰でも読むことができます。例えば「利他の心が大事」という教えを、先人がどのような含蓄ある言葉で語っていたかを知るだけであれば、本を読むだけで十分です。研修の場では、その言葉を知ったうえで、なぜビジネスの場面で求められているのか、ワークで深掘りしていただきます。

ただ言葉を知るだけでなく、なぜ大事なんだろうということをしっかりディスカッションしていくなかで深掘りし、自分なりの答えを見出していけるのが、このプログラムの特徴です。

若い人にぜひ受けてほしい研修。人格とともに
磨かれるスキルとは?

―こちらの研修では、松下幸之助や稲盛和夫といった経営者の言葉がたくさん取り上げられています。若手~中堅が対象となっていますが、経営者から学ぶのは難しくはないのでしょうか?

安西:

名だたる経営者たちも、若い頃には多くの失敗を経験しています。そうした経験を通じて語られてきた言葉の数々は、今の若手の方にも響くのではないでしょうか。
経営者としての視点で展開するのではなく、努力することや失敗から立ち直ることの大切さなど、若い人たちに向けられた言葉が散りばめられた研修です。構えることなく受講いただければと思います。

―組織の未来を担う若手の方たちにぜひ受講していただきたいですね。単にモラルの問題だけでなく、この研修の受講をきっかけに伸びるビジネススキルもありそうです。

大畑:

そうですね。正解がない問題に対して議論し、自分なりの解を導き出す力は、モラルの話に限らず様々な問題解決の場面で求められます。研修の場で議論をすることで、こうした問題解決力の向上が見込めると思います。

立場が上がるにつれ、あらかじめ決められた正解のない仕事や、この通りにやれば正解にたどり着けるというルートも提示されない仕事を任される場面が増えていきます。最終的にどうするのか自分が責任を負って決断しなければならない時、何に価値基準を置いて決めるのか。自分なりの解を導き出す力を鍛えることで、そうした場面における判断力も強化できると思います。

―なるほど。問題解決力や決断力を強化できると、リーダーシップや自律性も身につきそうですね。

一見変わった研修に見えても、実はマルチに使える
プログラムです!

―それでは最後にお二人からまとめをお願いします!

大畑:

一般的に会社から受講を勧められるのは「実利的な研修」だと思います。ところがこの「人格の陶冶」は、受講後すぐに明日からの実務に何かが反映されるという研修ではありません。そういう意味で、通常とは少し毛色の違う研修と言えます。

例えばコンプライアンス研修なら、正しい知識を身につけたから明日からはルール違反をする恐れがなくなる、正しいオペレーションができる、といった効果が具体的に見えますよね。しかし、モラルや倫理というものを学んだからといって、その後の行動がいつも"正しく"できるとは限らない。それでも「正しさ」について考える機会を持つことで、今まで何気なく行っていたことも「本当にそれでいいのかな」と、一度立ち止まって考えられるようになる。即効性はないかもしれませんが、そうした行動変容につながる研修です。

安西:

新人研修や階層別研修の一環として、あるいはコンプライアンス、ハラスメント防止研修など、色々なテーマと組合せて実施いただける研修です。最近では、CS向上の一環で実施した事例もあります。

従業員の一人が顧客に対して非常識な行動を取ってしまったという組織で、改めて一人ひとりのモラルを高めたいという課題をお持ちでした。これまでCSとの組合せはあまりなかったのですが、最近立て続けにお問合せをいただいています。

このように、一見変わった研修に見えても、実はマルチに使えるプログラムです。「打ち手がなくて困っている」という課題がありましたら、ぜひご相談ください!

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