クレーム対応

「急いで交換して!」......優先すべきは本当にスピード?クレーム対応テクニック「判断力」(前編)

目次

「急いで交換して!」......優先すべきは本当にスピード?

クレーム対応では、「どのようにお客さまのお申し出に対応するか」について、その場その場で的確な「判断」を下さなければなりません。たとえば、こんなクレームの場面を考えてみましょう。

▼【例1】アパレル販売店にて
「昨日ここで買ったブラウスなんですけど、家でよく見てみたら、袖口にシミがあって......。
返品するか、別の商品と交換したいのですが?」

⇒通常商品ならば、ご要望どおり返品の手続きを承る
⇒セール品・アウトレット商品ならば、返品・交換不可の前提で販売しているので、丁重にお断りをする

【例1】のように、明確に対応方法が決められている中での判断は、さほど難しいものではありません。

▼【例2】アパレル販売店にて
「先週このワンピースの色違いの取り寄せを頼んだのですが、サイズが違うじゃないですか! 週末の予定に間に合わないんですけど!?」

【例2】のように、担当者の伝達ミスなど明確な当方の過失、大事な予定に衣装が間に合わない、といった場合、応対者の判断はかなり難しくなります。ケースバイケースで具体的な解決策を提示していくときには、複雑な「判断」を下さなければなりません。マニュアル化された対応ではなく、年数・場数を踏むことで求められるスキルが必要です。単純な「問題解決」以上の対応を求められるハードクレームの場合、役に立つのが「判断軸」です。

そもそも、「判断軸」とは何か

イレギュラーな条件下での「判断」は、さまざまなパターンを想定してマニュアル化することは現実的ではありません。そんな時に役に立つのが「判断軸」です。「判断軸」とは、複数の対応策・選択肢があるときに、それぞれのアイデアの(状況に応じての)適切さや優先順位を評価(判断)するための「ものさし」のことです。

通常、「判断軸」は1つとは限りません。よって、クレーム対応の現場では、複数の判断軸から多面的に判断を下す必要があります。
しかし、その複数の「判断軸」は、時に「トレードオフ」の関係(一方を優先させると、他方が犠牲になる)となることもあります。「判断軸」を縦軸として、どこまでのトレードオフを許すかの横軸も必要となってきます。
代表的な判断軸には下記の3点があります。

(1) お客さまの「満足度」にもとづく判断軸
(2) 「コストとリスク」にもとづく判断軸
(3) 「客観性の高い基準」にもとづく判断軸

(1)お客さまの「納得度」にもとづく判断軸

クレーム対応は、こちらが提供するモノやサービス、あるいは対応に不満があった際に発生します。どんな対応であっても、お客さまの「満足度」なくしてクレーム対応はあり得ません。その上で、「そのクレームに対し、どのレベルでの不満の改善を目指すのか?」という視点で対応策を考えます。

▼【例】どのレベルでの改善をめざして対応するか

段階1:とりあえず不満が収まるレベル
段階2:また利用してもよいと思ってもらえるレベル
段階3:転じてファンになってもらえるレベル

民間企業の場合は、「得意客であるほど、満足度の高いレベルで対応する」という判断には一定の合理性があります。一方、行政機関等では、公平性の観点から「お客さまによって対応を変えること」は適切ではなく、さらなるトラブルにつながる可能性もあると言えます。

(2)「コストとリスク」にもとづく判断軸

クレーム対応する側としては、「クレームを解決するためなら、何でもできる」というわけではありません。クレームに対する解決策の多くは、何らかのコストが伴います。また、場合によってはリスクが発生することもあります。
このように、「自組織としてどこまでの負担を許容するのか」を想定して判断を下すことも重要です。

▼【例】どのレベルのコスト・リスクを想定して対応するか

段階1:商品交換に応じる
段階2:返品・返金に応じる
段階3:慰謝料を払う

そうはいっても、自組織のコストとリスクのみを意識して提示する代替案や解決策は、お客さまから見ると「誠意のない対応」と映ります。いつでも優先させるべき「お客さまの納得度」という判断軸と、併せて使うことが求められます。

(3)「客観性の高い基準」にもとづく判断軸

法律や一般常識といった客観性の高い"ものさし"を基準にすることで、双方の間に生じる認識のズレを無くすことができます。ただし、客観性の高い基準にもレベルがあり、どのレベルで対応するかの「判断」が必要となります。

▼【例】どの基準をクリアするレベルで対応するか

段階1 法律・条例をギリギリクリアしたレベル
段階2 世間一般の常識をクリアしたレベル
段階3 業界で一番高い水準をクリアしたレベル

法令を前面に押し出して判断を下すことは、相手も受け入れざるを得ないだけに、感情的にしこりが残りやすいというデメリットがあります。

上記の3つの基準にもとづく判断軸と、その軸のどのレベルまでの改善を目指すかをすり合わせて最終的な判断を下します。

判断力は身につけられる!

では、どのように「判断力」を身につけたらよいのでしょうか?

判断力は一定の経験を経て身に付くものです。ただ、単に経験を重ねるだけでなく、指針とする具体的な「判断軸」を意識的に自分の中に持つことで、より早く判断力を身に付けることが出来るようになります。重要なのは、ケースバイケースで考えて最適解を導き出せるように、「判断」を下すための「考え方の軸」を身につける、ということです。

次回【クレーム対応テクニック「判断力」(後編)】では、判断力がぶれないコツについてお話しします。お楽しみに!

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