管理職

IT導入で変化する"係長"の仕事

かつて旧態の「日本的経営」の時代は、新入社員の目標はまず「係長」になることでした。
IT時代の到来とともに、組織内は様変わりし、「係長」の役割が大きく揺らいでいます。「雑務」や「調整業務」に追われているという問題点も見えてきました。いま係長には何が必要かを突き詰めると、中間管理職の基本的能力(概念化能力、実務遂行能力、対人関係能力)の育成が急務であるという結論になります。IT導入で変化した新たな職場環境に適応するために、3つのスキルアップが必要です。

目次

IT導入によって種々雑多な仕事が飛躍的に増加

「ITの発達が日本企業の中間管理職、とりわけ係長の職務をどのように変化させるか」という予測が、十数年前に話題になったことがあります。想定されたのは、次の2点の変化予測です。

(1)係長はより多くの職務に従事するようになる
(2)管理的業務よりも高度な(戦略的な)業務に携わるようになる

しかし、現実は確かに係長がより多くの職務に従事するようになったのですが、種々雑多な仕事が飛躍的に増加しただけで、管理的業務よりも高度な(戦略的な)業務に携わるようになったという変化は、あまり見られません。すなわち「以前の2倍近い仕事量になった」と話すような係長がいる一方で、いわゆる「雑務」や他部署との「調整業務」が大半を占めているという実感を語る係長が増えたのです。

「雑務」や「調整業務」に追われ、(2)に予測された新しい期待に応えていない事実が、係長という中間管理職の新たな問題点として浮かび上がってきたのです。

高度な(戦略的な)業務に携わるためには?

高度な(戦略的な)業務に携わるには、戦略的思考のできる係長に成長する必要があります。「戦略的思考法」の基本は、係長が自分でこなさなければならない「仕事のリストアップ」です。リストアップすれば、係長自身が置かれた状況や仕事の全体像を大きく俯瞰してみることができます。

そのリストに、取り組みの「優先順位」をつけるのが次のステップです。何がより本質的で、また何がその本質から派生した事項であるかを考え、分類したり情報を加えたりすることが必要です。あとは、優先順位に従ってこなしていくだけです。

ただ忘れてならない教訓があります。1つ1つこなしていく際に留意すべき点は、「何でもかんでも全力投球というのはダメ」ということです。係長自身の持つ「資源配分」を戦略的に選択する姿勢が大事なのです。つまり、どこで力を抜きどこで集中するかが重要なので、仕事によっては、たとえ中途半端であっても、あるいは宙ぶらりんの状態のまま放置しておいてもいい場合があるのです。

係長が「雑務」を上手にこなすために必要スキルは?

より多くの職務に従事するようになったIT時代の係長には、周囲の組織や事業を広い視野で見ることによって総合的に把握し、その本質を見抜く「戦略的思考法」が必要です。この戦略的思考を使う能力のことを、「コンセプチュアルスキル」(概念化能力)と言います。

また、係長は、実務のプロフェッショナルとして、組織の一員として、後輩の育成を担い、より効率的な業務の進め方を摸索し指導することが期待されています。この能力のことを「テクニカルスキル」(実務遂行能力)と言います。

係長は、この概念化能力と実務遂行能力を磨く努力を日々重ねなければいけません。組織には、係長がスキルアップできるように、この種のスキルアップ研修を用意し、係長の成長のためのロードマップを示すことが求められます。

係長が「調整業務」を上手にこなすために必要なスキルは?

他部署との「調整業務」で要求される能力は、まず「相手の話をしっかり聞き、相手の言葉の裏に隠された本質や本音をつかむ」というヒアリング力とコミュニケーション力です。「相手の要望にどう対応するか、トラブルにはどう対処するか」という交渉力も必要です。そして、係長が「相手に自分の意見を上手に説明する」というプレゼンテーション力が、係のリーダーとして必要です。もちろん、リーダーシップや意欲、動機、向上心などメンタルな強さもなくてはいけません。

このような人間の総合的な能力を、「ヒューマンスキル」(対人関係能力)と言います。対人関係能力は、ビジネスパーソンであれば誰もが身につけておくべき根本的なスキルです。組織を率いていくような立場の人は、対人関係能力を習得するだけではなく、より磨いてさらに高みへと行けるよう努力を続けていくことが要求されます。

組織は、あらゆるビジネスシーンで"係長"のような中間管理職がこの対人関係能力を発揮していけるよう、係長その機会を与え、組織内を整備することが求められています。

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