管理職

人的資本経営への取組み~PTの設置と活用

目次

今なぜ「人的資本経営」が脚光を浴びているのか

「企業は人なり」、「人材こそ最大の財産」―企業経営を語るとき、決まって引用される常套句(じょうとうく)です。確かに企業経営は、役員や社員の一人ひとりの活躍の上に成り立ちます。これは、古今東西、紛れもない事実です。

人材を育て、人材を競争力の源泉として企業価値の向上を図る。これが「人的資本経営」であり、その根底には「人材に積極的に投資し、人的資本価値を高めること」があります。

企業経営にとって当然と言えば当然のことですが、今なぜ、「人的資本経営」が脚光を浴びるのでしょうか。

その答えは、企業社会が、時代の転換期を迎えているからです。企業社会が、これまでとは違う不連続で前例のない課題に直面しているからです。
SDGsの達成、ESGの推進、DXやGX(※)への重点取組、失われた30年といわれる経済からの復活など、これらの課題解決には、人的資本価値の飛躍的な向上を通した新たな経営が求められているのです。
※GX(グリーントランスフォーメーション):温室効果ガスを発生させないグリーンエネルギーに転換することで、産業構造や社会経済を変革し、成長につなげること。

それでは、「人的資本経営」をどのように進めれば良いのでしょうか。その基礎となる人的資本価値をどのように高めれば良いのでしょうか。基本形は以下のとおりです。

人的資本価値を高める方法

第1に、会社が近未来に対して目指すべき姿を具体化することです。中期計画を策定することで結構です。

第2に、この姿を実現するために必要となる人材像の定義です。この姿を実現するために必要となる重要成功要因(KFS(※))を先ず明らかにし、このKFSに基づいて、人材面では、どのようなスペックを満たす人材が必要になるかを明らかにします。
※KFS(Key Factor for Success):ビジネスを成功させるためにキーとなる要因。

第3に、この人材と現状人材との間にあるギャップを測り、このギャップを埋めるための人材育成・人材採用計画を立案し実施します。

以上のもとに「人的資本経営」が展開されます。

この方法の重要ポイントは、「目指すべき姿(中期計画)」を適切に描けるかどうかにあります。この第1要件を満たすことが出来れば、第2、第3要件へと検討を進められます。

会社にとって近未来の課題解決が過去、現在の延長線上にあるときには、第1要件を満たすことは容易です。過去と現在についての既存データを活用することが出来るからです。

ところが、今、企業社会が直面している課題は「不連続」で前例のないものです。課題が茫洋としていて、一体、何を、いつまでに、どのように実現するのかが見えて来ません。参考にすべきデータが誰の手許にも無いからです。

このようなとき、上記の第1要件を満たすためにどのように対処すれば良いのでしょうか。

便法はありません。泥臭い方法しかありません。「マドリングスルー(※)」です。「泥道をもがき苦しみながら、個々のデータを蓄積しながら前に進んで行く」方法です。ただし、「もがく」と言っても無手勝流(むてかつりゅう)では行けません。正しい効果的な「もがき方」が求められます。その一つとして、PTの設置と活用を紹介します。
※マドリングスルー:組織の明確な目標が定まらないことを前提とし、その場で直面した問題を一つずつ解決していく漸進的なプロセスのこと。その場しのぎで切り抜けるという意味。

マドリングスルー~PTの設置と活用

多少、大上段に構えますが、第1に実施することは、業務改革の断行です。例えば、既存業務を8割の人員で回せるようにして、2割の人員を「マドリングスルー」のために捻出します。業務改革の手段としては、業務フローの効率化・システム化や低収益ビジネスからの撤退などが挙げられます。

第2に、以上を踏まえて、期間限定(たとえば、2年)のPT(プロジェクトチ-ム)を設置します。対処すべき課題ごとにPTをその数だけ設置します。PTに付与する課題は大テーマをもって良し、とします。例えば、ESGのEをどうする、だけのテーマ付与で良いのです。PTメンバーには、先入観を与えず、自由に発想させ、大胆な提言を引き出してもらうことが重要です。これとの関連で、PTメンバーには優秀であると同時に、付与課題とは今まで「しがらみ」のない人を当てることが良いでしょう。

第3に、PT提言の評価とその試行です。有望な提言を可能な限り数多く選択して、小さく試行します。この試行によって、茫洋としていた課題に有益なデータや情報が付与され、何を目指すべきかが具体的に見えてきます。

以上によって、《人的資本価値を高める方法》の第1要件、「目指すべき姿(中期計画)」をより具体的により適切に描けるようになります。

「人的資本経営」の根底には人的資本価値の向上があります。ところが、対処すべき課題の中身が明確でないと、人をどのように育成するのかが定まりません。このような時、一手間掛けることになりますが、是非、上記のPTの設置と活用を検討して下さい。

ご参考:インソースの関連研修

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