事務リスクを管理するには?(1)

業務管理

業務改善とリスク管理の両立が求められる現在

近年、仕事の効率化によるコスト削減を目的に業務改善活動が行われる一方で、トラブルやクレームを防止・回避するためのリスク管理に対する仕事の比重が高まっています。
具体的には、業務改善のために「業務プロセスを削減」しつつ、「チェックプロセスを増やす」など、アクセルとブレーキを同時に踏むような状況になっていることも少なくありません。
確かに、「あっち立てればこっち立たず」のトレードオフの関係になることもあります。しかし、業務改善とリスク管理を対立関係ではなく、バランスよく両者とも実施していくことは可能です。

事務リスク管理が注目される理由

リスク管理において最も身近なものに「事務リスク」があります。単なるうっかりミスや勘違いによる小さなトラブルはよくあることですが、最近の特徴は、“現場のヒューマンエラーが大きな損害につながる”点にあります。中には、マスコミを賑わすような大事件に発展するものも少なからずあります。
例えば、証券会社におけるコンピュータ入力ミスがきっかけで、株式取引で数百億円の損害が発生した事件がありました。確かに、証券取引所や証券会社のシステムチェックが弱いといった問題はありますが、担当者が行ったオペレーションは、単に「61万円1株売り」とすべき注文を「1円61万株売り」と誤ってコンピュータに入力しただけです。うっかりや勘違いでも、笑って済まされない現実があります。
あるいは、マスコミを賑わす個人情報漏洩事件も、悪意のハッキングによるものより、ついうっかりのオペレーションミスで、公開していけない情報を誰でも見える状態にしてしまったケースが極めて多いようです。
このように、事務リスクないしオペレーショナルリスクは、担当者だけでなく、管理者さらに経営者も看過できない問題になってきたといってよいでしょう。今や、過失(ミス、ヒューマンエラー)に対する企業の社会的責任が強く問われる時代になってきました。

現場の問題をどう見つけるか?

(1)まず、仕事全体を把握し、リスクを洗い出す
事務リスク管理も通常の仕事と同じで、結局どんな仕事があり、それがどんな性格を有する仕事なのかを正確に把握する事がスタートです。その上で、現場における問題点を洗い出します。また、あわせて、リスクをはかる尺度を決めていきます。
これができれば、事務リスク管理のほぼ7~8割が完成したと言えます。管理対象の把握とそれに対するリスク評価のモノサシができれば、後は適切にチェックすればよいからです。

(2)特定の人物のせいにしない!
事務リスク管理の最大の阻害要因は、「○○さんが不注意でそそっかしいからダメ」「△△さんは仕事ができないからダメ」など、トラブルの原因を特定の「問題児」のせいにすることです。そうすると、すべての思考が停止してしまい、リスク管理を行う理由・必要性などを考える“なぜ”という問いを阻みます。
実際、「○○さん」を担当から除外しても、また新たな「問題児」が生まれるのみで、問題の根本解決にはつながりません。事務リスク管理とは、仕事の仕組みを変えることなのです。

(3)管理強化が無責任を誘発することもある
よくある間違いは、事務のトラブルが起きてひどい目にあうと、「リスク管理強化」と称して、チェック担当者を増員したり、あらゆる段階でチェックする対策を取ったりすることです。実はこれは大変危険な事です。チェックする人が増えると、かえって、“誰かがきちんとチェックするから、私は適当で良い”と無責任な態度を誘発させかねません。
また、すべてのプロセスを等しくチェックすることは、確認作業が形式に流れるだけで、重要なポイントを意識しないことと同じになります。さらには、お客さまサービスを損なってまで「リスク管理」が優先される事例も多々見受けられます。いずれにしても、「リスク管理強化」をしたはずなのに、効果が見られないといった事態に陥りがちです。

(4)リスク管理は改善しつつ行う
結局、事務リスク管理は全体最適を前提に実施されなければいけません。また、楽しくないと続きません。「リスク管理をしっかりやった結果、仕事も楽になった」という状態が求められる姿です。よって、リスク管理は仕事をムリ・ムラ・ムダなく楽しく行う業務改善の考えに基き、仕事の中に潜む危険(リスク)を防止するしくみを手順の中に入れ込むことが重要です。

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