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2025年5月16日
「米国第一」を掲げるトランプ米大統領の高関税政策が世界経済を翻弄している。活況が続く日本企業のM&A動向に冷や水を浴びせることになるのか。トランプ第1次政権時(2017~2021年)を振り返りつつ、今後を展望する。
トランプ1次政権では中国を関税政策の標的とした。中国製品に最大25%の制裁関税を適用し、中国は同率の報復関税で対抗した。こうした中、サプライチェーン(供給網)の再構築に向け、中国への依存度を減らし、ベトナム、カンボジア、ミャンマーなど東南アジアに生産拠点を分散する「チャイナ・プラス・ワン」と呼ばれる動きが世界的な広がりを見せた。
では、トランプ第1次政権下、日本企業のM&Aがどうだったか。順調に件数を伸ばしたが、あくまでそれまでの流れを引き継いだ自律的なもので、トランプ政権の発足が作用した形跡は見当たらない。
リーマンショック前年の2007年に国内、海外案件を合わせて年間1000件を超えていたM&A(上場企業の適時開示ベース)は2013年に634件まで落ち込んだが、アベノミクス(安倍晋三政権の経済政策)の始動と軌を一にする形で大底を脱し、回復に転じていたからだ。
適時開示ベース、2025年は4月17日時点
日米間のM&Aはトランプ氏の在任中、毎年40件台で安定的に推移し、その前後と比べても大きな変化はない。全体の7~8割は日本企業による買収案件で、米国投資は高水準を保った。
一方、日中間のM&Aは各年10数件。対米M&Aとは対照的に、その大部分は日本企業が中国子会社・事業を現地の合弁パートナーなどに売却する案件で占める。ただ、こうした中国事業の見直しに伴う売却の動きは2010年代初めからすでに顕在化しており、現在に至る。
日米間のM&Aをめぐっては目下、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収問題が最大の懸案となっているが、実は第1次トランプ政権下、日本企業に売却案件に"待った"がかかったことがある。
LIXILは2017年、イタリア子会社でカーテンウォールなどのビル外壁材を手がける建材大手のペルマスティリーザを中国企業に売却すると発表。しかし、翌年、対米外国投資委員会(CFIUS)が安全保障上のリスクがあるとして売却を認めない決定を下した。ペルマスティリーザは売上高の約4割を米国で賄っていた。
折から日中貿易摩擦が激化する中、CFIUSはトランプ政権下、権限の強化が進められていた。LIXILは最終的に買収先としたのは米国の投資会社だった。
トランプ氏が今年1月に米大統領に返り咲き、第2次政権がスタートして間もなく100日を迎える。中国とは関税の応酬がエスカレート。米国は145%、中国は125%という異例の関税率での報復合戦が続き、貿易摩擦を通り越して貿易戦争の様相を呈する。
さらに日本、欧州などの同盟国にも関税引き上げ(一部を90日間停止)を突き付け、サプライチェーンでつながる世界中の国・地域を混乱に陥れている。
足元、日本企業のM&Aは好調をキープしている。今年1月からの累計件数は401件(4月17日時点)と前年を10%上回り、このペースが続けば、年間1400件台に迫る見通しだ。
M&A件数はコロナ禍の影響が広がった2020年こそ落ち込んだものの、その後、急回復。2023年に1068件とリーマンショック後の最多を記録し、24年は1221件まで伸ばした。
トランプ関税のあおりで、こうした勢いがそがれることになるのか。世界経済の先行きに不確実性が増す中、対外投資に様子見ムードが広がることが予想される。とはいえ、日本企業にとって米国離れの選択肢はないだけに、少なくとも対米M&Aへのアクセルを緩めることはなさそうだ。
配信元:文:M&A Online
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