【アース製薬】虫ケア用品最大手、M&Aでブランドの多角化と海外展開を加速

2025年4月18日

【アース製薬】虫ケア用品最大手、M&Aでブランドの多角化と海外展開を加速

アース製薬は殺虫剤・防虫剤の虫ケア用品でトップの座を不動とし、入浴剤、洗口液などの日用品を含め、その数多くのヒット商品で高い知名度を持つ。今年は会社設立100周年の節目。創業はさらに古く、1892(明治25)年にさかのぼる。巧みな商品戦略に加え、今日の成長の原動力の一つはとりもなおさずM&Aだ。

園芸用品分野で初の買収

アース製薬は今年2月末、ガーデニング用培養土や園芸資材を製造・販売するプロトリーフ(東京都港区)の株式を追加取得し、子会社化した。持ち株比率を従来の34.15%から50.22%に引き上げた。アースとして園芸用品分野の買収は今回が初めてとなる。

プロトリーフは2000年に設立し、2024年6月期業績は売上高38億6300万円、営業利益1億3200万円。栃木県、岐阜県、岡山県に物流拠点を構え、全国への出荷体制を整えている。東京都内と横浜市内の2カ所に直営店を持ち、造園、エクステリア(外構)のデザインや庭のリフォーム、庭木のメンテナンスなどにも対応している。アースは同社と2017年に資本業務提携し、協業関係を深めていた。

2023年には健康領域の事業を手がけるTWO(東京都渋谷区)から薬用中性重炭酸入浴剤を中心とする「BARTH(バース)」ブランドの事業を取得した。BARTHは2017年発売の高価格帯ブランド。同ブランドの入浴剤は重炭酸イオンを豊富に含むお湯が温浴効果を高め、疲労回復を促すという。ハンドクリーム、リップクリーム、洗顔パウダーなども展開する。

バスクリン、白元を傘下に

アース製薬は2005年の株式上場以来、M&Aの実績は10件ほど。決して数が多い方ではないが、ここぞというタイミングで買収を手がけてきた。

なかでもハイライトとなったのが2012年、入浴剤の「バスクリン」や「きき湯」、「日本の名湯」などのブランドを持つバスクリン(東京都千代田区)の買収だ。アースは国内投資ファンドからバスクリン株式の80%超を約150億円で取得し、子会社化した(その後、完全子会社化)。

アースは自社でも「バスロマン」などの商品を展開していたが、バスクリンと合わせた入浴剤の国内シェアは40%を超え、「バブ」を擁する花王と市場を二分することになった。

「ごきぶりホイホイ」、「アースノーマット」、「ダニアース」をはじめ、害虫の特性に合わせた虫ケア用品の国内シェアは優に50%を超える。夏場に商戦を迎える虫ケア商品と、冬場に需要が伸びるバスクリンの組み合わせで季節性の変動を緩和する狙いが込められていた。

バスクリンは明治期に誕生した日本初の入浴剤「浴剤中将湯」の発売で知られる津村順天堂(現ツムラ)をルーツに持つ。2006年にツムラが入浴剤などの家庭用品事業を分社した後、2008年にMBO(経営陣による買収)でツムラから独立した経緯がある。

バスクリンがアースグループに加わり、すでに10数年。そのバスクリンについては2026年1月1日付でアースが吸収合併する運びとなった。

バスクリンに次ぐ大型買収は2014年に訪れた。民事再生手続き中の白元の主要事業を取得した。75億円を投じた。

受け皿会社の白元アース(東京都足立区)を設立し、衣料用防虫剤「ミセスロイド」、「パラゾール」や脱臭剤「ノンスメル」などの事業を引き継いだ。アースは両社の事業領域や販売先が似通っていることから、物流や販路の相互活用など相乗効果が見込めると判断した。

グループ経営強化へバスクリンを吸収合併

アースは現行の中期経営3カ年計画「Act For SMILE COMPASS 2026」(2024年1月~26年12月)で、「海外の売上拡大」、「収益構造改革」、「グループ経営力の強化」の3つを重点方針に掲げる。その一環として期間中に予定しているが持ち株会社体制への移行だ。

グループ各社の中でもアース製薬、バスクリン、白元アースは重複する領域が少なくないのが実情。これまではグループ内で事業・製品の競合があっても利益が出ていれば良いとする面が否めなかったが、持ち株会社を司令塔とし、グループ全体での経営資源配分の最適化を実現するのが狙いだ。

来年1月に予定するアースとバスクリンの経営統合も持ち株会社体制への移行を見据えたものにほかならない。

海外売上高、300億円超えも

中計1年目の2024年12月期業績は売上高6.9%増の1692億円、営業利益0.9%増の64億2500万円。売上構成は虫ケア用品39%、日用品(入浴剤、口腔衛生用品など)、ペット用品・その他6%、食品・医薬品工場向けなどの総合環境衛生事業18%。

中計では最終年度の2026年12月期に売上高1700億円、営業利益70億円を掲げる。このうち売上高は2025年12月期予想を1750億円としており、1年前倒しで達成する見通しだ。

では海外事業はどうか。東南アジア、中国での展開を基軸とし、2024年12月期の海外売上高は218億円(前期比25%増)。虫ケア用品、芳香剤などが好調で、中東や北米、欧州への輸出も伸びている。

中計最終年度に売上高250億円を目指しているが、このまま順調にいけば、300億円超えも視野に入る勢いだ。

アース製薬の業績推移

※2022年12月期決算から収益認識に関する会計方針を変更

手つかずのインド市場開拓は?

海外生産拠点は現在、タイ、中国、ベトナムに持つ。1980年にタイで生産を始め、中国では1990年代以降、天津、蘇州に2工場を構える。ベトナムでは2017年、住宅用洗剤や殺虫剤を製造する現地企業 A My Gia(現アース・コーポレーション・ベトナム)を約89億円で買収し、東南アジア国で新たな生産拠点を確保した。

さらに2021年にはフィリピン企業から虫ケア・ペットケア用品などの販売事業(現アース・ホームケア・プロダクツ)を取得し、同国での市場開拓を本格化している。

アジアを見渡せば、アースにとって世界一の人口となったインドが事実上、手つかずの有望市場として残る。展開エリアの拡張に向け、M&Aの出番が大いにありそうだ。

◎アース製薬:主な沿革

出来事
1892  大阪・難波で創業
1925  木村製薬所を設立
1929  家庭用殺虫剤「アース」発売
1964  アース製薬に社名変更、入浴剤「バスロマン」発売
1970  大塚グループの傘下に入る
1973  「ごきぶりホイホイ」発売
1980  タイに現地法人設立
1986  大塚ゾエコン(現アース・ペット)に資本参加
1991  本社を東京に移転
2001  シェルジャパンからバポナブランド(バポナ殺虫プレート)を取得
2005  東証2部上場
2006  東証1部上場(2022年4月、東証プライム市場に移行)
2008  ペットアクセサリー販売のターキー(現アース・ペット)を子会社化
2012  入浴剤「バスクリン」のバスクリンを子会社化
 ペットフード事業のニッケペットケア(現アース・ペット)を子会社化
2014  民事再生手続き中の白元の日用品事業(現白元アース)を取得
2016  ペット用品製造のジョンソントレーディング(現アース・ペット)を子会社化
2017  住宅用洗剤・殺虫剤製造のベトナムA My Gia(現アース・コーポレーション・ベトナム)
 を子会社化
2022  フィリピンNMPIから虫ケア・家庭用製品などの販売事業を取得
2023  TWO(東京都渋谷区)から薬用中性重炭酸入浴剤など「BARTH」ブランド事業を取得
2025  園芸資材製造のプロトリーフ(東京都港区)を子会社化

配信元:文:M&A Online


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