管理職

ポストコロナ・ウィズコロナ時代の事業戦略・人事戦略を考える ~「特徴的な4つの事象」「出現しはじめた有力分野」

新型コロナウイルスによる人命や経済への大打撃は、消費者・国・企業がこれまで活用してきた考え方や行動指針を一変させてしまいました。


これからは、「命を守る」という絶対価値が全面に打ち出されます。


このような新たな潮流は、企業経営に何を示唆するのでしょうか。結論を先に言えば、ポストコロナ・ウィズコロナ時代、企業はすべからく事業ポートフォリオの見直しを迫られます。


その根底にあるものは、コアビジネスの収益力低下です。どのように対処すべきでしょうか。


「今後、何が起きるのか」
今回は特徴的な事象を4点取り上げながら、企業経営に示唆するところを述べてまいります。

目次

(1)"不要不急"の外出自粛によってもたらされた"我慢"の消費行動

1つ目の事象は、少し前の緊急事態宣言下、「"不要不急"の外出自粛によってもたらされた"我慢"の消費行動」についてです。

こうした行動は、コロナ禍が終息した後に解消されるのでしょうか。それとも、"我慢"することが一定割合、新たな価値として定着していくのでしょうか。

売上が半減した企業にとって、前者の場合なら売上高は元に戻ります。しかし後者の場合なら、売上高は元に戻りません。

売上高をどこまで回復していけるか、これは業態によって異なります。ただし、ここで明らかなことが1つあります。

「売上高の回復は、良くてコロナ禍前の水準に戻るだけ」だということです。

現状、経済的な立ち直りに苦しむ消費者は少なくありません。大多数の企業において、売上高の100%回復は「ない」と見て良いでしょう。

大変厳しい話ですが、想定しうる現実に目を背けないことが重要です。既存事業の縮小を準備しつつ、新分野の開発へと舵を切り、新分野に精通した人材の確保や人材の教育に意を払う。これが、為すべきことなのです。

(2)ポストコロナ・ウィズコロナ時代、急拡大するビジネス分野

2つ目は、「ポストコロナ・ウィズコロナ時代、急拡大するビジネス分野」についてです。

今回のコロナ禍により、私たちの中で「命を守る」という絶対価値が唯一無二のものとして再確認されました。

今後も、この価値を実現するための取り組みが最優先で実施されるでしょう。特に医療分野においては、既に国を挙げた取り組みが強力に推進されています。

「衛生管理の再構築」「感染症検査体制の強化」「オンライン診療の充実」「スマホを活用した感染警告システムの導入」「病院の受け容れ体制の抜本的見直し」「治療薬開発体制の再構築」「パンデミック管理一元体制の構築・強化」「医療崩壊を防ぐための新たな取り組み」

など、新プロジェクトは多様で広範、内容的にも奥深いものになってきています。

同時に、これらの取り組みに横串を刺すかたちで、ICTの需要もより膨大なものになっていくことが予想されます。

つまり、これらの分野に経営資源を配分・強化することによって、収益増強が見込まれます。人材確保や人材の再教育もしっかりと準備していく必要があります。

(3)浮き彫りとなった、BCPの不備

3つ目は、「BCP」の分野についてです。

「テレワークが上手く機能していない」
「WEB会議が不調で、連絡網は断絶」
「自組織のBCPは万全だと思っていたが、いざとなると機能しない......」

このような話は枚挙に暇ありません。各組織において、BCPの再点検は必定です。

加えて今回のコロナ禍により、社会システムのBCPに関する不備も浮き彫りになりました。

小学校が数か月休校となった結果、かわりの教育をどのように実施していけば良いのか。夫婦共働き世帯については、日中、子どもの面倒を誰が見るのか。こうした課題は、大きな社会問題となりました。

BCPは企業・組織の範疇にとどまらず、社会システム、さらには各世帯の問題を網羅しながら、問題の再検証と新しい対応が求められることが再確認されたのです。

こうした分野についても、ビジネスがさらに急拡大していくことが予想されます。

(4)国際分業

4つ目は、「国際分業」についてです。

20年暦以降、「部品の国際供給網が遮断し、工場を閉鎖せざるを得なかった」というケースを多数伺いました。

大変困ったことに違いはありませんが、企業にとって、これは想定されたリスクの1つだとも言えます。今回「危うい」と思ったことは別にあります。

それは、有事に際し、他国から生産を委託された産品が当該他国に輸出されるのではなく、生産国において優先的に消費されてしまうことです。

例えば、マスクです。

コロナ禍の前半、生産委託国である日本には十分なマスクが回ってきませんでした。

人命に関わるものについて、有事に国際分業が機能しないのであれば、国際分業は考え直すべきです。例えば、マスクの代わりに食料が入ってこなかったらどうしたでしょう。より喫緊の大問題になってしまいます。

今は、有事が局地型からグローバル型に変容し、同種のリスクをグローバルレベルで抱え込む時代です。

今後「国内生産の充実・強化」をテーマに、食料安全保障の問題にも新たな動きが出てくることでしょう。こうした分野についても、新たなビジネスチャンスが訪れています。

~最後に~

以下は、本記事の総括となります。

◆"不要不急"のもと消費者に強いられた"我慢"の消費行動は、今後完全に解消されるわけではない。売上高減少に伴う既存ビジネスの規模縮小は避けられないため、事態に対処しつつ、全体戦略の新展開を探るべき。

◆事業ポートフォリオの見直しと新戦略の展開については、人材育成と人材確保が不可欠。この点を、戦略とワンセットで準備すべき。

◆戦略の新展開において、有力分野がいくつか出現してきている。コロナ禍により一変した消費者の考え方や行動こそが、新分野創造の原動力となる。
以下は有力分野の例示。


・「命を守る」という絶対価値を深化・開発させるビジネス
⇒(特に医療分野においては)急拡大が予想される

・浮き彫りになったBCPや社会システムの不備
⇒急速な解消・改善が予想される

・リスクをグローバルレベルで抱える現代だからこそ
浮き彫りになった、国際分業が成り立たない分野
⇒衛生用品・食料品の分野で、国内生産の強化が予想される

既に輪郭が見えはじめているポストコロナ・ウィズコロナ時代。

事業戦略・人事戦略を検討するための視点として、本記事をご参考いただければ幸いです。

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