
「とりあえず使っている」生成AIを、安全な「会社の仕組み」へ変える~AI活用基盤(vNext)開発者インタビュー
生成AIの導入が広がる一方で、多くの企業がある壁に突き当たっています。
「便利そうだから使ってはいるが、情報は大丈夫なのか」
「そもそも、社内で誰が何に使っているのか分からない」
個人が生成AIツールをばらばらに使い、管理されていない状態はいつしか大きなリスクにもなりかねません。
教育会社インソースが自社開発した「AI活用基盤(vNext)」は、こうした生成AIの利用を会社の仕組みへと変え、社内のデータや業務システムと安全につなぎます。本記事では、その仕組みと開発の狙いを、開発担当者への取材をもとにご紹介します。
個人任せのAIを、会社の仕組みへ
――そもそも「AI活用基盤」とは、何をするための仕組みなのでしょうか。
会社でAIを使い始めると、多くの場合、社員がそれぞれ個人でChatGPTなどを使う状態になります。AI活用基盤とは、その個人任せの利用を全社の仕組みへと引き上げ、誰もが安全に使えるようにするための土台です。
社員がそれぞれ個別に生成AIを利用しているだけでは、会社として、どのAIが使われているのか、誰が利用できるのか、どのような情報とつないでよいのかを把握・管理することが難しくなります。そこでAI活用基盤(vNext)は、社内で利用するAIへの入口をまとめ、認証や権限管理、利用ログなどの共通機能を整えます。さらに、vNext経由の起動状況や連携対象AIの利用実績を可視化することで、ばらばらだったAI利用を会社として把握し、継続的に改善できる土台をつくります。
つまりこの基盤の核心は、AIを使えるようにすることだけにあるのではありません。誰が何に、どう使っているのかを会社として把握し、きちんと説明できる状態にすることです。そこにこそ、本当の狙いがあります。
――その中核となる「vNext」は、具体的にどのような仕組みなのでしょうか。
AI活用基盤の中核にあるのがvNextです。ポータルでは、CopilotやChatGPT、Claudeなど、社内で利用するさまざまなAIへの入口をまとめます。さらにvNextと連携するAIやAIエージェントでは、認証・権限管理などの共通機能を介して、社内wiki(掲示板)やデータベースなどの情報・業務システムを安全に活用できます。
こうしたvNextが提供する価値は、大きく二つあります。
一つ目は、統制です。次のような仕組みによって、AIの利用にガバナンス(統制)を持ち込みます。
- 社内アカウントでの認証
- 暗号化された通信
- 誰が何にアクセスしたかのログ
- 部署・役職・用途に応じた利用権限
二つ目は、活用の推進です。社員が作成したAIエージェントの利用状況やランキングを可視化し、よく使われているエージェントや活用例を社内で見つけやすくします。管理を効かせるだけでなく、使うほどに価値が広がっていく設計になっています。
眠る知的資産をAIで活かす
――この基盤は、そもそもどんな課題から生まれたのでしょうか。
出発点は、研修会社ならではの事情でした。長年の研修事業を通じて、膨大な量の研修テキストが社内に蓄積されています。こんな研修はできるかと問い合わせが来るたびに、担当者は膨大なテキストの中から目的のものを探し出し、過去の教材を土台に新しいものを組み立ててきました。
その手間を根本から軽くするために生まれたのが、AIから直接引ける社内データベース(RAG=AIが社内データを参照して答える仕組み)です。これが、vNextの最初の一歩になりました。
とはいえ、研修テキストは会社の知的資産です。リンクをそのまま外部に渡せば、意図しない流出やダウンロードを招きかねません。社員でなければ開けないようにしており、いつ誰が開いたかも記録できます。
そうした認証・暗号化・権限・ログの仕組みを整えて初めて、資産は安全に活かせます。裏を返せば、この一連の守りの仕組みそのものが、vNextの原型になったのです。
――この基盤は、どんな課題を抱えた企業に届けたいのでしょうか。
vNextが特に力を発揮するのは、一見正反対に見える二つのタイプの企業です。
一方は、情報流出などのリスクを警戒し、そもそもAIの利用そのものを禁止している企業です。
もう一方は、とりあえず使い始めたものの、本当に安全に使えているのか確信が持てないでいる企業です。
禁止と放任、向かう方向は逆でも、根底にあるのは、AIを会社として管理しながら活かしたいという同じ思いです。その相反する立場のどちらにも応えられることが、本サービスの持ち味です。
数年越しの要望が叶った日
――実際に使う人は、どんな場面でその価値を実感するのでしょうか。
価値がはっきり表れたのが、社内wikiでした。かつてはインソースでは、社内からしか社内wikiにアクセスできませんでした。
数年前、台風や地震で公開講座を開催できるかが話題になったとき、在宅勤務や外出中の社員から、自宅や外出先でも運用マニュアルを確認したいという声が上がりました。
しかし当時、社外から見るにはVPN(社外から社内ネットワークに安全につなぐ仕組み)が必要なうえ、作り替えも大がかりで、要望は実現しないまま数年が過ぎていました。
この課題を解決するきっかけになったのが、vNextを介して社外からも安全に社内wikiへ接続するという発想でした。認証や権限確認、暗号化された通信などの仕組みを組み合わせることで、許可された社員だけが社外から安全に社内wikiを利用できるようにしました。長年の課題が、ここで一気に解消されたのです。
さらに1か月ほどで、この社内wikiのRAG化も実現しました。従来のキーワード検索は、単語が完全に一致しなければ目的の情報にたどり着けませんでした。
vNextではその課題を、経費精算や出張手続きといったテーマを自然な文章で問いかけるだけで、多少表現が違っても、複数のページを横断して答えが返るような仕組みで解決しました。
この仕組みの精度をさらに高めるため、回答には必ず根拠となる参照資料を添えるようにしており、内容が正しいかを使う人自身が確かめられるように工夫が施されています。
その結果、既存の知的資産がより自由に活かされるようになりました。実際に質問して根拠つきの回答を確認するという使い方からも、価値を感じられるサービスであることが裏付けられています。
――会社全体で見たとき、導入はどんな効果につながるのでしょうか。
こうした一つひとつの便利さは、会社全体の視点でも意味を持ちます。AIの利用を管理下に置きながら活用を推進でき、AI活用基盤(vNext)を標準ツールとすることで、全社の環境を統一できます。
取引先に対しても、AIを管理された状態で正しく使っていると、根拠を持って説明できます。そして社内情報の活用や業務の自動化が進むほど、会社全体の効率も底上げされていきます。守りと攻めを同時に満たせることが、この基盤の強みです。
最短数週間で始まる基盤
――実際に導入するとなると、どのくらいの期間で始められるのでしょうか。
システムはすでに社内で稼働しており、すぐに導入へ移れます。実際に使い始めるまでの目安は、数週間ほどです。
ただし、vNextの真価は社内システムとつないでこそ発揮されるため、既存システムとの連携を伴う場合は、1〜2か月ほどかかることもあります。
――導入企業に合わせて、どこまでカスタマイズできるのでしょうか。
カスタマイズの中心は、各社で異なる社内システムとの接続です。さらに、AIが業務を代行する土台(エージェント実行基盤)の上では、業務処理そのものの自動化にも踏み込めます。
たとえば、紙やPDFの書類を読み取ってデータ化し、必要に応じてAIで内容の理解を補いながら、社内システムの記録と自動で照合するといった業務フローの自動化にも対応できます。こうした共通の部品を、お客様の業務に合わせて組み替えていきます。それが、vNextのカスタマイズの考え方です。
変化を追い続ける仕組み
――すでに提供している現在も、開発はどのように続いているのでしょうか。
この基盤の特徴は、すでに提供を始めた今も、使われながら機能が増え続けていることです。
現在も、社内・専用環境で利用できる「クローズドChat」や、監査・改善に活用するレポート機能など、利用範囲を広げるための機能拡張を進めています。監査に使う月次レポートも、現在準備が進められているところです。
その勢いは、「1か月経てば、何かしら新しい機能が増えている」というほどです。完成を待つのではなく、動かしながら鍛え続けます。それが、この基盤に流れる思想です。
――一方で、開発を続けるうえでの難しさはどこにあるのでしょうか。
CopilotもChatGPTもClaudeも、新しいツールや機能を次々に打ち出し、いったん接続できても、仕様変更で使えなくなることは珍しくありません。だからこそ、すべての変化を追いかけるのではなく、どの技術やサービスを取り込むべきかを見極めながら、必要な部分を継続的に更新していきます。こうした見直しを重ねることが、基盤を長く使える状態に保つことにつながります。
「野放し」でも「禁止」でもなく
「野放し」でも「禁止」でもなく、認証・権限・ログのもとで、AIを安心して会社の力に変えていきます。そして、社内データの活用や業務の自動化を通じて、会社全体の底上げにつなげます。それが、AI活用基盤(vNext)が目指すところです。
「とりあえず使っている」生成AIを、会社の仕組みへ。
AI活用基盤(vNext)は、社内データと安全につなぎ、全社の活用を推進する基盤です。導入イメージやカスタマイズは、デモ・ご相談で詳しくお伝えします。


