スプレッドシートのルーティン作業は無料で自動化!Google Apps Script(GAS)をサンプルコード付きで解説

毎日の業務に欠かせないGoogleスプレッドシート。しかし、集計や転記、報告資料づくりなど、同じ作業を繰り返す中で入力ミスや手戻りに悩まされていませんか。
こうした課題を解決する方法として注目されているのが、無料で利用でき、スプレッドシートをはじめとするGoogleアプリと連携できるGoogle Apps Script(GAS)による自動化です。本コラムでは、スプレッドシートでよく見られる典型的な課題と、GASを活用した具体的な解決策、さらにGoogleアプリと連携することで実現できる業務効率化について、分かりやすく解説します。
「作業に追われる日々」から「成果を出せる日々」へ、一歩を踏み出してみませんか。
Googleスプレッドシート業務でよくある課題
多くの現場で活用されているGoogleスプレッドシートですが、便利さの一方で次のような課題が潜んでいます。これらは「ちょっとした非効率」に見えて、積み重なると大きなロスやストレスにつながります。
- 繰り返し作業の多さ
毎週の集計や月次の報告などで、同じ数値を延々と転記し続ける業務は少なくありません。作業自体は単純でも、時間を奪われるだけでなく、担当者のモチベーション低下にもつながります。 - 入力ミスの発生
コピー&ペーストの過程で数字やフォーマットが崩れ、誤った資料が社内外に共有されるリスクがあります。小さなミスが経営判断や顧客対応に影響を及ぼすこともあります。 - 手戻りによる非効率
修正や再確認が頻発することで、最終版の資料を整えるまでに多くの工数がかかります。確認や修正に追われることで、本来注力すべき分析や意思決定に時間を割けなくなります。
Google Apps Script(GAS)で課題を解決する
こうした問題を根本から解消する方法が、Google Apps Script(GAS)による自動化です。GASは、スプレッドシートに「ちょっとしたお手伝い機能」を追加できる仕組みです。
特別なソフトをインストールする必要はなく、Googleが用意しているツールの一部としてすぐに利用でき、無料で始められるのも大きな特徴です。
GASを使う基本的な手順
- Googleスプレッドシートを開く
自動化したいファイルを準備します。 - スクリプトエディタを起動
メニューから「拡張機能」→「Apps Script」を選択。 - コードを入力・貼り付け
自動化したい処理に合わせてスクリプト(コード)を作成します。 - 権限を承認して実行
初回実行時はGoogleアカウントで承認が必要です。 - 動作を確認・修正
スプレッドシートの結果やログを確認し、必要に応じてコードを調整します。
スプレッドシート自動化の具体例~GASで集計・転記・メール送信他
集計の自動化~売上データをGASで自動集計
「毎月、複数のシートから売上を集めて合計する」といった作業は、単純ながら時間がかかり、ミスも起こりやすい業務です。GASを使えば、この「売上データの集計」を一瞬で自動化できます。以下はサンプルコードです。
function aggregateSales() {
// スプレッドシートを開く
var spreadsheet = SpreadsheetApp.getActiveSpreadsheet();
// 売上データがあるシートを指定(シート名は実際のシート名に変更)
var sheetNames = ['January', 'February', 'March']; // 集計対象のシート名
var totalSales = 0;
// 各シートをループして売上データを集計
for (var i = 0; i < sheetNames.length; i++) {
var sheet = spreadsheet.getSheetByName(sheetNames[i]);
if (sheet) {
// ここで売上データが入力されているセルを指定(例: B2セル)
var sales = sheet.getRange('B2').getValue();
totalSales += sales;
} else {
Logger.log('シート "' + sheetNames[i] + '" が見つかりません');
}
}
// 合計を表示するシートに出力
var resultSheet = spreadsheet.getSheetByName('Summary'); // 結果を出力するシート
resultSheet.getRange('B2').setValue(totalSales); // 合計をセルB2に出力
Logger.log('合計売上: ' + totalSales);
}
転記の自動化~顧客名簿や申込リストをGASでコピー不要に
顧客名簿や申込リストを別の表に移す際、コピー&ペーストで対応していると時間がかかるうえ、入力ミスの原因にもなります。GASを使えば、ボタン一つで自動転記が可能です。手作業をなくすことで作業効率も精度も大幅に向上します。以下はサンプルコードです。
function autoTransferData() {
// スプレッドシートを開く
var spreadsheet = SpreadsheetApp.getActiveSpreadsheet();
// 転記元シートと転記先シートを指定
var sourceSheet = spreadsheet.getSheetByName('顧客名簿'); // 顧客名簿シート
var targetSheet = spreadsheet.getSheetByName('転記先'); // 転記先シート
// 転記元シートのデータ範囲を指定(例: A2からE列までのデータ)
var sourceData = sourceSheet.getRange('A2:E' + sourceSheet.getLastRow()).getValues();
// 転記先シートにデータを転記(転記先の最終行を取得)
var targetLastRow = targetSheet.getLastRow();
targetSheet.getRange(targetLastRow + 1, 1, sourceData.length, sourceData[0].length).setValues(sourceData);
// 転記完了のログを表示
Logger.log('データが転記されました: ' + sourceData.length + ' 行');
}
そのほかの自動化例~報告メール作成や入力ルールもGASで効率化
集計や転記以外にも、GASを使えばスプレッドシート業務をさまざまに自動化できます。
- 報告メールの自動化
シートに数字を入力するだけで、「今週の売上報告メール」が自動で作成され、そのまま送信されます。毎週の定型メールを手作業で作る必要がなくなります。 - 入力ルールの自動適用
「日付は必ず○月○日形式」「電話番号は半角数字のみ」といった条件をあらかじめ設定できます。入力時点で誤りを防げるため、確認や修正にかかる時間を減らせます。
このように、これまで自分の手で繰り返していた作業をGASに任せることで、業務の精度を高めながら時間と労力を大幅に削減できます。
Gmailなど他のGoogleアプリとGASの連携でさらに効率化
GASを活用すれば、スプレッドシートの自動化に加えて、Gmail・Googleフォーム・Googleカレンダーと連携することも可能です。
- Gmailと連携
毎週の進捗報告メールを自動で送信。書き間違いや送り忘れを防ぎます。 - Googleフォームと連携
アンケート結果を自動で整理。手作業での転記が不要になり、手間とミスを削減できます。 - Googleカレンダーと連携
シートに入力した予定を自動でカレンダーに登録。二重入力の手間を解消し、スケジュール管理を効率化します。
このように「入力 → 整理 → 共有 → 管理」の流れをシームレスにつなぐことで、業務全体の正確性とスピードを大きく向上させることができます。
初心者でも安心!GASでスプレッドシート自動化を学ぶ3ステップ
「自動化」と聞くと難しく感じる方も多いですが、Google Apps Script(GAS)は小さな一歩から始められます。特別な準備は不要で、普段お使いのスプレッドシート画面からそのまま使い始められるのも大きな特徴です。
学び方のステップ
- 簡単な動作から試す
まずは「セルに入っている値を表示する」といった、数行の短いスクリプトから始めましょう。
たとえば「A1の値をポップアップで表示する」だけでも十分。これだけで「自分にもできた」という実感が得られます。 - よくある作業を自動化する
次に「毎週、売上データを別の表にコピーする」「日付を今日の日付に書き換える」といった、日常的な作業を自動化してみましょう。
ボタン1つで処理できるようになると、手間の削減効果を実感できます。 - 他のGoogleアプリをつなげて便利にする
慣れてきたら、Gmailやカレンダーなど他のGoogleアプリと連携させてみましょう。
たとえば「シートに入力された内容をもとにメールを自動送信する」ことで、業務全体の流れを効率化できます。
少しずつステップアップしていけば、初心者でも「入力ミスの削減」や「手戻りの防止」といった効果を現場で実感できるようになります。
まとめ
Googleスプレッドシートは便利な一方で、繰り返し作業や入力ミスが積み重なると非効率になりがちです。Google Apps Script(GAS)を活用すれば、集計・転記・メール送信などを自動化し、手作業を減らしながら業務の正確性とスピードを両立できます。さらにGoogleアプリと連携することで、チーム全体の生産性向上や、働き方そのものの改善も実現可能です。
(初心者向け)GAS入門研修~スプレッドシート操作自動化編(1日間)
GASが初めての方でも安心して学べる内容で、Googleスプレッドシート上の自動化を基礎から習得できます。1日の集中研修で、現場で役立つスキルを効率的に身につけられます。
よくあるお悩み・ニーズ
- スプレッドシートの業務に膨大な時間がかかっており、効率化したい
- GASを習得し、社内のDX化・業務改善を推進していきたい
- GASを業務で使いたいが、プログラミングの経験がなく何から始めたらいいのかわからない
本研修の目標
- GASの概要について説明することができる
- GASを用いてスプレッドシート操作の自動化ができる
- GASをビジネス現場で活用するためのイメージを持つことができる
セットでおすすめの研修・サービス
より実務での活用度を高めたい方には、次のステップとして応用研修がおすすめです。
GAS応用研修~Googleアプリとスプレッドシートを連携する
GmailやGoogleカレンダー、Googleフォームなどとスプレッドシートを連携させ、より高度な自動化を実現する方法を学べます。自動化の幅を広げたい方におすすめです。
応用編で幅広い業務改善につなげることで、「自分の業務に合った自動化」を実現できます。
JavaScriptプログラミング
Google Apps Script (GAS)は、JavaScriptをベースに開発されたプログラミング言語なので、文法や構文は非常に似ています(違いは実行環境と使える機能です)。JavaScriptの知識があれば、GASを習得するのは比較的容易と言われています。
本研修はJavaScriptの研修です。JavaScriptは、Webブラウザのユーザインタフェースには欠かせない言語です。本コースは、その基本構造や記述を、演習も交えながら修得できる研修です。
(初中級者向け)しっかり学ぶExcel研修~ゼロから学ぶマクロ・VBA基礎編(2日間)
Google Apps Script(GAS)を今までのイメージで例えるならば、サーバーサイドで動くVBAのようなものだと考えるとわかりやすいです。
VBAがExcelやWordといったPC上のソフトウェアを自動化するのに対し、GASはGoogleスプレッドシートやGoogleドキュメントといったクラウド上のサービスを自動化します。
本研修はマクロ・VBAの研修です。初心者の方にもわかりやすいよう、短時間に詰め込まず一つひとつの解説を多くしたカリキュラムです。講師の操作を見て解説を聞き、総合問題に取り組むことで、理解し、書けるようになることを目標にします。


