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昇級・昇格試験はなぜ必要?~公平かつ多面的な評価をするために知っておきたい評価手法の種類と導入のポイント

社員の昇級・昇格にあたって、どのような基準で選抜するかは、企業の人事戦略において極めて重要なテーマです。特に管理職への昇格では、実績だけでなく、組織運営に必要な能力やスタンスを客観的に評価する仕組みが求められます。本コラムでは、昇級・昇格試験の目的や背景、導入のタイミング、評価手法の種類と活用方法について解説します。

昇級・昇格試験が導入される背景

昇級・昇格試験の目的は、昇格候補者が等級や役割に相応しい能力を備えているかを評価することです。主任や課長、部長など、役職ごとに役割は異なりますので、当然期待される成果や能力も異なります。

特にマネジメントを担う立場に必要な能力を測るためには、筆記試験や論文、面接などを組み合わせて総合的に評価します。組織における働き方が多様化している昨今では、評価の公平性と納得感を担保できる試験の設計、運用が求められています。

人的資本経営の趣旨をふまえた、昇級・昇格試験と候補者育成

近年注目されている「人的資本経営」では、人材の能力を数値で可視化し、教育投資を通じて成長を促すことが求められています。昇級・昇格試験は、会社の中核を担う人材の能力を可視化する取り組みであり、人材戦略における節目として位置付ける必要があります。

特に、継続的にリーダー候補の人材を確保するためには、優れた能力を持つ社員を継続的に育成する仕組みが重要となります。例えば、キャリア支援や成長ビジョンを会社として示すこと、あるいは定期的な研修やアセスメントを実施してスキルアップを支援することなどです。

主な評価手法とその使い分け~何をどう測るか

知識や思考力を測るテスト

各階層別に求められるスキルを洗い出し、その知識を問うとともに、ケースに応じた活用力を有しているかどうかを測定します。

  • 知識の例:PDCAの要素と意味、財務に関する基礎知識など
  • 活用力の例:欠員が出た際のチームマネジメント(⇔通常時のチームマネジメント)など

昇級・昇格試験においてWebテストを実施する際は、以下の実施要領がおすすめです。

  • 結果の非公開:問題や正解の流出を防ぐため、結果を即座に表示しないようにする
  • 設問順の変更:受験者ごとに設問順をランダムに変更して出題することで、カンニングなどの不正を防ぐ
  • 複数の設問パターン:不合格者が翌年も受験する場合などに対応できるよう、同様の測定内容で複数の設問パターンを用意する

昇格論文

所定の課題に対する論文提出を通じて、管理職としての考え方や問題解決力を評価します。論理的思考力やスタンスを自分の言葉で表現する力が問われるため、テストでは測りにくい能力の可視化が可能です。

論文テーマの例

  • 課長級:今後、管理職として、所属部門において取り組みたい課題を設定し、その課題に対する目標を設定してください
  • 部長級:自部署の業務リスクについてできるだけ多く書き出し、部門責任者として取り組むことを、800~1,000字程度の文章で説明してください

面接

面接では、管理者としてのマインド・構想力・組織運営力(コミュニケーション力、リスク感覚、経営資源の捉え方)などの適性を直接確認します。上級の役職になるほど、より経営的かつ高度な視点での評価が求められます。採点シートに基づいた評価を行うことで、面接官の主観に左右されにくくすることができます。

その他の補助的な評価手法

  • アセスメント研修
    研修中のグループワークなどを通じて、受講者の行動や発言を観察し、リーダーシップやコミュニケーション力を評価します。育成と評価を同時に行えるため、昇格候補者向けの研修として活用されることが多いです。
  • 360度評価
    部下や同僚など多方面からの評価を集める手法です。業績評価とは直接結びつかないため、昇級・昇格試験の中心的な評価にはなりませんが、パワハラ傾向の有無など、他の手法を補う役割で使うことができます。

試験の設計・運用に外部支援が有効な理由とそのメリット

昇級・昇格試験の設計や運用には、専門的な知識と経験が求められます。特に、評価項目の整合性や公平性の担保、受験者への説明責任などを考慮すると、社内だけで完結するのは難しいケースもあります。

このような場合には、外部の専門サービスを活用することも効果的です。例えば、階層別テストの設計・運用支援、論文の採点代行、面接官の派遣、評価基準の策定支援など、目的に応じた支援を受けることで、より精度の高い評価が可能になります。

外部サービスを活用するメリットは以下の通りです。

  • 評価の客観性と公平性を高められる
  • 社内リソースの負担を軽減できる
  • 評価結果のフィードバックが充実する
  • 継続的な改善や制度設計の支援が受けられる

昇級・昇格試験は一度きりのイベントではなく、継続的な人材育成の一環として位置づけることが重要です。そのためにも、信頼できる外部パートナーとの連携は有効な選択肢となります。

まとめ:「単なる選抜」から、「社員の成長を促す仕組み」へ

昇級・昇格試験は、企業の人材育成と組織運営において重要な役割を果たします。実務成績だけでなく、知識、思考力、スタンス、コミュニケーション力などを多角的に評価することで、より適切な人材配置が可能になります。

導入にあたっては、目的の明確化、公平性の確保、評価手法の選定、社員への説明とフィードバックなど、丁寧な設計が求められます。また、外部サービスの活用も視野に入れることで、制度の質を高め、運用の負担を軽減することができます。

昇格試験は、単なる選抜ではなく、社員の成長を促す仕組みです。制度設計を通じて、企業全体の人的資本を強化する取り組みとして、ぜひ前向きに検討してみてください。

階層別テスト|ビジネスで必要な「知識」と「活用力」を測定するテスト

累計数百万人の社会人向け教育研修に携わってきた弊社がノウハウを体系化したアセスメントです。意識調査ではなく、各階層に求められるスキルや能力をテストで問うことにより個々人のスキルレベルを数値で把握します。

昇級・昇格試験では以下のオプションを利用するとより効果的です。

昇級・昇格試験で活用できる階層別テストオプションサービス

昇級・昇格試験に特有のニーズを満たすことのできるオプション機能です。

  • 結果の非公開:通常の階層別テストはすぐに結果が見えますが、昇格試験では問題や正解の流出を防ぐため、結果レポートを一定期間非公開に設定できます(無料)。
  • 回答時間制限:ウェブテスト形式で時間制限を設けることができます。時間切れになると強制的に回答画面が閉じられ、回答後は設問や回答内容が非公開となります。
  • 設問順の変更(シャッフルテスト):受検者ごとに設問順をランダムに変更することで、カンニングなどの不正受検を防止します。
  • 紙面受検:通常「階層別テスト」はWeb受検でご案内をしておりますが、紙面で実施することも可能です。個人のPCを持っていないなどの場合にも対応できます。
  • 複数の設問パターン:毎年受検される場合、設問パターンを変更して、受検することが可能です。現在は3パターンございます。お申し込み単位でパターンの指定を承ります(無料)。

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オーダーメイド・アセスメント

当社のコンサルタントが、貴社の課題感や役割要件やご要望を把握して、問題解決につながるアセスメント(評価項目に基づくスキル・意識の数値化)を企画、実施まで支援します。設問や結果レポート、配点調整なども要望に応じてカスタマイズします。

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昇格論文評価サービス

所定の課題に対する提出論文を通じて「組織運営に関わる知識」や「考え方」を評価します。評価項目にそって弊社の経験豊富な講師が、採点・講評するため、客観性の高いアセスメントです。評価シートは事前にご確認いただき、採点基準をすり合わせてから実施します。

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セットでおすすめの研修・サービス

人事面談代行サービス

人事担当者および上司に代わって、社員の面談を実施するサービスです。担当者さまの負担軽減と、相談者が抱える問題の解決を叶えます。第三者が面談を行うことで、社内では把握しきれない従業員の「本音」や、会社に話しづらい「悩み」を引き出しやすくなります。

また、面談で現れた課題をもとに、インソースの様々なサービスと連携することで、多角的なご支援ができます。会社で発生する様々な問題の未然防止や解決をサポートいたします。

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【アセスメント研修】次世代リーダー研修~自身の強みと課題を知り、キャリアアップする(2日間)

本研修では2日間の研修を通じてリーダーとしての強みや課題を把握し、それらを踏まえて自身のリーダーシップの確立や苦手の克服を目指していただきます。必要なマインドやコミュニケーションスキル・業務管理の手法を学び、リーダーとしての素地を強化します。

上記と並行して、チームディスカッションやビジネスゲームでのアウトプットを課題探求性・チャレンジ・完遂性・協働性からなる8つの項目からアセッサーが評価することで、知識の定着度合いや応用力・自身の思考の特徴を客観的に評価します。研修後には、「個人ごとの強み」および「改善すべき事項」を記載した個人評価シートをお渡ししますので、行動変容や能力開発につなげることができます。

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360度評価アセスメント

人事評価制度において活用されることが多い360度評価(多面評価)を、人材育成に昇華させたアセスメントサービスです。評価を受ける被評価者は、自己評価と他者評価を比較することで、自分では気づいていなかった強みや改善点を知り、自ら行動変容を起こせます。

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