回転率が変わる!デキる人のバッシングを店舗の仕組みに変えるには

ピークタイムになると、料理は出ているのに席が回らない。ホールは動いているはずなのに、なぜか次のお客さまを案内できない。その違和感の正体は、多くの場合バッシングの質にあります。食事が終わった食器を下げたりテーブルを片付けたりするバッシングは、目立たない業務ですが、回転率と直結する重要な工程です。
本コラムではできるひとのバッシングのやり方を現場レベルまで分解し、慣れないメンバーが陥りやすいミス、そして店長のバッシング指導のポイントを具体的に解説します。属人化しがちな業務を、誰でも再現できる形に落とし込むことを目指します。
バッシングは回転率に直接影響する
バッシングは、単なる片付けではなく売上に直結する工程です。特にピークタイムにおけるバッシングの質は、空席の時間や待ち時間を左右し、売上とスタッフの余裕に直結します。この章では、バッシングが回転率にどう効いているのかを整理します。
空席はあるのに売上が立たない時間が生まれる
飲食店の回転率は、来店数や調理スピードだけで決まるものではありません。テーブルが空いてから次のお客さまを案内できるまでの時間、つまり空席が売上に変わるまでのリードタイムが大きく影響します。そのリードタイムを左右しているのがバッシングです。
バッシングが遅れると、下記といった負の連鎖が起こります。
- 空席があるのに案内できない
- 待ち時間が長くなり入店を断念される
- スタッフが焦り、接客品質が下がる
これは単なる片付けの遅れではなく、機会損失の発生にほかなりません。
できるひとはバッシングを次の売上準備と捉えている
仕事ができるスタッフは、バッシングを片付け作業とは考えていません。次の注文を生み出すための準備工程と捉えています。その意識の違いが、動き方の差となり、回転率の差として現れます。
「移動の質」を見直してバッシングを最適化する
バッシングの速さや正確さを高めるには、テーブルでの作業だけではなく、厨房や洗い場とのあいだの「移動の質」を見直すことが欠かせません。できるスタッフは、一度の移動でどれだけの仕事を完了できるかを常に考えています。
良い動線とは最短距離ではなく仕事量を増やす設計
バッシングが上手いメンバーは動線を意識した行動をとっています。単に近道を選んでいるというわけではありません。実は一度の移動の中で、いくつの仕事を同時に完了させられるかという視点で動きを組み立てています。
例えば、テーブルの食器を下げる際、テーブルから下げ台、下げ台から洗い場と単純に往復するだけでは、移動は一つの仕事にしかなりません。
下げる途中で周囲の空席状況や料理提供の進み具合を目視し、次に空くテーブルを把握しておいたり、通路の中央ではなく壁側やサービスステーション沿いを通ることで、他スタッフとぶつかりにくく動線が詰まらせないようにと配慮していることが少なくありません。このように、常に移動そのものに複数の仕事を組み込めるメンバーがシフトにいると、営業全体の流れが安定します。
中間バッシングを最適化することで、最終バッシングを楽にする
できるひとは、すべてを一度に片付けようとしません。お客さまが滞在中でも、不要になったグラスや小皿を先に下げる中間バッシングを怠らず、最終バッシングの負荷を下げます。これにより、会計後すぐにテーブルリセットへ移行でき、お待たせしているお客さまの案内時間が短縮されます。
無理のない量を安定して運ぶための具体的な動作
バッシングのスピードを上げようとして、一度に多くの食器を抱え込むと、かえって全体の流れを滞らせる原因になります。
多く運ぶより崩れずに運ぶことが結果的に早い
慣れないメンバーほど、一度にたくさん運ぼうとして動きが止まります。食器を落とす、視界が遮られる、周囲に気を取られて歩くスピードが落ちる。結果として全体の流れが滞ります。もしも手を滑らせてグラスや食器を床に落として割ってしまった場合、高揚感に包まれていた店内の雰囲気を悪くし、お客さまにけがを負わせる可能性や時間のかかる割れ物の片付けなどの別業務を生じさせます。
頼れるバッシャーは、こうした不要なリスクを顕在化させないよう、安全とスピードの両立ができる適正量をしっかりと見極めています。
両手の役割を決めることで安定感が生まれる
具体的には、下記のような役割分担をします。
- 利き手でない側に大皿や重い食器を重ねて支える
- 利き手でグラスや軽い小物をまとめる
皿は縁ではなく底面を支えることで安定し、グラスは指の間に挟むことで滑りにくくなります。視線の高さを超えない量に抑えれば、周囲の状況も確認しやすくなります。
ワゴンやトレイは置き方まで含めて技術として教える
バッシングワゴンやトレイを使う場合も同様です。重いものは中央、軽いものは外側に配置し、重心を中心に寄せます。これによって移動時の揺れが減り、歩くスピードを落とさずに済みます。
慣れないメンバーが陥りやすいバッシングのミス
新人や慣れていないメンバーは、バッシングの全体像が見えておらず、目の前の食器を片付けることだけに意識が向きがちです。
優先順位が分からず動きが止まる
新人スタッフに多いのが、どのテーブルからバッシングに入るべきか分からず右往左往してしまうケースです。できるメンバーは、次に案内できるテーブルをつくることを最優先に考えますが、この視点が共有されていないと、目についた近くの、あるいは片付けやすい場所からつい手を付けてしまいがちです。
洗い場との連携不足で下げ台が詰まる
バッシングと洗い場の連携が取れていない現場では、下げ台がすぐに満杯になります。置き場がなくなり、ホールスタッフが立ち往生する。これが回転率低下を招きます。
店長のバッシング指導のポイントは仕組み化
バッシングは、現場任せにすると属人化しやすい業務です。店長が意図的に「判断基準」と「ルール」を言語化しない限り、できるスタッフのやり方はなかなか共有されません。
動きをただ見せるだけでは再現されない
「あの子のやり方を見て真似して」とベテランスタッフの動きを見せるだけの指導では、なぜそう動くのかの理由、何が良いのかがじゅうぶんに伝わりません。店長が伝えるべきなのは、個別具体的な片付けの順番や量ではなく判断基準です。
洗い場との連携はルールで揃える~全員の力を底上げする決まり
- 下げ台が一定量を超えた(例:全体面積の7割が埋まった)ら優先的に洗う
- ピーク時はシフトメンバーの役割を固定し、バッシャーと洗い場担当を1名ずつ作る
例えば上記のようなルールを設けることで、感覚に頼らない連携が可能になります。声掛けの言葉を揃えるだけでも、重複作業は大きく減ります。
バッシング改善は人材定着と業績向上の両方に効く
バッシングのやり方が揃うと、忙しい時間帯でも現場に余裕が生まれます。これは回転率向上だけでなく、スタッフの心理的負担軽減にもつながります。
バッシングは地味な業務ですが、回転率を左右する重要な工程です。できるスタッフのバッシングのやり方を分解し、仕組みとして共有することで、慣れないメンバーのミスは確実に減らせます。小さな改善を積み重ねて、活気ある働きやすい職場と、儲かる営業を実現しましょう!
外食業界向け研修・サービス
中食サービスへの拡大やトレンド食材を使った商品のような年々変わり続ける消費者ニーズに沿った事業開発のほか、店舗オペレーション負担を軽くする仕組みづくりも重要です。
店長・総合職のマネジメントスキル向上プログラム、パートタイム勤務のアルバイト向け研修も多数ラインナップしています。
加えて、DX推進や生成AIの活用による業務の効率化、離職を防ぎ従業員の定着率を高めるエンゲージメント向上策、多様化するインバウンド需要への対応など、現代の課題に即した研修も豊富です。CS(顧客満足)向上と組織力の強化を同時に実現し、現場の持続的な成長を支えるトータルな支援体制を整えています。
セットでおすすめの研修・サービス
【飲食・小売店_店長・店舗責任者向け】クレーム対応後の部下指導
クレームが発生した後、何となく店内が張り詰めたままの雰囲気になっていることはありませんか。
本動画は、起こってしまったクレームに前向きに向き合い、部下を守りつつも店舗の信頼を維持するためにどんな指導をすればよいのかを学びます。責任を押しつけたり、叱責だけで終わることなく、メンバー全員が「良い店舗づくり」に参画できるように導きます。
電話応対研修~飲食店スタッフ向け
ともすると作業的になりがちな飲食店スタッフの方に、顧客満足の視点をもって、自店の業務知識(メニューや料金)を整理し、電話応対スキルの向上をしていただきます。
飲食店のよくある事例など取り上げることで、一般的な電話応対研修より、さらに内容を理解しやすい研修となっております。
EC時代の接遇力向上研修~「対面」ならではの価値を提供する
ネットの利用が増え、現場でもデジタル化が進む中、対面接客における顧客のニーズが多様化しています。本研修では、そんな中で店舗での顧客満足度(CS)を向上させる方法を学びます。
デジタル化が顧客とCSに与えた影響をお伝えし、顧客が価値を感じる接客のポイントを解説します。また、顧客のニーズ別に事例を通じて理想的なCSを考えるワークでは、接客方法や店員の役割がどう変化しているかを学び、対面接客のレベルアップを目指します。



