「セル結合するな」は常識?非常識?AI時代に知っておきたい、Excel本来のデータリテラシー

「セル結合は絶対にしないでください。」
ある日、職場で若い上司からそう言われました。50代の筆者は思わず聞き返してしまいました。なぜなら、セル結合はExcel操作で長年慣れ親しんだ機能。社会人になって最初に覚えたOA操作の一つだったからです。
「タイトルを中央に配置する」「部署名を横いっぱいに表示する」「見積書や顧客名簿、住所録を見やすく整える」。セル結合は見た目をきれいにする便利な機能として教わり、表を作成する業務では当たり前に使っていました。だから、「セル結合はするな」と言われても、正直なところ戸惑いました。それって上司の好みなんじゃ?と思ったのです。
人が見やすい表とシステムが読める表の決定的な違い
その後、上司に理由を聞いたり、関連する記事を読んでみたり、いろいろと調べるうちに、意外なことがわかったのです。それは、Excelの常識が変わったのではなく、世の中のITリテラシーが向上し、ようやく「本来の使われ方」ができるようになったということでした。
「印刷して完成」だった時代のExcel作法~なぜ昭和・平成の現場でセル結合が重宝されたのか
筆者がExcelを使い始めた30年ほど前、世の中全体のITリテラシーは決して高くありませんでした。Excelは本来データを計算・処理するためのソフトですが、当時はその高度な機能を使いこなせる人が少なく、見積書や顧客名簿などを整える「ワープロ代わりの清書ツール」として使われていました。グラフを作って提案書に貼り付けたり、見た目が美しい帳票を印刷したり、そんな使い方が中心だったのです。
例えば顧客名簿なら、「姓」と「名」の上に「氏名」とセル結合した見出しを置く。タイトルはセル結合して中央揃えにする。 それは当時はごく普通の作り方でしたし、今でもそういうExcelファイルはたくさん残っています。セル結合は「見た目を美しくする便利な機能」として重宝したのです。
ところが、今の時代は違います。世の中全体のITリテラシーが高まったことで、Excelは本来の「データを扱うソフト」として正しく活用されるようになりました。売上データを分析する、ピボットテーブルで集計する、Power Queryで加工するといったような使い方です
最近では、生成AIにExcelを読み込ませ、「このデータから傾向を分析して」「改善案を考えて」とお願いすることも増えてきました。
つまり、人が紙で見るためのExcelから、コンピューターやAIが読み取って高度な処理を行うためのExcelへと、私たちのリテラシーが追いついたのです。
「見るツール」から「集計・AI連携ツール」へ~Excelに求められる役割の劇的変化
本来のデータソフトとして使うようになると、昔は便利だったセル結合が、一気に困りものになります。セル結合があると、次のような問題が出てきてしまうのです。
- 並べ替えができない
- フィルターが正しく動かない
- データとして読み込みにくい
- AIが表の構造を正しく理解できない
人間には見やすくても、コンピューターには非常に扱いにくいものになってしまいます。
総務省も指定~行政データの「機械判読可能」ガイドラインが示す標準ルール
かつて「帳票印刷ツール」としての教育を受けたシニア世代がセル結合を使ってしまうのは無理もありません。昔は、それが当時のリテラシーに合った教育だったのですから。
しかし現在、Excel教育そのものが、時代のリテラシー向上に合わせて変わってきています。たとえば高校の「情報Ⅰ」という科目では、Excel本来の姿であるデータベース活用の知識やデータ分析を学びます。
さらに驚くべきは、「セル結合をしない」というルールが、エンジニアだけのこだわりではないということです。
総務省が公表している「統計表における機械判読可能なデータ作成に関する表記方法(※)」には、明確に「セルの結合をしていないか」と記されています。
つまり、国が定めるデータの扱い方も、人ではなく機械が読み取れることを前提に作ることが求められているのです。「セル結合をしない」は、もはや個人の好みや流儀ではなく、データ活用時代の基本ルールと言えるでしょう。
出典:統計表における機械判読可能なデータの表記方法の統一ルール https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01toukatsu01_02000186.html
(最終アクセス:2026/7/31)
組織のデータ活用は個人のリテラシー・アップデートから~Excel標準化から始めるDX
再就職したシニア世代や、事務職のパート・アルバイトとして働く方の中には、「セル結合がダメ」と言われて戸惑う人も少なくないでしょう。しかし、どちらが正しい・間違っているという話ではなく、世の中全体のITリテラシーが高まり、Excelを本来の姿で使えるようになったというのが本当のところなのです。
今や、見やすい書類を作成することに加え、データを蓄積し、分析し、AIや他のシステムと連携することが求められる時代になりました。これからは「データとして活用できるExcel」へと、OAスキルを切り替えていく必要があります。
セル結合をやめることは、小さなことのように思えるかもしれませんが、AI時代のExcelリテラシーそのものです。昔の常識を少しアップデートするだけで、組織のExcelがDXへの架け橋になります。
とはいえ、データベースでない帳票印刷用シートにはこれからもセル結合機能は使われていくことでしょう。文書作成ガイドラインとしてExcelの使い方を整備し、組織の文書作成ルールを標準化することをおすすめいたします。
(50代以上限定)Excel応用研修~VLOOKUPなどの関数やグラフ、ピボットテーブルを学ぶ
本研修では、Excelの基本操作を身につけている50代以上の方を対象に、 ①エクセルの操作をより効率的に進める機能 ②エクセルを利用したデータ整理・分析・自動処理の方法 の理解を深めていただきます。
よくあるお悩み・ニーズ
- 関数を活用して、より簡単にデータを整理したい
- 事務職の仕事に必要な、Excelの応用的な操作やマクロの基本知識を身につけたい
本研修のゴール
- 用途に応じた関数を選び、データの参照や加工ができる
- 「条件付き書式」「グラフ」「ピボットテーブル」を使用し、視覚的な資料作成ができる
- マクロの動かし方を理解し、実際の業務での活用方法を考えることができる
セットでおすすめの研修・サービス
データリテラシー醸成シリーズ
DX時代を生きるビジネスパーソンにとって、必要不可欠なスキルであるデータリテラシー。しかし、何をどのレベルで身につければよいのかと、と悩む人が多いのも事実です。
データリテラシー醸成シリーズは、データアナリストやデータサイエンティストといった専門家を目指すわけではないが、自身の業務にデータドリブンな考え方を取り入れていきたいと考える方向けに「データ収集力」「データ読解力」「データ分析力」「データ活用力」の4つのテーマで構成されたシリーズです。
(半日研修)ChatGPT×Excel研修~身近なExcel業務から始めるAI活用
Excel(エクセル)を使い始めてすぐの頃は、関数をいくつか知っていても、現実の複雑なケースにうまく対処するのは難しく感じるものです。本来は時間と経験を重ねて身につけていくExcel技術ですが、生成AIの活用によりその時間を大幅に短縮して、質の高いアウトプットにつなげることができます。
本研修では、ChatGPTを用いてExcelの困りごとを解決したり、自身のスキルを向上させたりする方法を学びます。使用する関数に迷ったときやうまくいかなくなったときのChatGPTへの質問の仕方など、ケーススタディを通じて実践しながら身につけていきます。





