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非正規依存の飲食店を辞めにくい職場へ~統計が示す「人手不足構造」と育成の新しい捉え方

日本国内の多くの飲食店では、パートやアルバイトなどの非正規スタッフの活躍があって初めて成り立っています。その多くの店舗に「採用してもすぐ辞める」「人が定着しない」といった悩みがあり、人手不足は慢性化しています。

なぜ彼ら・彼女らは「続けたい」と思えず店を離れてしまうのか。そして、どうすれば飲食店が「この店で頑張りたい」と思われる職場になれるのか。本コラムでは、統計データと現場視点を交えて、店長・責任者が今すぐ取り組める長期で活躍できる新人育成の設計図を示します。

飲食店に「定着対策」が強く求められる理由~入りやすく、離れやすい

すぐに労働力化できる業界:初めても、再チャレンジも

以下の統計からもわかるとおり、これまで働いた経験のない方(もしくは、しばらく働くことをお休みしていた方)が最初に挑戦してみようと思うのが、宿泊・飲食・小売の仕事です。

コンシェルジュやシェフ、板前といったいわゆる専門職は別ですが、ルームキーピング・ホール・品出しなどの仕事は店舗運営に不可欠な、でも長期間にわたるトレーニングを必要としない仕事です。入職のハードルが低いこと、ピークタイムとアイドルタイムの繁忙の差が大きいこと=学生や外国人スタッフが活躍しやすい、シニアや子育てに一区切りついた女性が短時間の社会人再デビューを果たしやすい業界といえます。

出典:総務省統計局『統計研究彙報』第80号(2023年3月)山口幸三「非正規雇用の動態」
(※赤枠は当社による強調)
https://www.stat.go.jp/training/2kenkyu/ihou/80/pdf/2-2-801.pdf(最終アクセス:2025/12/24)

いつまでも楽にならない「店舗運営」

厚生労働省の令和5年雇用動向調査では、飲食業界が属する「宿泊業、飲食サービス業」の年間離職率は26.6%に達しています。非正規雇用(アルバイト・パートタイム労働)者の占める割合の多い飲食・小売業では入職と離職が常に繰り返されており、ナレッジが個々人に蓄積されないまま、いつも誰かが誰かに仕事を教えながらなんとか店舗を運営している様子がうかがえます。

出典:厚生労働省『令和5年雇用動向調査結果の概況』(※赤枠は当社による強調)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/24-2/dl/gaikyou.pdf(最終アクセス:2025/12/24)

こうした状況下では、単なる採用活動、求人数を増やすというだけでは人材を確保・運営するのは限界があります。肝心なのは、採用した新しいメンバーが「この店で仕事を続けたい」と思える環境づくりと育成設計です。

新人が辞めやすい「本当の理由」を誤解しないために

飲食バイトが敬遠されがちな理由としてよく挙げられるのは、立ちっぱなし・忙しい・クレーム対応ありといったネガティブ要素です。しかし、多くの若手が飲食業でのアルバイトを敬遠したり、数回の勤務や1カ月などの短い期間で辞めてしまう本当の原因は、それらが発生して辛い思いをたくさんするかもしれないという不安を放置されたままであることです。

体力的な負担、素早くレベルの高いコミュニケーション、慣れない環境での緊張⋯⋯こうした不安に対して、事前のきちんとした説明やフォローがなく、実際の初日・初期に「やっぱりハードルが高い」という思いが確信に変わると、辞める決断に至りやすくなります。

雇用の流動性が高い状況では、より条件のよい別の業種や職場に流れてしまいやすく、「飲食店だから」ではなく「安心して働ける場所かどうか」が選択基準となる傾向が強まっています。したがって、人材採用や店舗運営の責任者は「メンバーが不安を放置せず安心を感じられるようにすること」を最優先に取り組むことが重要なのです。

店長・責任者が先導する「辞めたくならない職場設計」の4ステップ

ここからは、実践可能かつ現場的な観点で、新人を辞めさせないための具体策を紹介します。店長や責任者が主体となり、チーム全体で取り組むことで効果が高まります。

ステップ1.初日は業務より「安心感の設計」を最優先に

新人にとって勤務初日は非常に重要です。すぐに働かせることで戦力にはなっても、安心感がなければそのまま離職につながります。まずは店舗のルール説明、厨房やホールの流れの案内、先輩スタッフとの顔合わせなど、「この店でやっていけそうだ」と感じられる時間を確保します。声かけの練習や簡単な動きの観察も含め、あくまで見学と慣れを目的にします。

ステップ2.シンプルで使いやすいマニュアルと段階的業務設計

情報量が多すぎるマニュアルは、むしろ混乱の原因になります。最初の数日は、挨拶/料理番号の確認/テーブル番号の確認といった現場で即使える内容に絞ることで、新人が戸惑わず動き出せます。業務量も段階的に増やし、成功体験を重ねやすいように設計することで、達成感を得られるようにしましょう。

ステップ3.店長・責任者の声かけとフォロー体制を明文化

店長や責任者のコミュニケーションが、職場の雰囲気を左右します。たとえ忙しくても、短い言葉で構わないので「ありがとう」「よく頑張ったね」といったポジティブな声かけを積極的に。ミスがあっても責め立てず、「どうすれば防げるか」を一緒に考えることが大切です。また、新人には専任の先輩を割り当て、孤立させない仕組みをあらかじめ設計します。

ステップ4.定着につながる成長実感とチーム感の仕掛け

飲食の仕事には、新人でも早期に「できた、役に立てた」という実感を得やすい側面があります。初めて注文を取れた、料理を提供できた、忙しい時間帯をチームで乗り切れた――。こうした小さな成功体験を店舗全体で共有し、「自分の存在が認められている」と感じさせることが重要です。加えて、スタッフ同士の簡単な交流時間や、シフト後の声かけなど、仲間感を育てる時間を意識的につくると効果が高いです。

なぜ「未経験でも大丈夫」と求人票で謳うだけでは足りないのか

「未経験でも心配不要!」「人柄重視」「すぐ慣れる」といった飲食業で働くことの敷居を下げる求人は多く見られますが、安心さえあれば辞めないという保証にはなりません。特に現状では、非正規スタッフの奪い合い・流動性の激しさが常態化しており、待遇や職場環境を改善する店舗が増えれば、相対的に「今いる店」の価値が問われる時代です。

統計が示すように、飲食店の人手不足の根は深く、非正規への依存構造そのものが経営のリスクになっています。だからこそ、応募者に「未経験でも大丈夫」と語りかけるだけでなく、店側が受け入れ・育成の仕組みを整え、「この店で安心して続けられる、成長できる、信頼できる仲間がいる」という実感を与えることが必要です。このような安心と成長と所属感を合わせて提供できる店舗こそが、長く生き残れます。

統計×現場発想で「辞めたくならない飲食店」をつくる

飲食業は非正規スタッフに大きく依存しながら、毎年多くの人が入職と離職を繰り返す流動性の高い産業です。そのなかで採用や求人数でだけ勝負するのは、もはや限界があります。重要なのは、新人が「この店で続けたい」「ここなら、しばらく頑張れそう」と感じる職場環境と育成設計です。

本記事で紹介した4つのステップ

  1. 初日の安心感の設計
  2. 人段階的な業務とシンプルマニュアル
  3. 店長の声かけとフォロー
  4. 成長実感とチーム感の仕掛け

をひとつずつ実践することで、働き続けられる職場をつくることができます。これらの視点で自組織の「新人受け入れ体制」を見直すことが、ひいてはベテラン経験者も長く留まることのできる居心地の良さや、店長を目指したいと自己研鑽に励む人材を育てることにもなるのです。

(外食産業向け)会社のしくみを知る研修~収益アップのための管理指標を知る

外食産業のビジネスモデルや働き方、売上・利益の高め方を学べる1日研修です。

店舗業務が財務諸表のどの項目に現れるのか、FLコストに代表される主要な数字を改善するために何をすればよいのか、講義とワークを通じて具体化します。収益だけでなく資金繰りにも目を向け、多角的に店舗業務と会社の数字を捉えることで、視座を高め、適切な行動がとれるようになります。

よくあるお悩み・ニーズ

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本研修の到達目標

  • 外食産業のしくみやオペレーションを、目的や背景から理解する
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