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学生とシニアが同じ売り場でつまずく理由~小売店の世代間ギャップを「やりにくい」で終わらせない

少子高齢化と人手不足が進む小売業では、学生アルバイトとシニアスタッフの活躍が店舗運営を支えています。一方で、現場からは年齢の離れたメンバーと同じ売り場で働くとなんだか仕事がやりにくい、教え方や仕事の進め方が合わないといった声が絶えません。

本コラムでは、学生とシニア双方の言い分を整理し、世代間ギャップがなぜ摩擦になるのかを紐解きます。そのうえで、この問題を個人の相性や努力に委ねず、店舗責任者がどのように関わればメンバーの「年齢差によるやりにくさ」を軽減できるのかを具体的に解説します。

小売店・サービス業全体で顕在化する世代間ギャップ

学生とシニアが同時に働く現場が増えている背景

人材確保が年々難しくなる中、小売店では柔軟なシフトで働ける学生と、経験や安定した勤務が期待できるシニアの両方を戦力として活用する動きは広がっています。多様な人材構成は本来組織の強みとなるはずですが、現場では世代間の価値観や行動様式の違いが摩擦を生みやすくなっています。

「合わない人がいる」では済まされない理由

世代間ギャップを個人の性格や相性の問題として放置すると、注意や指示が伝わらず、ミスの増加や職場の空気を悪化させることにつながります。結果として離職が増え、店舗運営そのものが不安定になるリスクが高まります。これを個人の問題と放置するのではなく、職場設計とマネジメントの課題として捉える必要があります。

学生側が感じているやりにくさの正体

指示や注意が精神的な負担になる

学生アルバイトからよく聞かれるのが、シニアスタッフからの言い方、コミュニケーションの取り方がきつく感じられるという声です。本人に悪意はなくとも、端的な表現や過去の成功体験に基づく「POS入力はこうした方がいいよ」などのアドバイスが、学生にとっては自身の行動を否定されたように受け取られることがあります。

効率重視の感覚が理解されにくい

学生は、限られた時間で成果を出すことや、マニュアルどおりに進めることに慣れています。一方で、経験に基づく判断を重視するシニアのやり方に対し、なぜその方法で仕事を進めるべきなのかが理解できず、納得感を持てないまま作業をするケースも少なくありません。

シニア側が抱える不満と戸惑い

若手の受け身な姿勢への違和感

シニアスタッフからは、学生が指示待ちで主体性が感じられないという声が上がります。自ら考えて動くことが評価されてきた世代にとって、質問が少ない、意見を言わない姿勢は、やる気がないように映ることがあります。

これまでのやり方が通用しない焦り

長年の経験を持つシニアほど、自分のやり方に自信があります。しかし、マニュアルやデジタルツールを前提とした運営が増える中で、経験が活かしきれないと感じる場面もあり、それが不満や苛立ちにつながることがあります。

両者の言い分はどちらも正しいという前提に立つ

世代間ギャップは価値観の違いとして整理する

学生とシニアの主張は、どちらかが間違っているわけではありません。育ってきた環境や評価されてきた行動が違うため、仕事への向き合い方が異なるだけです。この前提を共有しない限り、相互理解は進みません。

個人同士で歩み寄らせる限界

現場ではお互いに理解し合おうと言われがちですが、立場や経験が大きく異なる両者に自発的な歩み寄りを求めるのは現実的ではありません。ここで重要になるのが、店舗責任者の介在です。

「やりにくい」を軽減する店舗責任者の具体的な役割

世代間ギャップによる摩擦は、当事者同士の努力だけでは解消しきれません。だからこそ店舗責任者には、単なるシフト管理や売上管理を超えた現場の関係性を設計する役割が求められます。

仕事の進め方と判断基準を言語化し、共通ルールに落とし込む

学生とシニアの衝突が起きやすい現場ほど、仕事の進め方が暗黙知になっているといえます。「見て覚える」「空気を読んで動く」といった前提は、世代や経験によって受け取り方が大きく異なります。店長が行うべきは、

  • なぜこの手順で行うのか
  • どこまで自己判断してよいのか
  • 迷ったときは何を優先するのか

といった判断基準を言葉にして整理することです。これにより、学生は納得感を持って動けるようになり、シニアも自分の経験を感覚ではなく論理的な解説として共有しやすわれます。ルールを明文化することは、誰かを縛るためではなく、誤解を減らすための仕組みです。

世代別の強みを全面に押し出せる役割設計を行う

全スタッフに同じ働き方を求めると、不満は必ず生まれます。店舗責任者は、世代ごとの特性を前提に役割を設計する視点を持つことが重要です。例えば、

  • 学生にはスピード感や新しいオペレーションへの適応力
  • シニアには接客の安定感や周囲への気配り

といった強みがあります。これらを踏まえ、学生にはピークタイムの補助や作業効率が求められる業務を、シニアには新人フォローや顧客対応を任せるなど、強みが活きる配置を戦略的に行うことで、互いへの不満は大きく減り、むしろそれぞれを尊敬する気持ちを育むことができます。

注意や指導は感情を挟まず、事実と期待値で伝える

世代間の溝が深まる大きな要因の一つが、注意や指導の場面です。シニアの率直な物言いが学生を萎縮させ、学生の曖昧な返事がシニアを苛立たせるといった構図は、どの小売店でも見られます。ここで店舗責任者がやるべきは、誰が悪いかではなく、何が起きているかに焦点を当てることです。

例えば、

  • 「やる気がない」ではなく「指示された作業が期限までに完了していない」
  • 「生意気だ」ではなく「報告が省略されている」

といった形で、事実と期待値を切り分けて伝えます。このようなフィードバックを責任者が率先することで、現場全体のコミュニケーションの質が底上げされます。

世代間の直接対立を緩衝するクッション役になる

学生とシニアを直接ぶつけて話し合わせることが、必ずしも良い結果を生むとは限りません。むしろ立場や経験の差があるからこそ、感情が先行してしまうケースも多くあります。店舗責任者は、両者の意見を一度受け止め、背景を整理したうえで伝え直すワンクッション役を担います。相手から否定されたと感じさせることなく、必要な改善点だけが共有されやすくなるように誘導するのです。

小さな成功体験を意図的につくる

世代間ギャップは一度の話し合いで解消するものではないはずです。うまくいった経験・事例がいくつも積み重なり、ようやく前向きなコミュニケーションの土壌が整います。

短時間の引き継ぎを一緒に行う、品出しのような役割を限定した共同作業を設けるなど、成功しやすい場面を責任者が創出することで、相互理解は少しずつ進みます。これを繰り返すことによって、双方のもやもやした気持ちややりにくいという感覚を薄めていきます。

現代のような変化の激しい時代において、絶対的な正解というものは存在しません。状況に応じて最適解を導く力が求められます。若手が曖昧さに向き合い、自ら判断し行動できるようになるために、人事部がどのように育成を設計すべきかを具体的に整理したコラムもぜひお読みください。

>コラム「白黒思考の若手VSグレー思考のベテラン」はこちら

(半日研修)エイジダイバーシティ推進研修~年齢・世代を問わず活躍できる組織作り

多世代のメンバーが同じ職場で働くことで、多様な視点がもたらされるメリットがある一方で、現場では世代間の価値観の違いによる軋轢が生じてしまう場面も見られます。本プログラムでは管理職を対象に、世代と価値観のギャップを乗り越え、チームとしてどのように価値を生み出していけばよいのかの習得を目指します。

よくあるお悩み・ニーズ

  • シニア人材と若手社員の間に壁があり、コミュニケーションがうまく取れていない
  • 自分とは異なる世代をマネジメントすることに苦慮している
  • 世代の違いにより、お互いの前提が異なるために軋轢が生じている

本研修のゴール

  1. エイジダイバーシティ推進が今なぜ求められているのか理解する
  2. 自身の思い込みに気がつき、他世代の視点を意識して、物事を捉えることができるようになる
  3. エイジダイバーシティ推進の鍵を握る若手・シニア人材をどう生かすかを学ぶ

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セットでおすすめの研修・サービス

一人ひとりの特性と組織全体の傾向を「見える化」giraffeアセスメント

オンラインで114問の設問に回答いただくことで一人ひとりの特性や個性を見える化するアセスメントツールです。組織全体としてどんな特性の傾向が強いのか、人材のバランスとあわせて可視化することで、自組織で活躍する人材像を分析することができます。

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管理職向けコミュニケーション研修~シニア人材と良好な関係を築く編

シニア社員とともに働く管理者、現場リーダー、管理職の方に向けた研修です。

シニア社員の直面するキャリアトランジションや、コミュニケーションで陥りがちな課題を理解し、 実践形式で「日常のコミュニケーション」「効果的な面談」についてのスキルを習得していただきます。相手に変わってほしいと訴えるばかりでなく、自らの接し方を見直していただき、お互いが組織の目標に向かって協力し合える関係になることを目指します。

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>講師派遣型研修の詳細はこちら

店長向け研修~店舗を成長させるマネジメント編(1日間)

店長として店舗を成長させるためのマネジメントスキルを習得します。具体的には、リスクマネジメントやスタッフなどの部下を動かす指導・教育のポイント、クレームへの対応、目標管理のポイントを学んでいただきます

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