白黒思考の若手VSグレー思考のベテラン~曖昧さへの耐性を高め最適解を導ける人材を育てる

曖昧さを許せず、白黒をはっきりさせたいという傾向は、若手社会人によく見られる特徴です。心理学では全か無か思考(all-or-nothing thinking)、一般的にはゼロひゃく思考(0-100思考)などとも呼ばれ、極端な結果を求めてしまう思考の癖を指します。経験の浅い若手は「正解か、それ以外(失敗)か」という基準で物事を捉えがちです。そのため、間違えることへの恐れから判断を保留したり、責任回避のために細かな指示を求めたりする傾向が強まります。
一方で、経験豊富で幾度となく他部署やステークホルダーとの調整に臨んできたベテランは、白黒をはっきりとつけて言い切ることが少なくなります。このギャップが、時に両者の間で対立が起こる要因になっている可能性があるのではないでしょうか。
現代のような変化の激しい時代において、絶対的な正解というものは存在しません。状況に応じて最適解を導く力が求められます。本記事では、若手が曖昧さに向き合い、自ら判断し行動できるようになるために、人事部がどのように育成を設計すべきかを具体的に整理します。
若手が曖昧さに弱い理由は?育成の出発点を揃える
白黒思考が強まる背景:判断基準を確立できないことが極端な考えや慎重な行動につながる
若いうちは経験が少なく、判断基準を自分の内側に持てていないため、物事を正解と不正解の2分類で捉えがちです。成功体験が限られ、判断ミスがそのまま自己否定につながると感じやすいことも、この思考を加速させます。曖昧さへの耐性が低い状態では、自分は正しいという思いと、間違えたくないという心理が同時に働き、極端な結論に走ったり慎重過ぎる行動をとるなど、安定しません。
VUCAの時代は白黒の判断軸が通用しにくい
変化が常態化した現代は、正解が固定されない環境です。同じ業務でも状況によりベストな対応が変わるため、白黒思考では対応しきれません。若手の特性を理解しつつ、状況に応じて解が変わる環境に慣れてもらうことが人材育成の重要なポイントになります。
若手とベテランの曖昧さギャップを埋めるために、人事が果たす役割
若手は白黒をはっきりさせたい一方で、中堅層以上のベテラン社員、上司は状況次第で判断を変えることが多く、この差が職場の摩擦につながります。両者は異なる価値観で仕事を捉えており、どちらが悪いわけでもありません。重要なのは、このギャップを放置しないことです。人事部は、若手と上司の認識の差を可視化し、職場全体で曖昧さを扱える環境に整える役割を担います。
若手と上司では「曖昧さ」を捉える前提が違う~揺らぎは矛盾?調整?
先ほど述べたとおり、若手は経験が浅く判断材料が少ないため、明確な基準を求めことが多いです。正しいか誤りかがはっきりしているタスクの方が安心でき、迷いが少ないからです。対して上司や中堅層は、状況によって結論が変わる場面を数多く見てきており、同じ事象であっても判断の幅を広く捉えています。年数とともに「グレーであることが当たり前」と理解していきます。
この前提の違いが、指示の受け取られ方に影響します。例えば上司が状況を踏まえて柔軟な判断をしたつもりでも、若手には「さっきと言っていることが違う」と映ることがあります。若手は揺らぎを矛盾と捉え、上司は揺らぎを調整と捉える。このズレが曖昧さギャップの出発点となります。
判断が属人的に見える理由は「説明量の差」にある
若手が曖昧さを負担に感じるもう一つの理由は、判断の背景が共有されていないことです。経験豊富なベテランほど、頭の中で複数の要素を同時に考えながら結論を出していますが、そのプロセスが伝わらないため、表面的な結論だけを見た若手は「その判断は上司の好みではないか」と誤解してしまいます。
実際には、上司は組織の方針や顧客の状況、過去の事例など多くの根拠に基づいて判断しています。しかし、それらを言語化しないまま指示が落ちると、若手は判断の理由を理解できず、曖昧さへの耐性も育ちにくくなります。
判断の背後にある思考を共有するだけで、若手の納得度は大きく変わります。
曖昧さギャップを埋めるコミュニケーション設計を人事が仲介する
曖昧さの差異を解消するためには、若手に曖昧さを受容させるだけでは不十分で、先輩や上司側のコミュニケーションにも改善が必要です。人事部は、職場におけるコミュニケーションの段差を整える役割を持ちます。
具体的には、上司が判断した理由や基準を言語化する習慣を組織に根づかせることが効果的です。判断プロセスを共有してもらうことで、若手は状況に応じて結論が変わる理由を理解でき、曖昧さを過度に恐れなくなります。また、若手側にも自分の理解不足を率直に質問できる雰囲気づくりが必要です。双方向のコミュニケーションを支える枠組みをつくることで、曖昧さへの耐性は自然と高まっていきます。
さらに、会議体やOJTの場において、結論だけでなく「なぜその結論に至ったのか」を説明するプロセスを形式化すると効果があります。属人的な指導や偶発的な学びに頼らず、職場全体で学習の機会を提供できるようになります。
まとめ〜曖昧さへの耐性が未来の人材をつくる
若手が抱える白黒思考や正解志向は成長過程の自然な特性です。しかし変化の激しい時代では、状況に応じた最適解を導く力が求められます。人事部が果たすべき役割は、白黒にすべき領域とグレーの領域を整理し、判断経験を積む機会を体系的に設計することです。曖昧さに向き合える若手は組織の将来を支える存在になります。
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