管理職は何をマネジメントするのか?

「はじめて管理職になった時に、何をどうしたらいいのだろうか?」と悩んだ経験を持った方や、不安に思っている昇格間近の方々もいらっしゃるのではないでしょうか。ここでは、管理職が管理すべきことについてお伝えいたします。
- 目次
求められる最大の役割は、マネジメント
管理職でない人は基本的に、自分の与えられた業務をしっかり遂行することが大切です。その他、管理職のサポートをすること、後輩の面倒を見ることなどもあります。これらの点が合格点に達していれば、管理職に昇格する可能性が高いのではないかと思われます。営業職であれば、営業成績が良ければそれだけで昇格することも十分にあり得ます。
一方、管理職の業務は、マネジメント、つまり管理です。自分の担当業務を持ちながらマネジメントを行うプレイングマネジャーにしても、求められる最大の役割は、マネジメントです。
「名選手は名監督にあらず」
「名選手は名監督にあらず」という言葉があるように、プレイヤーとして優秀な人でも、管理職としては能力を発揮できないこともあります。これは、管理職自身が、「プレイヤー」と「マネージャー」について、役割と求められる能力が根本的に違うと理解していないことに起因します。
それでは管理職は何を管理すればいいのでしょうか。
細かい管理項目を挙げたらきりがありませんが、大きくはたった3つです。難しく考えることはありません。以下の点だけきちんと行えば、十分なマネジメントができるようになります。
業務マネジメント
1つ目は、「業務のマネジメント」です。自部署の業務マネジメントを行うには、以下のことを継続して行います。
・会社目標に則った部門(部署)目標を設定する
・部門目標を達成させるための具体的な施策をいくつかあげる
・諸施策について、誰がいつまでにどのように展開するのかを明確にする
・施策の進捗を週次でフォローする
・部下一人ひとりにも「週間計画表」を提出させ、きちんとチェックする
この中で最も重要なことは、「週間計画表」であると考えます。週間計画を立て続けることによって、業務の「整理」「棚卸」の習慣が身に付く、業務の中での「考える」癖を体得できるなど、得られるものは非常に大きいです。
人材マネジメント
2つ目は、「人材のマネジメント」です。「人材マネジメント」というと、漠然としすぎていますが、具体的には以下の3点です。
・部下の育成を行うこと
・部下の評価、査定を適切に行うこと
・ 部下のモチベーションを保つこと
部下の育成と評価、査定についてのポイントは、「業務目標」と「能力開発目標」を設定し、そのプロセスを月次でフォローしていくことです。つまり、個人目標の「PDCA」を行うことです。これは前述の業務マネジメントとほとんど変わりありません。目標管理の目的は、上司の視点からは「部下の人材育成」になりますが、部下本人の視点に立てば、「成長実感」を持つことと言えます。目標達成に向けて努力することが、成長をもたらします。
目標のないところに成長もありません。部下本人が成長実感を持つことができるか否かは、本人のパフォーマンス、モチベーションに大きく影響を及ぼしますので、要注意です。部下のモチベーションを維持することは、様々な要素が絡んでいるため、一筋縄にはいきません。そのポイントは、「日頃、部下をよく見ること」に尽きます。
・常に部下の表情、顔色、言動に気を配り、アンテナを張っておくこと
・上司があまり気難しい表情はしないこと、オープンな態度でいること
・目標管理をきちんと行い、自分の評価は明確に伝えること
・部下の強み、弱み、性格をきちんと把握すること (人を見る眼力を養うこと)
・大勢に影響のない部下の失敗は大目に見てやること (逆の場合は、きちんと叱ること)
・成果を出した部下にはきちんと報いること
リスクマネジメント
3つ目は、「リスクマネジメント」です。管理職は、普段の業務が忙しいがゆえに、リスクマネジメントをなおざりにしがちですが、常にリスクを念頭に置きながら業務を遂行しなければなりません。リスクを考えられない人は管理職になってはいけません。リスクマネジメントは以下の点がポイントになります。
・業務の中でのリスクを洗い出すこと
・リスク、トラブルが発生したら、マネジャー自らが解決に当たること(逃げないこと)
・悪い情報ほど早く伝えることを部下に徹底すること(人に迷惑をかけたくないという思いで、自分だけで解決しようとする人がいるが、正しい問題解決手段としては全く逆)
当たり前のことを当たり前に
以上3つのマネジメントについて述べてきましたが、マネジメントの要諦はさほど難しくないと感じられたのではないでしょうか。言葉で書かれたことを「認識」することは簡単ですが、それをきちんと「理解」し、自分の体の中に「血肉化」することは簡単なことではありません。そのためには、当たり前のことを繰り返すこと以外にはありません。
おすすめリンク
関連記事
■関連記事一覧
-
-
更新
マネージャーは「堂々している」と見られるべきか|新任マネージャーの方法論7
マネージャーは、常に堂々としている必要はありません。「管理職」や「経営者」はある組織の中での役割であって、その役割を果たすために最適なふるまいができれば十分です。一方で、今すぐできる対策を求めている方には、「外見に『よろい』を着る」方法がお勧めです。
-
-
-
更新
マネージャーとしての上手な話し方・説明の仕方|新任マネージャーの方法論6
マネージャーが身につけるべき「分かりやすく伝わる話し方」の方法論を解説。聞き手にキーワードがすっと入る話し方や1分間200字のトーク練習、資料3割を話すテクニック、良い「間」の取り方まで具体的に紹介します。
-
-
-
更新
チームのベクトルをそろえる~8つのステップ|新任マネージャーの方法論5
マネージャーとしてチームのベクトルを揃えるための8つのステップをご紹介します。重要なのは、メンバーの小さな成功や達成感を実現する準備をすることです。ベクトルが揃うから勝てるのではなく、小さな成功や達成感が、結果としてベクトルを揃えていくのだと思います。
-
-
-
更新
マネージャーとして仕事をスタートさせる~さまざまな確認|新任マネージャーの方法論4
新任マネージャーとして着任した場合、まず「社内ルール・マニュアル」「業務フロー」「仕事の深さ」の3点について確認を実施する必要があります。自分の中の常識と、現場の仕事の仕方や常識をすり合わせていくようにします。
-
-
-
更新
マネージャーとして覚悟を決める|新任マネージャーの方法論3
マネージャーとして部下を率いていくためには、スキルや経験も当然ながら大事ですが、精神力、もっと言えば「覚悟」が一番重要な気がします。覚悟がなければしんどいマネージャーの仕事はやり抜けないと思います。
-
-
-
更新
新しくマネージャーに着任した時はどうすればいいか|新任マネージャーの方法論1
「再現可能なチームマネジメント」について書いていきます。新任マネージャーが最初にやるべきことは、「自らのミッションや目標を確認する」「縦のラインに挨拶する」「引継ぎを受ける」「部下対応」「定期ミーティングを設定する」の5つです。
-
-
-
更新
あらためて知っておくべきマネージャーの役割と行動の基本|新任マネージャーの方法論2
マネージャーとは、組織の成果に責任を持つ者のことを言います。すなわち、「1円でも多くのお金を組織に残す」行動、これこそがマネージャーの行動原則です。職種にかかわらず、マネージャーはコストを下げるか、利益をあげるかを念頭に行動すべきです
-
-
-
更新
心理的安全性が若手の離職を防ぐ鍵~リーダーが変わることで「成長実感のある職場」をつくる
心理的安全性とは、チームの中で「自分の考えや感情を安心して発言できる状態」を指します。この安心感がなければ、人は挑戦せず、学びも起こりません。本記事では、若手社員の離職や成長と心理的安全性がどのように関係するかに焦点をあてて紹介します。
-
-
-
更新
やりっぱなしの教育から脱却~海兵隊式教育に学ぶ「即戦力」の育て方
米国海兵隊の士官養成トレーニング(OCS・TBS・IOC・PME)は、知識の徹底・実践・振り返りを重視する人材育成モデルです。本記事では、海兵隊式教育の構造をわかりやすく解説し、インソースがその考え方をもとに設計した研修プログラムを紹介します。
-








