松も外れて、街は個人生活から勤労生活に戻った人であふれる。寒さにめげずに働く人の背筋が眩しい。昔は長かった正月気分もすぐに直り、今は子供が正月遊びに集まる広場も少なくなった。それでも年頭の挨拶を耳にすると、気分も新たに次なる仕事に向かえる気になる。
昨今は男女に分けて言うことは避けられるようになったが、子供時代おもに女の子はお手玉や綾取りなど手指の器用な技、男の子はベーゴマやメンコなどの対戦に興じていた。いずれも保存団体や同好会によって続けられている。敵がいる対戦競技のメンコが面子(めんつ)と書くのも何だか面白い。古今東西子供から大人まで、争いは面子の戦いなのかも知れないと思わせる。
■それぞれの苦楽
俗諺で「苦髪楽爪(くがみらくづめ)」という言葉がある。仕事や生活に苦労が多い時や心に悩みを抱えている時は髪が早く伸び、楽をしている時には爪が早く伸びる、という意味だ。
同様に「苦爪楽髪」ということもある。美容や理容に心掛ける暇もなく生活に追われているからか。安楽に過ごしていると爪の先が減ることもないからか。今よりも身体を使う労働が多く、組織に勤める人が少ない時代の話だろう。今の時代は楽も苦も人それぞれ、肉体労働でもデスクワークでも、ストレスは誰にも起こり得る苦の代表になった。
髪や爪に健康状態が現れることは確かなことで、昔脚の手術をした後ベッドの周囲に驚くほど抜け毛が多くなったことがあった。清掃員が「皆さん術後は髪が沢山抜けますよ」と言っていた。確かに回復状態や社会復帰への不安などもあったし、爪にも段差が現れたが、さほどストレスを自覚していた訳ではなかった。同時期ストレスから帯状疱疹を発症した同病の若い人もいた。案外、ストレスの程度は自分では正しく把握できていないのかも知れない。
■科学的な診断
肉体労働ではなくても、またはだからこそ、たまにはストレス状態のチェックを第三者から受けた方が良いと思う。私の場合、自社で行うストレスチェックの結果は、大体「心配のない状態です」なのだが、本当かしら。悩みがない訳ではないのに。これはこれで何となく少し凹む。重圧の影響は、自分では判断できないということだろう。
ある程度のストレスは必ずしも悪いことではない。仕事の成果や自身の心的健康などの反省や成長のきっかけになることが多い。日々の出来事に一喜一憂する必要はないが、程よい緊張感が生まれる。日常のストレスから解放される休日や休暇によって、ON・OFFのメリハリがつき回復できる気がする。
■共通の不安
不順な天候・不安定な国際情勢、人手不足とAIの台頭、環境や生活の未来に関してヒタヒタと不安が押し寄せる。取り巻く社会の、真偽の判断・攻守の見解・進退の決定が曖昧になる時には、過激な正義や極端な正論・過剰な利点が眼を引きやすい。良い変化・成長の増殖につなげたいと誰もが思う時、明解な答えを急いで派手な英雄を歓迎しやすい。人心の不安を象徴するように、世間では怪談や占いなどが流行っているらしい。
不安の正体をつかむためには、悪口を並べ立てて何かのせいにするより、まず自分の軽薄な不備を修正したい。見つからない正解を求めたい時には、人間にとって何が大事かを考え直し、基本に帰って誠実に勉強し直そうと思う。苦を避けず楽に過ぎず、髪も爪も伸びるに任せず正気でいることを、気を引き締めて新年の計とする。こういう人に私はなりたい。
2026年1月5日 (月) 銀子




























