銀子の一筆

そこはかなきこと

立春を過ぎて日脚は伸びたが、日向を選んで歩いても頬に当たる風はまだ冷たい。しかし梅はほころび始め、民家の庭を横切る猫の足取りも心なしか緩やかだ。目にはさやかに見えねども、春は着実に進んでいる。急がず浮かれず日々を積み重ね、新しい計画に備えよう。


学校・職場など、同じ目的のために人が集合しているところでは、ルールもマナーも最大公約数に通じやすく標準化されている。ゆえに個性の発現には限度があるが、共有する歩調によって効率よく成果を上げやすい。ある集団や社会・またはある階層に属すと、そこの常識がいつの間にか身に付き発想や行動に一定の影響を与える。いわゆる社会性と呼ばれるものかも知れない。世の中は不特定多数の価値観の異なる人間の集合だと頭では分かっていても、別空間では異質に感じることも多い。

■驚くべきパワー

ほぼ同世代の人々とお茶を飲む機会があった。気候や物価・健康など当たり障りのない話題が進んでいた。返還が決まったパンダに会いに行くという人もいた。すると、向かい側の高齢女性が突然、衆議院選挙に触れ「○○さんを応援しなきゃだめよ。しっかり支えましょう。ね」と初対面の私に熱く同意を求めてきた。私がアルカイックスマイルのまま、答えないでいると、打てども響かぬ人と判断されたか、幸運なことに話は突然そこで終わった。もちろん日頃、具体的な依頼・勧誘があれば、明確に断っている。が驚いたのは、通常ビジネスやコミュニティなど公的社会で出会う人とアイデンティティに関わる政治・宗教の話をしないのは社会人の常識にもかかわらず、人生経験豊富なはずの高齢者の社会性に外れた言動だった。

■今どきの高齢者

大昔から続くいつの時代にも、きっと今どきの若者・最近の子供に関する大人の批判や評価はあったに違いない。でも、自身が高齢者になって初めて今どきの高齢者・最近の高齢者の傾向に出会った気がする。思い込みや一家言持つ人が多いのは昔と同じだが、妙に元気で明るく最新情報に通じていて、行動的だ。PCやスマホを自在に操る人も多い。自分で自分の限界を決めて老け込み、行動を自粛するよりいいことには違いない。私などは活発な同世代から見れば、偏屈な古いタイプの高齢者なのかもしれない。ま、いいけれど。



長い間、私は誰に対しても固定観念や先入観、アンコンシャスバイアスに囚われないように過ごしてきたつもりだったが、実は高齢者に対するステレオタイプの先入観があったのかも知れない。同世代の私でさえ、想定外の印象を受けるのだもの、他の世代が偏見や思い込みをもつのは当たり前なのかも知れない。改めて浅はかな自分に気がつく。悲しいかな、今日は元気な高齢者も一たび何かあれば定説通りの弱い高齢者になることも事実だが。


かと思えば、まったく世代の違う若者と気が合うこともある。やはり人間は、性別年齢に関わらず、個人対個人のご縁なのだ。
個人的に格別の仲良しという訳ではないが、顔を見ればうれしい気分になる人もいる。
職場やコミュニティではそんな淡交の人が多いと楽しい。
自分と他人、もしくは、自分の世界と他人の世界が違うことで、新しい発見があり勉強になることもあるし、少しの違いが大きな分断に繋がることもある。見えない境界線があることを忘れずに、不用意に立ち入らず相手の存在に敬意をもって穏やかに暮らそう。


2026年2月13日 (金) 銀子

もっと見る

記事一覧へ

関連読み物一覧

関連シリーズ一覧

関連商品・サービス一覧

各種コラム

人材育成関連

  • 人材育成ノウハウ ins-pedia
  • 人事・労務に関する重要語辞典 人事・労務キーワード集
  • 人気のメルマガをWEBでもお届け Insouce Letter
  • インソースアーカイブス
  • 全力Q&A インソースの事業・サービスについてとことん丁寧にご説明します
  • インソース 時代に挑む
  • 全力ケーススタディ 研修テーマ別の各業界・職種向けケース一覧
  • 新入社員研修を成功させる10のポイント
  • 研修受講体験記 研修見聞録
  • 人事担当者30のお悩み

仕事のスキルアップ

  • 上司が唸る書き方シリーズ ビジネス文書作成のポイントと文例集
  • はたらコラム はたらく人への面白記事まとめました
  • クレーム対応の勘所
  • 人事のお役立ちニュース

銀子シリーズ

  • 七十代社員の人生録 銀子の一筆
  • シルバー就業日記 銀子とマチ子
  • 人気研修で川柳 銀子の一句

開催中の無料セミナー

  • WEBinsource
  • 最新ニュース・記事

  • モンシャン