【トンデモアルバイター対策①】ロス捏造と勤務時間減らしにとるべき店長のアプローチ

「ロスをわざと作って食べようとする」「トイレに頻繁に立ち、現場にいる時間を減らそうとする」「お客さまからの声掛けに聞こえないふりをする」。現場でそんなとんでもない行動をするアルバイトに頭を抱えた経験がある店長も多いでしょう。
これらの行動は単なる怠慢や反抗心ではなく、インシビリティ(職場における無礼・軽視・不誠実な行動)やモラル意識の欠如といった深層的な問題に根ざしていることが少なくありません。本稿では、そのような行動が生まれる背景を分析し、店長やリーダーがどのように教育・指導すべきかを具体的に解説します。
なぜアルバイトは「とんでもない行動」をするのか
自分の行動を都合よく正当化する心理~モラル・ディスエンゲージメント
たとえば、廃棄予定の食材を「どうせ捨てるなら自分が食べても同じ」と勝手に調理して消費したり、頻繁にお手洗いに立って「少し休憩するくらいなら問題ない」と都合よく解釈したりするケースがあります。
こうした行動の背景には、自分の行為を正当化する認知の歪みがあります。本人に悪意はなくとも、「他の人もやっている」「店が損をしても自分には関係ない」「こうした方が自分のコスパ・タイパを上げられる」と結論づけてしまうのです。
心理学ではこれをモラル・ディスエンゲージメント(道徳的切断)と呼びます。個人が罪悪感を感じないよう、自分の行動を善意や当たり前として合理化する現象です。特に組織への帰属意識が薄いアルバイトでは、この傾向が強く現れます。
組織への心理的距離が遠い
正社員と比べ、アルバイトは雇用契約上のつながりが限定的です。そのため、店への所属感や貢献意識が生まれにくく、仕事を自分事として捉えづらい傾向にあります。「ここは単なるバイト先にすぎない」「少しぐらいなら許される」「損をするのは自分じゃない」といったように、組織との心理的な距離が大きいほど、ルールやモラルへの意識は希薄になります。とんでもない行動の背景には、職場との断絶感が存在するのです。
注意や叱責では変わらない理由
「なぜダメなのか」が伝わっていない
多くの店長は、問題行動を見つけた際に「そんなことをするな」と厳しく注意します。しかしその指摘は行動の是非だけに焦点をあてており、理由の共有が抜け落ちていることが多いのです。
本人にとっては、誰にも迷惑をかけていないし、効率的に動いただけと感じているため、叱責されても納得できません。重要なのは、行動そのものではなく「その行動がもたらす影響」を理解させることです。
たとえば「ロスをわざと作る」行為は、廃棄コストを増やすだけでなく、在庫管理の信頼性を損ね、結果的に他のスタッフの負担を増やします。なぜダメなのかを具体的に説明することで、モラルへの自覚が芽生えます。
罰ではなく関与が欠けている
何度注意しても行動が改善されないと嘆く店長は多いですが、実は叱責よりも関与不足が問題です。アルバイトがとんでもない行動を取る背景には、「自分はどうせ見られていない」「信頼されていない」という孤立感があります。逆に、日常的に声をかけ、行動を認め、困ったことがあれば相談できる関係を築くと、不正や怠慢行動は大幅に減少します。心理的安全性が高い職場では、ルール意識や責任感が自然に育つためです。
店長・リーダーが取るべき3つの育成アプローチ
1.行動を責めず、その「背景」を聞く~再発防止と信頼構築
問題行動が起きた際、すぐに叱責するのではなく、まずなぜそうしたのかを丁寧に尋ねる姿勢が必要です。
「時間が足りない」「休憩が取りづらい」「ロス管理のルールが分かりづらい」など、仕組みや環境に原因がある場合も多いからです。本人の言い分を引き出し、改善策を一緒に考えることで、再発防止と信頼構築の両立が可能になります。
2.インシビリティを放置しない~職場の規範を崩す芽を摘む
挨拶をしない、注意を無視する、仲間を軽んじるなどの、小さな無礼(インシビリティ)は、職場全体のモラル低下を引き起こします。
些細な態度でも、「注意しても何も変わらない」と店長が放置してしまうと、職場の規範が崩れていきます。そのため、無視や不遜な態度などが見られた際は、感情的にならず、「あなたのその言動はチームの雰囲気に影響を与える」と具体的な行動レベルで指摘することが大切です。
3.自分の貢献を実感させることで、モラルある職場が保たれる
アルバイトの多くは、自分の仕事が店にどう貢献しているかを理解できていません。
たとえば、「あなたがロスを正確に報告してくれるおかげで、仕入れ量が最適化できている」「あなたの接客が常連さんを増やしている」と伝えることで、仕事の意味と手応えが可視化されます。自分の役割が認められていると感じたとき、人は自然とモラルを守ろうとします。
行動ではなく「信頼関係」で変えていく
とんでもない行動をするアルバイトを問題児として切り離すのは簡単です。しかし、本当に必要なのは、なぜその行動を取ったのかという背景を理解することと、信頼関係の再構築です。ロスをわざと作ることや、勤務をサボることなどは、氷山の一角であり、根底には職場への無関心や心理的距離、モラルの未熟さがあります。
一人ひとりの意識を変えるには、行動を責めるのではなく、関わり方を変えることが最も効果的です。日常の声かけ、感謝の共有、成功体験の積み重ねを続けていくことが、最終的には職場全体のモラルを底上げします。
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トンデモアルバイター対策シリーズ
- 【トンデモアルバイター対策①】ロス捏造と勤務時間減らしにとるべき店長のアプローチ
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