インソース エッセンシャルワーカーサービス

【トンデモアルバイター対策➂】「それ自分の仕事じゃないんで」と言わせない~チームを乱すやりっぱなしの瞬間

とある居酒屋の厨房。
ピークタイム、調理スタッフは次々と料理を仕上げて提供します。お皿をカウンターに置き、次の調理器具を取り出す。

忙しい中で「さっき使った調理器具を片付ける時間がない!」と思いながらやむを得ず次のオーダー処理に入ってしまうのは自然なことです。しかし、この一時的な出しっぱなしが重なると、次のスタッフが使いたい器具がどこにあるか分からなくなり、料理の提供に遅れが生じます。あるいは、ホールに続くドアが開けっぱなしで冷暖房の効きが悪くなると、ホールスタッフも不快感を覚え、店舗全体の雰囲気が悪くなってきます。

つまり、小さな「~っぱなし」が積み重なることで、チームワークが静かに、しかし確実に阻害されていくのです。

なぜ人はやりっぱなしな状況をつくってしまうのか?

タスク完了の錯覚

特にスタッフは料理がお客さまに提供された時点で「自分の仕事は終わった」と認識してしまうことがあります。心理学ではこれをタスク完了錯覚(ツァイガルニク効果)と呼びます。

  • 出した料理が目に見える成果であるため、調理器具の片付けまで意識が回らない
  • 「次の注文が入る前に休む」など、短期的な優先順位が行動を左右する

厨房では、この錯覚が多くの出しっぱなし行動を生む要因になっています。未完了のタスクは脳内で緊張感を生み、完了したことでその緊張が解消される、というメカニズムに基づいています。ですが、片付けまで意識ができる人とそうでない人がいるのはなぜなのでしょうか。

「どこまでがひとつの仕事か」の認識がズレている

同じ厨房内でも、スタッフごとに仕事の範囲の認識が異なることで、そのタスクを完了させたかどうかの自己判断が違ってきます

  • 調理担当A:料理を出したら仕事完了
  • 調理担当B:料理を出す+器具を洗うまでが仕事

このズレが片付け忘れやドアを開けたままにしてしまう頻度が高いかどうかに影響します。やりっぱなしの行動が多いメンバーが固定化されてしまう理由はここです。

注意力と疲労の影響

ピークタイムの厨房は常に緊張状態にあります。注文の嵐に対応する集中力、連続する急ぎの作業による心理的負荷などにより、「片付けやドアの閉め忘れ」は無意識に起こることも少なくないのです。怠慢ではなく単にリソース不足の結果です。

飲食店で実践できる対策

タスク完了の基準を明確にする

調理スタッフやホールスタッフ全員で、ひとつの仕事の範囲を具体的に定義します。

  • 料理をデシャップ(提供窓)に置いたら完了ではなく、器具を洗って元の場所に戻したら完了
  • ドリンク用冷蔵庫のドアは開けるたびに毎回音が鳴るまで最後まで閉める

明確な基準があるとスタッフ間で認識のズレが減り、各自の行動の範囲の足並みがそろってきます。

行動の意味を理解させる

スタッフになぜやりっぱなしにしないことが重要なのかを具体的に伝えることも大切です。

  • 器具を元の場所に戻すのは、次に使用するメンバーの料理提供をスムーズにするため
  • ドアを閉めるのは、空調効率を保ち、お客さまに快適な食事環境を提供するため
  • グラスのサプライが遅いと冷えたビールがすぐにぬるくなり、クレームになる可能性があるから
  • 引き出しを開けっぱなしにしないのは、それを知らないメンバーがぶつかり怪我をするかもしれないから

理解が伴うと、好ましい行動とは単なるルール遵守ではなく、自分の仕事の成果に直結する意味のあるものになります。

仕組み化と可視化

  • 器具や皿の戻す場所をラベルで明示
  • 自動で閉まるドアや、片付けが容易になる収納スタンドを導入
  • 終業時のチェックリストで元の状態に戻すことをルーチン化

仕組みを整えることで、無意識の「~っぱなし」を防げます。

リーダーの示範行動

店長やリーダー自らが、ピーク後のアイドルタイムなどに厨房やホールをチェックし、備品やドリンク、調味料を補充する、ドアを閉める、カトラリーの整理をするなど基準行動を率先して示すことが有効です。これによりスタッフは「ここまでが自分の仕事」という範囲を理解しやすくなります。

「扉を締めきる」「お皿をキャビネット内に仕舞いきる」といった行動は、一見些細なことのように思えます。しかし、そこには責任感・周辺配慮・連携意識といった、職場に欠かせない土台の要素が凝縮されています。

それ私の仕事です

やりっぱなしを放置しない職場は、メンバー全員が次の人を思いやり、全体最適で動ける組織です。リーダーや店長は、日常の小さな行動を軽視せず、整える力こそがチームの品質を高めると捉えることが重要です。今日から職場で、「最後までやりきる」を合言葉に、チームの一体感を取り戻しましょう。

(管理職・リーダー向け)指示徹底力強化研修(1日間)

指示の徹底に必要な指示をするための事前準備、指示の仕方、中間確認、日頃のコミュニケーションについて学ぶプログラムです。

最後のケーススタディで、模擬指示出しに挑戦し、自身の課題を明確にしてスキルの定着をはかります。

よくあるお悩み・ニーズ

  • 指示をしても、指示通り行われず同じようなミスやトラブルが頻発する
  • 指示通りに動きたがらないメンバーがいる
  • 指示をしても思っていたように伝わらない
  • 指示をする力を磨き、業務を円滑に遂行したい

本研修の目標

  • 指示を徹底するために必要な要素を身につける
  • 指示を効果的に伝える工夫を考えられるようになる

>公開講座の詳細はこちら

>講師派遣型研修の詳細はこちら

セットでおすすめの研修・サービス

定額制eラーニング視聴サービス Leaf Lightning STUDIO

多機能・マルチデバイスLMS「Leaf Lightning」に、インソースが開発した厳選eラーニング教材を格納した状態で提供するサービスです。

一般的なビジネスマナーやCS向上の考え方を学べます。多言語字幕を自分で設定し視聴できるので、外国人スタッフへの教育にもおすすめです。

>Leaf Lightning STUDIOの詳細はこちら

外食業界向け研修・サービス

店長向け、アルバイトスタッフ向けなど多種多様な外部環境の変化に柔軟に対応できる戦略策定と、それを実行できるフレキシブルマインドをもった従業員の育成に、当社グループのソリューションをお役立てください。

>外食業界向け研修・サービスまとめはこちら

店長研修~店長の影響力を自覚し、働きがいのある店舗を作る編

店長に求められる仕事について考えていただいたうえで、自身の影響力の大きさ、自身の魅力を高め、信頼される店長になるためのセルフプロデュースの重要さを理解していただきます。

これらのスキル習得を通して、店長自身の影響度やスキルで、働きがいのある店舗を作れるようになっていただくことを目指します。

>公開講座の詳細はこちら

>講師派遣型研修の詳細はこちら

トンデモアルバイター対策シリーズ

  1. 【トンデモアルバイター対策①】ロス捏造と勤務時間減らしにとるべき店長のアプローチ
  2. 【トンデモアルバイター対策➁】バックヤードを「私物化」~共有スペースの使用にあらわれるマナーと指導のコツ
  3. 【トンデモアルバイター対策➂】「それ自分の仕事じゃないんで」と言わせない~チームを乱すやりっぱなしの瞬間
  4. 【トンデモアルバイター対策④】お客さま用スペースに駐車しても涼しい顔~一般常識を育む方法を知ろう