【トンデモアルバイター対策④】お客さま用スペースに駐車しても涼しい顔~一般常識を育む方法を知ろう

店舗で働くアルバイトに「常識がない」と感じたことはないでしょうか。
シフト開始に間に合わないからと正面玄関近くに自転車を止める、バックヤードのど真ん中に荷物を置いて動線をふさぐ、接客中にお客さまに背を向けてしまうなど、本人には悪気がなく、むしろ「誰にも迷惑をかけていない」と思っている場合も少なくありません。
さらに最近では、「自分がいかに楽に動けるか」を意図的に優先しようとするスタッフも増えています。効率を求めるあまり、お客さま目線やチーム全体の動きが見えにくくなっているのです。
こうした働くうえでの常識のずれは、学生やシニアといった多様な世代が働く店舗ほど起こりやすい課題です。本記事では、なぜ店長であるあなたが考える一般常識が通用しないのかをひもとき、どのようにメンバーを教育すべきかを具体的に考えます。
常識のずれは経験の差と自分優先の心理から生まれる
職場の当たり前は社会共通の常識ではないことをはじめに理解する
店長やベテラン社員にとっては当たり前の行動も、学生アルバイトやシニアメンバーにとっては初めての経験であることが多くあります。たとえば「お客さまのいらっしゃる方向に気を遣う」という接客姿勢は、働いた経験の少ない学生には想像がつきにくいものです。どんな場合も指示された個別作業の効率を上げることを優先しがちなのは、それがタスクを処理したというわかりやすい成果であると自分にも他者にも説明しやすいからのようです。
一方で、シニア・ベテラン層は長年の社会経験があるものの、前職の慣習や価値観をそのまま持ち込む傾向があります。久しぶりに現場に戻ってきた人の中には、「お客さまの立場だったころの視点」から抜け出せない人もいます。「自分ならこうされた方がうれしい」「この程度なら許容範囲」と、お客さま視点を自分に都合よく使ってしまうことがあるのです。
さらに、世代を問わず見られるのが「自分がいかに楽に動けるか」を無意識に優先する行動です。近道するために自分の使っていない経路を勝手にふさいだり、声をかけられずに済むようあえてエンドユーザーに背を向けたり。いずれも「合理的に動いている」という感覚があるため、本人には問題意識がそうありません。
つまり、「常識」は個人の経験や思考の癖によって形成されるものであり、店として明確に示し、理由を共有しなければ、同じ方向にはそろわないのです。
「行動の意味」を伝えなければ変わらない
注意ではなく、なぜそれが大事なのかを説明する
教育現場でよくあるのが、「○○しないで」「××して」と、行動のみを指示する指導です。しかし、理由を伝えないままでは、再発防止にはつながりません。
たとえば動線をふさぐ行為を注意する際には「ここに荷物を置くと鮮魚コーナーのスタッフが通るときに危ないよね」など、理由を説明しましょう。他にも、売り場へのドアを乱暴に開けるメンバーには「勢いよく出ちゃうとお客さまにぶつかって怪我をさせてしまうかもしれないよ」など、その行動がお客さまに与える影響をセットで伝えます。行動の根拠となるお客さま目線を理解できれば、スタッフ自身が気をつけようという意識を持てるようになります。
「なぜダメなのか」を現場で実感させる
説明だけでは理解が難しい場合には、体験を通じて気づかせる教育が効果的です。通路に物がある状態で清掃や配膳をしてもらい、作業のしづらさを実感してもらう。このように感情を伴う理解は、注意されるよりも深く記憶に残り、行動の定着につながります。
店長がつくる常識の共有地~教育のスタートは「ルール」の明文化
学生やシニアのように多様なメンバーが働く職場では、「言わなくても分かるだろう」は通用しません。まずは店舗の行動基準を可視化することから始めましょう。以下のように簡潔に、文字にしてまとめることで、共通認識を持ちやすくなります。
- 正面玄関はお客さま専用の動線とする
- 自転車は従業員用スペースに駐輪する
- お客さまに背を向けず、必ず一度会釈をしてから離れる
- 通路や出入り口には、荷物やカゴを置かない
こうしたルールを「なぜそうするのか」という目的とセットで伝えることが、理解の定着につながります。単なる禁止事項の羅列ではなく、お客さまに気持ちよく過ごしていただくため、安全な動線を保つためといった理由を明示することで、納得感のある職場文化を形成できます。
教える側の姿勢が職場の常識を育てる~教育の目的は習慣化のサポート
分かっていない前提で丁寧に伝える
店長や教育担当者に求められるのは、「分かっていて当然」と思わない姿勢です。特に学生や初めて接客業に就く人にとっては、社会のルールそのものが未知の領域です。こんなことまで言わなくてもと思うことほど、言葉にして伝えることが大切です。
たとえば「お客さまの前を横切るときは『失礼いたします』と声をかける」など、動作に伴うマナーを一つひとつ示すことで、行動基準が明確になります。教育の目的は叱責ではなく習慣化のサポートであるという意識を持ちましょう。
ほめる教育で行動を定着させる
注意だけでなく、できたときにそれを言葉にしてほめることもポイントです。「今の会釈、とても丁寧だったね」「通路がすっきりしていて助かる」など、良い行動を見逃さずに言語化することで、正しい行動が再現されやすくなります。特に若いスタッフにとっては、承認されることで自信につながり、意欲的に動けるようになります。
世代ごとの教育アプローチを工夫する
学生アルバイトには「ビジネスの基礎力」を育てる視点で
学生にとってアルバイトは、社会に出る前の学びの場でもあります。単にマナーを守るだけでなく、なぜお客さまの立場を意識するのかを理解させましょう。ミーティングで実際のお客さまの声やクレーム事例を共有し、「どうすれば良い印象を与えられるか」を一緒に考える時間を設けるのも効果的です。考える習慣が身につけば、素直に自ら気づいて行動できるようになります。
ミッドエイジ・シニアスタッフには、経験を尊重しつつルールをすり合わせる
豊富な人生経験がありますが、自身の昔の常識を引きずってしまうこともあります。さらに、長年お客さまとして過ごしてきたため、「自分ならこのくらいは気にならない」と勝手な解釈で良かれと思って行動してしまうケースもあるのです。
頭ごなしに注意するよりも、「この店舗ではこういう理由でこのやり方を採用しています」と説明し、対話型の指導を意識しましょう。また、経験を活かして学生アルバイトへの教育を一部任せることで、シニア自身のモチベーション向上にもつながります。店長は「全員で店をつくる」というチーム文化を醸成していくことに心を砕く必要があります。
常識は、多くの従業員に周知定着されて初めて常識になる
多様なスタッフが働く店舗では、常識は自動的に伝わるものではなく、店長が意識的に育てる文化です。行動の意味を伝えること、体験を通して理解させる、ルールを明文化すること、そして、自分が楽になるかどうかではなく「お客さまが快適になる」を基準に行動できるよう導くことが重要です。誰もが気持ちよく働ける店舗を実現するために、今日から当たり前を言葉にする教育を始めてみましょう。
パート・アルバイト指導担当者向け研修~働きがいのある職場を作る編(1日間)
待遇を上げ続けることが難しい状況で、従業員に「この組織で働きたい」「長く続けたい」と思ってもらうためには、現場を管理する店長やリーダー社員の知恵と工夫が必要です。
パート・アルバイト視点で働きやすいと感じ、その職場で働くことに意義を見出すことのできる職場づくりのポイントを、コミュニケーション・職場づくりの観点から学びます。
よくあるお悩み・ニーズ
- パート、アルバイトの指導を初めて担当することになり、接し方のポイントを学びたい
- 現場のパートタイム従業員の離職率が高い
- ベテランパートとの良好な関係性を構築するコツを習得したい
本研修の目標
- パート・アルバイトを指導するうえで、重要となるポイントを理解する
- パート・アルバイトとのコミュニケーションの基本を習得する
- 職場環境の改善方法について、考え方や手順について学ぶ
セットでおすすめの研修・サービス
CS調査サービス
貴社オリジナルの調査シートを、重視する項目を勘案しながらインソースが作成します。調査をするのは接遇のプロフェッショナルとして長年現場で活躍してきた講師です。
分析結果をもとに、強化すべき点・改善策をご提案いたします。
社会人としてのモラル・倫理を考える講座
人としての倫理や道徳にあたる「モラル」を学ぶ機会は多くありません。人としての当たり前は、言わずとも心得ておくべきと捉えがちである分、その理解には個人差が生じます。
他者からの信頼を獲得すること、顧客と長期的に良好な関係を築くことは、組織利益の最大化をもたらします。
店長研修~店長の影響力を自覚し、働きがいのある店舗を作る編
店長に求められる仕事について考えていただいたうえで、自身の影響力の大きさ、自身の魅力を高め、信頼される店長になるためのセルフプロデュースの重要さを理解していただきます。
これらのスキル習得を通して、店長自身の影響度やスキルで、働きがいのある店舗を作れるようになっていただくことを目指します。
トンデモアルバイター対策シリーズ
- 【トンデモアルバイター対策①】ロス捏造と勤務時間減らしにとるべき店長のアプローチ
- 【トンデモアルバイター対策➁】バックヤードを「私物化」~共有スペースの使用にあらわれるマナーと指導のコツ
- 【トンデモアルバイター対策➂】「それ自分の仕事じゃないんで」と言わせない~チームを乱すやりっぱなしの瞬間
- 【トンデモアルバイター対策④】お客さま用スペースに駐車しても涼しい顔~一般常識を育む方法を知ろう


