思い通りにならないことを我慢できない若者をどう育てるか~フィルターバブルの影響と相違を面白がれる組織の作り方

現実の職場では他者との協働が不可欠です。自分にはない意見や価値観に向き合い、時には衝突を経て成長できる人材こそ、変化の時代を生き抜けます。
「思い通りにならないことを楽しめる」人材を育てるための考え方と、組織で実践できる育成アプローチを解説します。
フィルターバブルが若者の「思考を狭める」しくみ
自分の世界だけで完結する情報環境
フィルターバブルとは、インターネットやSNSにおいて、ユーザーの過去の行動履歴(検索/クリック/フォローなど)に基づいて、アルゴリズムが「そのユーザーが興味を持ちそうな情報」を優先的に表示することで、それ以外の情報に触れる機会が減る現象のことをいいます。
例えば、自分の知りたいことや好み、考えをキーワードにして検索すると、似た(関連した)情報ばかりが大量に自動で、瞬時に集まってきます。そしてその検索結果からどの情報を選択するかによって、どんどんパーソナライズ(ユーザーへの最適化)が進みます。
異なる視点や意見、価値観に触れる機会が減り、確証バイアス(自分の考えを支持する情報を重視する傾向)が強まること、他者の意見を「自分への否定」と捉えて思考の柔軟性が失われる可能性がある点が問題視されています。
その結果、多様な他者と協働するマインドが育ちにくくなったり、無意識に建設的な意見交換を避けてしまったりする可能性が指摘されています。
「正解を一つ」と捉える傾向の強まり
学校教育やSNS上の評価システムも、「早く・正確に・効率よく」答えを出すことを重視しがちです。そのため、人によっては「唯一の正解」を強く求め、異なる意見やグレーな状況を不快に感じることがあるかもしれません。これが、「思い通りにならないこと」に対してストレスを感じやすい土壌の一つになっているとも考えられます。
協働が難しくなる組織のサイン
異論を口にしづらい空気
職場で「波風を立てたくない」という空気が強まると、意見の対立を避け、形だけの合意が増えます。これにより、表面的には平穏でも、チームとしての創造性や課題解決力が下がります。特に若手が「違う意見を言うと嫌われる」と感じる環境では、協働が形骸化します。結果的に、組織全体の思考が内向きになり、外部環境の変化に対応しづらくなります。
「正しさ」より「安心」を求める心理
多くの人が上司や同僚に求めるのは、正論ではなく「受け入れてもらえる安心感」です。自分の意見がすぐに否定される環境では、挑戦意欲は育ちません。逆に、「それもとてもいいね」と共感的に受け止められる環境では、働く人々は思考を広げ、他者との違いを前向きに捉えるようになります。
「それもいいよね!」と言えるチームが強い理由
異なる意見が化学反応を起こす
組織が強くなるのは、似た者同士が集まったときではなく、多様な視点が出会うときです。「それもいいね!」という一言は、相手の意見を肯定するだけでなく、新しい発想を受け入れる余裕があることを表しています。この言葉が自然に出るチームでは、意見の衝突が「面白い議論」に変わります。
セレンディピティ(偶然の発見)を生む文化
セレンディピティとは、思いがけない発見を楽しむ姿勢を指します。思い通りにならない状況や意見の違いも、「自分にはない視点を得られるチャンス」と捉られれば、創造的な成果につながります。組織としてこの価値観を共有できると、困難や混乱の中から新しい答えを見出せるようになります。
困難を「面白がれる」人材を育てるための3つのアプローチ
1.正解より「問い」を重視する教育
若手育成では、すぐに答えを教えるのではなく、「こんな場合にあなたならどう思うか」を問うディスカッションの場を意図してつくることが大切です。たとえば、多数のケーススタディに挑戦させて多様な意見を引き出し、他の受講者との対話を通じて答えを共創する設計の研修が効果的です。このプロセスが、異なる視点を受け入れ、自ら考え抜く力を養います。
2.「安心して失敗できる場」の設計
新しい挑戦をするには、失敗しても責められない心理的安全性の担保が必要です。上司や先輩が失敗談を共有したり、改善点を一緒に考える時間を設けたりすることで、若手も「完璧でなくてもいい」と感じやすくなります。このことで、困難を恐れず挑戦を楽しむ文化を少しずつ育てます。
3.異質な人との協働経験を意図的に増やす
異動・プロジェクト・ワークショップなどを通じ、年齢や職種の異なるメンバーと協働する機会を設けることも効果的です。自分と異なる価値観に触れることは、初めはストレスでも、やがて成長の糧となります。組織が「異なることを楽しめる」人事制度を設計することが、若手の成長を加速させます。
「不快」を「発見」に変えられる組織へ
「思い通りにならない」状況にストレスを感じやすい背景には、情報環境の偏りや、正解を求める社会構造があるかもしれません。しかし、職場は常に多様な考えが交わる場所です。だからこそ、違いを受け入れ、困難を面白がれる力が重要です。
「それもいいね!」と言えるチームは、単に優しいチームではありません。異なる視点を受け止め、そこから新しい価値を創り出せるイノベーティブなチームです。組織全体でセレンディピティを育む文化を築くことで、変化の時代に強い人材が育ちます。
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