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【エフェクチュエーション4】クレイジーキルトの原則~多様なプレイヤーと協力し、未来を共創する

コラム【エフェクチュエーション3】ではエフェクチュエーションを構成する5つの原則の2つ目「許容可能な損失の原則」で、小さく短期に低いコストでプロジェクトに取り組むことの重要性を理解させるうえで人事部門が支援できることを解説しました。

ここでは、5つの原則の3つ目である「クレイジーキルトの原則(Crazy Quilt Principle)」をみていきます。

原則➂クレイジーキルトの原則(Crazy Quilt Principle)

クレイジーキルトの原則は、エフェクチュエーションの中でも最も協働と外部連携を重視する要素です。ここでいう協力とは、義務感や一方的な依頼ではなく、互いに利益を持ち寄る関係性を意味します。多様なプレイヤーが交わることで、想像し得ない組み合わせから新しい価値が生まれることを、この原則は示しています。多様性は単なる属性の違いを指すのではなく、視点やリソース、動機が異なる主体が交差することにより創発的な成果を生むという考え方です。

多様性の価値を最大化するためには、単に異なる人を寄せ集めるだけでは不十分です。関係の設計、価値交換の明確化、共通目的の設定、形成、そして心理的安全性の担保が欠かせません。ただ、組織がクレイジーキルトを実践する際に直面する課題として、協力相手の選定や巻き込み方、利害の調整、成果の配分設計などが挙げられます。ここからは現場で使える具体的な設計と人材育成上の要点を示します。

多様性の力を引き出し協力関係から未来を共創する~ファシリテーションスキルと心理的安全性の醸成

多様性が価値を生むメカズムは2つあります。

  1. 問題解決の選択肢が増える
    異なる背景や専門性を持つ人が集まれば、同じ課題でもアプローチの幅が広がり、複数の解決策を短時間で検討できます。
  2. 相互学習が加速する
    個々人が持つ暗黙知が交わることで、新しい知見や手法が創発されます。

実務においては、多様性を単なる数的評価で終えないこと(たくさんの意見が出た)ことだけで満足しないことが肝要です。多様性による真の価値を引き出すには、議論の質を高めるファシリテーションや各者の貢献を可視化するとよいでしょう。例えば、クロスファンクショナルチームでは、メンバーが集まる議論の場で「専門性カード」を用意し、誰がどの観点で貢献しているかを見える化します。これにより、発言の偏りを防ぎ、施策に多様な視点がしっかりと反映されるようになります。

>クロスファンクショナルチーム(CFT)とは

人事部門の施策としては、多様性を活かすファシリテーションスキルの普及や向上といった支援が挙げられます。議論の構造化手法、発言を可視化するツールの活用トレーニングのほか、多様なメンバーが安心して意見を出せる心理的安全性の醸成なども、異なる価値観を活かす組織文化を育てます。

協力者の見つけ方と誘い方~価値交換を前提にしたアプローチ

多くのプロジェクトで、「協力者が見つからない、誘っても参加してくれない」という状況はよく起きます。そんな時は、相手に一方的なお願いをしていないか、相手が得られる価値を明確に提示できているかを振り返りましょう。ここでいう価値とは金銭的なものに限られません。例えば学びの機会、事業へのアクセス、共創によるブランディング、試験的なデータ利用など様々です。

心理的負担の少ない誘い方~小さな成功体験を共に共有する

誘い方のコツは、小さな共同作業から一緒にやってみないかと声をかけることです。最初から大規模な約束を取り付けるのではなく、短期間で終わるクリアなタスクを提示して成功体験を共有する。成功体験が蓄積されると、自然と信頼関係が生まれ、より大きな協業へと発展します。また、価値交換を文書化し、期待値を合わせることも大切です。期待値のズレが後々の摩擦を生むため、初期段階で利害関係を丁寧に調整します。

社内外の協力者を見つけるマッチングプラットフォームや人を巻き込むスキルの付与、協力者募集テンプレートなどの整備によって、社員が自ら協力者を募り共創していける環境を作りましょう。

価値交換の設計とガバナンス~共創を持続可能にする仕組み

こうした協働を単発のイベントに終わらせないためには、価値交換の設計とガバナンスが不可欠です。価値交換の設計とは、誰が何を持ち寄り、何を得るのかを明確にすることです。ここで重要なのは、期待の非対称性を早い段階で解消すること。例えば、提供側がリソースを出す一方で、相手にとっての短期的な利益が見えづらい場合には、協力は長くは続きません。

ガバナンス面では、共同プロジェクトにおける意思決定ルール、成果の分配ルール、知財・データ利用に関する取り決めをあらかじめ設計します。これによって協業がスムーズに進むだけでなく、トラブル発生時の対応も明確になります。特に複数のメンバーやチームが関わる場合は、透明性の高い報告ラインや合意形成のための定期レビューを制度化するとよいでしょう。

人事部は共創ガバナンスに関する基礎知識を全社に普及させる役割を担います。契約・合意形成の基礎、知財やデータ利用の基本ルール、共同プロジェクトの報告体制などの教育を提供し、現場が自律的にガバナンスを回せる力を育てます。

エフェクチュエーションを構成する5つの原則の「実行力」

原則➁許容可能な損失の原則と本コラムで解説した原則➂クレイジーキルトの原則は、どちらもエフェクチュエーションの実行力を左右する柱です。

原則➁許容可能な損失の原則は実行のスピードを担保し、失敗からの学びを最大化するための設計思想を提供します。原則➂クレイジーキルトの原則は多様な主体と協働することで、個人や部門の限界を超えた創発をもたらします。両者を組み合わせることで、企業は「小さく始めて迅速に学び、協働で拡張する」という持続可能なチャレンジサイクルを構築できます。

このシリーズでは引き続き、原則➃レモネードの原則原則➄パイロットの原則についてみていきましょう。

共創型リーダーシップ研修~ステークホルダーと共に価値を生み出す実践メソッド

「共創」とは社会課題の解決を目指し、多様なステークホルダーと協働して、新たな価値を創出していくことです。

仲間と認めてもらうことで協力を得る方法、共創パートナーを見極める要素、全員が納得する結論を出すにあたっての注意点などを、ケーススタディを通じて体験します。

よくあるお悩み・ニーズ

  • 立場や考え方が異なる人たちと、どうコミュニケーションをとったらいいか分からない
  • プロジェクトを円滑に進行していくためのスキルを学びたい

本研修のゴール

  1. ステークホルダーを巻き込むために必要な調整力、コミュニケーション力を身につける
  2. プロジェクトの目的の言語化、進捗管理など、共創活動を円滑に進めるためのポイントを学ぶ
  3. 立場の異なる多様なステークホルダーとコンセンサスを取ることができるようになる

>公開講座の詳細はこちら

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セットでおすすめの研修・サービス

チームビルディング講座~お互いをリスペクトし、プロジェクトを成功に導く

全員がお互いをリスペクトできる関係性を目指し、心理的安全性が高いチームの基盤づくりやNG行動について学ぶ動画コンテンツです。

現代におけるコンプライアンスの概念をはじめ、現場で起こりうる様々なハラスメント、心理的安全性の重要性、多様性を前提にしたコミュニケーションのポイント、注意すべき発言や言葉遣い、指摘の仕方・受け入れ方などを解説いたします。役職や雇用形態の垣根を越え、互いに敬意を持って接することで、プロジェクトを成功に導くスキル・マインドを高めます。

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