【エフェクチュエーション1】組織を強くする手段思考と人事が実務に落とし込むための知識~見えない未来を切り開く

これまで多くの企業は、明確なゴールを設定し、そこから逆算して計画を立てるコーゼーション(Causation=因果論)を中心に事業や育成を進めてきました。
しかし現在の激しい社会変化で先行きが読みにくくなる中で、従来型の目標思考だけでは組織が持続的に前進することが難しくなっています。こうした状況から、手元にある資源を起点に機会を創り出すエフェクチュエーション(Effectuation=実効理論)が注目されるようになってきました。
エフェクチュエーションという思考法~目標を固定せず、手元にある資源を起点に可能性を広げる
エフェクチュエーションとは2001年、ヴァージニア大学のサラス・サラスバシー教授の研究で発見された「優れた起業家に共通して活用する思考様式」です。
単に起業家の思考法という枠を超え、企業内で働く人材の行動や意思決定に直結する実践的なアプローチであると評価され、世界中に広がりました。日本では2015年に著書の翻訳版が碩学舎から出版され、急激にその認知度が高まりました。
人事部門はこの考え方を従業員育成施策に取り入れることで、変化の中でも行動できる人材を増やし、組織全体の機動力を高めることができます。このコラムシリーズでは、エフェクチュエーションがなぜ重要視されるようになったのか、他の思考法と何が異なるのか、5つの原則を人材育成に落とし込むとどうなるのかなどを、体系的に解説していきます。
エフェクチュエーションが注目される理由と社会的背景
現代においてエフェクチュエーションの考え方は、多くの企業や人事担当者にとって不可欠なテーマです。背景にあるのは、環境変化のスピードがこれまでとは比較にならないほど早く、しかも不確実性が極めて高いVUCA時代に突入してから一定の時間が経過したことにあります。おおよそ2010年以前はある程度未来を予測し、計画を立て、その通りに遂行することで成果を出せていました。しかし、予測不能な事象が次々に起こる現代では、計画を立ててもすぐに前提が変わってしまいます。
市場変化、テクノロジーの革新、顧客ニーズの多様化、さらには地政学的リスクや自然災害など、想定外の変化が日常的に起こる環境においては、柔軟な意思決定と実験的な行動がより重要になります。エフェクチュエーションは、このような予測不可能性の高い状況下で力を発揮する思考法であり、計画の正確さよりも行動の質とスピードに重点を置く点が特徴です。
さらに、働く個人の価値観にも変化が起きています。これまでは、組織が定めた役割を遂行し、計画通りに成果を出すことが評価の中心でした。しかし、現代のビジネスでは、変化に応じて主体的に動き、協力を引き寄せ、新たな価値を生む力が求められています。エフェクチュエーションは、まさにこの主体性や行動力を高めるための基盤になります。
コーゼーションとの違いが組織の意思決定を左右する
エフェクチュエーションを理解するために欠かせないのが、コーゼーションとの違いです。コーゼーションは、目標を先に設定し、そこから逆算してプロセスを組み立てる思考法です。これは多くの企業でVUCA時代以前に長く採用されてきた方法で、安定的な環境では大きな効果を発揮します。しかし、前提条件が崩れやすい状況では、計画自体がすぐに役に立たなくなることが多く、柔軟性を欠きやすい点が課題となります。
一方エフェクチュエーションは目標を固定せず、手元にある資源を起点に可能性を広げていく方法です。予測ではなく、行動と連携を重視し、変化を利用しながら成果につなげる点が特徴です。未来を先に定めてそこに向かうのではなく、未来そのものを主体的に創り出すアプローチといえます。
「どちらが良い」ということではなく、企業はこれからこの両者を使い分けることが不可欠です。予測可能で再現性の高い領域ではコーゼーションが有効ですが、新規事業、イノベーション、業務改善や課題解決など正解がない状況ではエフェクチュエーションの方が適しています。人材育成においても、従来型の管理ではなく、変化に対応する思考法を育むことが求められるようになっています。
目標思考からフォアキャスティングへ。行動起点の時代へ移行する理由
エフェクチュエーションが注目される背景には、バックキャスティングによる計画思考が限界を迎えているという現実があります。バックキャスティングは、理想的な未来を設定し、そこに向けて何をすべきかを逆算します。しかし、未来の不確実性が高いほど、逆算した計画自体が曖昧で実効性の低いものになります。
これに代わって求められているのが、フォアキャスティングです。フォアキャスティングは、手元の資源や状況を観察し、そこから生まれる可能性を積み上げることで未来を形作る考え方です。エフェクチュエーションはこのフォアキャスティングに近いアプローチであり、行動を起点に未来を創り出します。
この変化は、人材育成にも大きな影響を与えます。明確な正解やゴールが設定できない状況では、誰かが与えた目標に対して努力するだけでは不十分です。現場で状況を観察し、試し、周囲の協力を引き寄せながら、自ら機会を創り出せる人材が求められます。人事部は、この行動起点型の思考法を育むための施策を体系的に整備する必要があります。
<熱意と覚悟のマインドセット>逆境の中でのリーダーシップ研修
限られた情報の中での決断、孤立無援の環境での信頼構築、批判の渦中での問題解決。
リーダーが直面する困難な状況は、時に理性や手法だけでは乗り越えられないことが少なくありません。リーダーの真価が問われる場面で自分の軸をどう保ち、相手にどう向き合い、状況をどう捉えるか。
本プログラムでは実在の優れたリーダーたちが逆風の中でいかに思考し、行動したのかを学びながら、困難を突破するためのマインドを獲得し、リーダーシップに活かしていくことを目指します。
よくあるお悩み・ニーズ
- 組織改革を託されて単身乗り込んだものの、あまりの課題の多さに気が遠くなりそう
- 確かな情報が何もない中で、次々と決断を求められることにいつも不安を感じている
- 叩かれることはあっても褒められることのない仕事に、時折心が折れそうになる
本研修のゴール
- タフな状況下で先達たちはどのようにそれを乗り越えてきたのかを知ることができる
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