【エフェクチュエーション5】レモネードの原則~ピンチから活路を見出しチャンスに変えるには「練習」が要る

コラム【エフェクチュエーション4】ではエフェクチュエーションを構成する5つの原則の3つ目「クレイジーキルトの原則」で、多様な人材と協働することで、プロジェクトは予想外の発展を遂げる可能性があることを示しました。
ここでは5つの原則の4つ目「レモネードの原則(Lemonade Principle)」をみていきます。
原則➃レモネードの原則(Lemonade Principle)
レモネードの原則は、エフェクチュエーションの中でも特に象徴的な思想として知られています。本来は予期せぬ出来事(あるいは困難)を指すレモンを、価値ある成果物であるレモネードへ変えるという比喩ですが、単なるポジティブシンキングではなく、出来事を多角的に捉え、意味づけや行動を自ら再構築するという主体性を含んだ考え方です。
変化の激しい現代においては、計画通りに進まないことの方がむしろ自然であり、その前提を受け入れながら、新しい可能性を切り開くための思考体力を持つことが求められます。
失敗・不幸・逆境・困難を成長機会に変える視点を養う
この原則を人材育成に適用する場合、若手や中堅の従業員に対して「失敗した時にどう考え、どう動くか」を具体的に学び、練習する場を意識的につくることが重要です。従来の成功プロセスをなぞるような研修だけでは、偶発的なトラブルに遭遇した際に判断が止まってしまいます。
人事が担う役割は、予期せぬ出来事をそのまま教材に変えること、そして職員がそれぞれの現場で即興的に活路を見いだすためのメタスキルを身につけられるように支援することです。ここでは、レモネードの原則をどのように実務に落とし込むかを整理し、育成設計の観点から解説します。
予期せぬ出来事を遮断せず、問いの素材として扱う思考態度を育てる
レモネードの原則の前提には、予期しない出来事を排除しない・回避しない姿勢があります。多くの組織では計画外の事象をリスクとして扱いすぎる傾向があり、それが結果的に挑戦回避や属人的な依存を生みます。
重要なのは、想定外の出来事そのものを否定せず、どのような意味づけができるかを考える柔軟性です。例えば、営業現場で急なクレームが入った場合、ただ処理するのではなく、顧客理解を深める契機と捉えることができます。業務改善の材料にもなり得ますし、自部署の対応力を高める経験にもなります。
偶発性によって導かれた良い経験を語る先輩・上司から学ぶ
また、管理職メンバーが「過去の予想外の困った事象とそれにどう立ち向かったか」を率先して共有することも有効です。リーダーが経験を語ることで、部下は偶発性を恐れすぎず、自分なりの意味づけを考えるきっかけを得ます。予期せぬ出来事は、個々人の力量差が最も顕著に表れる場面でもありますが、同時に育成効果が最も高くなる場面でもあります。レモネードの原則によって、偶発性を職員の成長機会として扱うことが、組織文化の形成にもつながります。
レモネードの原則型の思考態度を組織全体に広げる施策として人事が取り組むべきは、次のようなものです。
- 予期せぬ出来事を扱うケーススタディを体系的に整備する
実際に起こったトラブルや障害対応の記録を収集し、成功例だけでなく、うまくいかなかった例も含めて教材化します。 - 管理職向けに「偶発性の意味づけと指導法」を学ぶ研修機会の提供
現場で職員を支援する具体的な問いかけを習得させます。さらに、予期せぬ出来事が起こった際に、上司と部下が短時間で振り返りを行い、どんな意味づけが可能か、どのように改善できるかを話し合える機会をつくることが、継続的な成長につながります。 - 挑戦や改善行動が評価制度に反映される工夫
一度の失敗で終わらせない継続的な挑戦の設計
レモネードの原則において、失敗はプロセスの終わりではなく、次の選択肢を生む入口として扱われます。しかし現実には、ほとんどの現場では一度の失敗が評価低下につながるという恐れが根強くあり、積極的な挑戦が生まれにくくなっている状況が散見されます。失敗を避ける言動ばかりが増えてしまうと、メンバーが得られる経験値が著しく制限されてしまうことは言うまでもありません。
つまり人が何かに失敗したときにいったん立ち止まって原因を考えることも大切ではありますが、それと同じくらい、次の試行をどのように調整して挑むかを奮い立たせることも必要なのです。これには継続的な試行が許される環境が欠かせません。
例えば、企画職であれば小規模な検証を何度も繰り返し、各プロセスでどの変数が影響したのかを整理し、次の改善点を具体化していくことが求められます。また同僚や他部署の職員と一緒に改善案を議論することで、自分では気づかなかった視点を得ることもできます。挑戦と修正を重ねていく過程そのものが、柔軟性と応用力を育てる貴重な学習プロセスです。
失敗を前提とした「試行フェーズ」を業務設計に組み込む
新人や若手については、初期段階から小さな改善サイクルを回すOJTプログラムを整備し、現場の指導担当者に対しても評価のバランスを変える必要があります。
成果の有無だけでなく、学習過程で得た気づきや再挑戦の動きも評価指標として取り入れることで、挑戦を後押しする文化が形成されます。
また組織横断で改善活動を共有する場を定期的に設けることも有効です。他部署の失敗事例や改善プロセスを学ぶことで視野が広がり、失敗そのものの捉え方が変化します。さらに、管理職にはコーチング的な関わり方を習得させ、部下が次の挑戦に向けて適切に内省できるよう支援させます。
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