2025年11月21日
米政府は9月22日、中国の字節跳動(バイトダンス)が運営する動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の米国事業を、米オラクルなどの企業連合が取得すると発表した。中国政府は、今回の売却を承認済みだという。TikTokの米国企業への売却に猛反発していた中国が、なぜ一転して受け入れたのか?
ロイター通信によると、バイトダンスが19.9%の株式を残し、残る80.1%の株式を米国企業連合(コンソーシアム)に譲渡する。
企業連合には現在の同社株主である米投資ファンドのサスケハナ・インターナショナル・グループ(SIG)、ジェネラル・アトランティック、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に加えて、オラクルやアマゾン、マイクロソフトといったIT大手の名も挙がっている。
TikTokアプリは米国専用バージョンに移行し、その他の国で利用する現行アプリとは異なるアルゴリズムで運用されるか、あるいはバイトダンスからライセンス供与された米企業のエンジニアによって再作成される見通し。
米国ユーザーのデータは企業連合に参加するIT大手が管理し、バイトダンスはアクセスできなくなるという。
中国政府はTikTokの強制売却に「米国が国家安全保障を口実に、正当な競争相手である中国企業を不当に弾圧している。市場経済の原則と国際貿易のルールに反する行為だ」と猛反発してきた。
その中国も、TikTokがバイデン前政権下の2024年に制定された「外国敵対勢力に支配されたアプリより米国人を保護する法律(TikTok規制法)」で米国でのアプリの配信や更新が禁止されることは何としても避けたかったようだ。
TikTokはユーザーの過半数が米国市場に集中しており、広告収入も米国からの比重が大きい。バイトダンスにとって、米国事業の売却を拒否すれば、広告収入の大幅な減少とグローバル戦略への打撃は避けられない。
米国のTikTokユーザー数は2025年中に1億1660万人を突破し、2029年には1億3520万人に増加すると予測されている。TikTokの広告収入は2025年に前年比24.5%増の320億ドル(4兆7300億円)に達すると予測されているが、うち3分の1以上の118億ドル(1兆7400億円)が米国での収入だ。
見逃せないのが、米国におけるTikTokユーザーの半数近い49.3%が1997年から2012年の間に生まれたZ世代(13〜28歳)の若者たちであること。米調査会社のNIQによると、彼らの購買力は2030年までに全世界で12兆ドル(約1800兆円)に達すると予想されている。当然、米国市場で莫大な広告料収入が見込めるため、「ドル箱市場」の米国から撤退することはできない。
さらにトランプ政権からの「譲歩」もあった。完全な売却ではなく、米国市場における技術的資産やユーザー体験への関与を、限定的ながらも維持できる。
この譲歩がトランプ大統領の配慮ではなく、TikTokの利用継続を求める米国人ユーザーの猛反発を受けての方針転換だったことで、中国側の体面が守られたのも合意に至った要因と考えられそうだ。
形式上はTikTokの「売却」に応じる形となり、中国政府がトランプ大統領の「顔を立てた」。中国にとっては米国に対する「貸し」であり、今後の厳しい貿易交渉で有利に働く可能性もある。
ともあれ、今回の売却合意は、米中間の貿易摩擦や技術覇権競争における「モデルケース」となるのは間違いない。
配信元:文:M&A Online
下記情報を無料でGET!!
無料セミナー、新作研修、他社事例、公開講座割引、資料プレゼント、研修運営のコツ
※配信予定は、予告なく配信月や研修テーマを変更する場合がございます。ご了承ください。
配信をご希望の方は、個人情報保護の取り扱いをご覧ください。
無料セミナー、新作研修、他社事例、公開講座割引、資料プレゼント、研修運営のコツ

登録は左記QRコードから!
※配信予定は、予告なく配信月や研修テーマを変更する場合がございます。ご了承ください。
配信をご希望の方は、個人情報保護の取り扱いをご覧ください。
人事のお役立ちニュース