銀子の一筆

なぜかしら

最近は四季のメリハリがつきにくくなり、通年三寒四温に振り回されている気がする。が季節はやはり進んでいて、少しずつ日脚が伸びるのが嬉しい。自然の災い・世情の混乱に落ち着かない日々だが、人間も少しずつは成長して穏やかになる平和な春が来ると信じたい。

日常で見過ごしがちな多くのことに、不思議は溢れている。科学的には解明されているが、牛蒡の変色・虹の出現など、心に小さな感動をよぶ。子供と話していると「空はどうして青いの?」「冬はどうして寒いの?」と、「なぜ」に攻められる。そんな時には、神様が決めたから、とか大きくなったら分かるよ、などと言わずに(分かる範囲で簡略に)太陽の力・水蒸気・光の見え方・偏西風のことなどを、なるべく正確に説明する。ほとんど聞いてくれないし、理解していないし、すぐに忘れるだろうが、嘘は言わないことにしている。知らないことは「知らない」でいいが、知っている範囲のことは説明して、あとは自分で調べてください、調べて分かったら教えてください、と言う。フィードバックはないが。

■なぜかうまくいかない

好奇心が旺盛な子どもの世界ばかりではない。ビジネス社会でも「なぜ」は溢れている。
職場では、なぜか業務を点ですませ線としての流れが見られない・なぜか全員でベクトルを合わせて目標を目指す動きがない・なぜか1人でも欠けると業務に滞りが出るし他部署との連携も悪い・なぜか各自の強みを活かした活動がなく、若手が成長する機会がない・なぜか人が定着しなくなっている.........なぜか自分の心は軽くならない。
始終、組織内の悩みが尽きない気がしているビジネスパーソンは多い。組織の現在値を判断するデータや新規事業の可否を計る分析・開拓分野の企画検討など、論理的な解決の方向を探る方法は数多くあるのに、依然として組織内の悩みは尽きないようだ。

それこそなぜだろう。問題と課題は違うこと、解決には相応の手順があることなどは承知しているはずなのに。組織の理念・資金の余裕・人員の絶対数・労働条件・福利厚生・教育状況など、さまざまな要因が複合的にまたは連鎖的に作用して、組織内が不安定な空気になることがある。最大公約数的に考えれば、心理的安全性がある潤滑なコミュニケーションが解決策の基本にあると思える。が、多様な価値観をもつ生身の人間同士がビジネスという共通項で動くことは、それほど簡単ではない。

■「なぜ」を積み上げる

別人格を尊重しつつ親和を心掛ける人間関係だけでも難しいのに、さらに仕事に関わる階層や立場・利害や資質の異なる人間を、誰にもシワ寄せや不愉快が及ばないように問題究明するのは非常に困難なことに思える。そこで、切り口を変えて単純な「なぜ」を一つずつ重ねて原因を探し、改善に向けた解決策を求める「なぜなぜ分析」という手法がある。これとて他のすべての分析手法と同様に最初の「なぜ」の設定が適切でないと、単なる犯人探しになったり堂々巡りの不毛の分析になりやすい。それなりの手順とルールがある問題改善の方策だ。考える習慣や探す訓練、基本の信頼や成長意欲の歩調が揃ってこその効果だとは思うが、私は素敵な考え方だと思う。

■「なぜ」を単純化する

世の中にある疑問の本質的な問題は、成り立ちや歴史的背景、多方面との力関係や対応の可能限度、時間や人員数などの内部事情により、話が複雑になり過ぎていると感じることがある。もちろん、もちろん、現実の状況は本当に複雑で、解決のスキルも多種多様で選択肢が多いのも事実だと理解している。が、時に当たり前の原理原則に立ち戻って単純化して考えると意外にスッキリと道筋が見えることがある。単なる「嘘」だったり「聞きまちがい」が原因の場合も少なからずある。単純なことの方が難しい場合もあるのだが。
組織を揺るがすような問題ではないが私は自分の問題で、もしもこれが人類の進化過程だったら・もしもこれが季節の移行だったら・もしもこれが料理の手順だったら、と置き換えて考えてみることがある。

世の中や人間は、私が知恵や知識を絞って考えるよりずっと複雑怪奇だが、私が頭で考えるよりもずっとシンプルな道理で動いていると目が開くことがある。分からないことは、考えて・調べて・聞いて学んで、繰り返し練習して身につくのだろうが、時に視線を外して自分が動物だったら・子どもだったらどう動くか、と気持ちを他の角度にしてみると靄がかかった世界がくっきり晴れて見えることがある。
何より自分に独力で複雑な問題を解決できるほどの力量は無いと感じたら、率直に原点に「なぜ?」と問うて協力を仰ぐことが最善だと分かる。すると、なぜか仕事が楽しくなる。

2024年2月19日 (月) 銀子

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