2026年2月09日
金融庁が地方銀行のM&A仲介子会社の設立を認める方向で制度見直しを進めていると、日本経済新聞が伝えた。長年、地銀は中小企業の事業承継の"最初の相談相手"でありながら、仲介業務そのものは外部の独立系業者に頼らざるを得なかった。制度改正により、地銀グループが出資から譲渡まで一貫して支援できる環境が構築されると、地域金融の役割は大きく変わる可能性がある。この動きは国内M&Aに何をもたらすのか。
金融庁は2025年末をめどに「地域金融力強化プラン」を策定し、投資専門子会社の業務範囲にM&A仲介を追加する方向で検討しているという。実現すれば、地銀が正式に仲介プレイヤーとして市場に参加することが可能となり、出資先企業の成長支援や事業承継をグループ内で完結する体制が整いそうだ。
地銀は長年、地域企業の資金繰りや事業承継、経営者保証といった相談に対応し、M&A案件の起点として重要な役割を担ってきた。しかし、仲介業務は利益相反や銀行法上の制約から実務上は外部の仲介会社に委ねるケースが多く、仲介手数料収入の多くを外部の仲介会社が得てきたとも指摘される。言い換えれば、売り手企業からの事業承継相談や案件の発掘は地銀、最終的な成約は仲介会社という分業が続いていた。
金融庁がM&A仲介を解禁する背景には、三つの要因がある。
第一に、後継者不在の急増だ。中小企業庁の試算では、2025年までに70歳超の経営者約245万人のうち約半数が後継者未定になる可能性があるという。事業承継M&A需要は今後さらに拡大が見込まれる。
第二に、地銀が最も地域企業に近い立場にあること。制度制約のため仲介を外部に依存してきたが、地域経済の持続性を考えれば地域内のプレーヤーで完結する方が効率的だ。
第三に、経済産業省の「中小M&Aガイドライン」改訂に伴う「仲介の質」の問題がある。行政は信頼度の高い地銀が市場に参加することで、M&A業界全体の健全化が進むと見ている。
制度改正を待たず、既にM&A支援を強化する地銀は多い。2025年7月に京都フィナンシャルグループ(FG)がM&A子会社「京都M&Aアドバイザリー」を設立して専門人材の採用拡大を進めるなど、複数の地銀がM&Aの"内製化"へ向けての準備を進めている。
地銀の参入は独立系仲介会社と競合するとの見方がある。だが、市場の構造と案件の性質から考えれば、一定の棲み分けは自然に進む可能性が高い。
企業価値1〜10億円の小規模な事業承継案件は、借り入れ整理や経営者保証解除支援など銀行機能が不可欠で、地銀系M&A仲介会社に歩がある。大手独立系仲介会社が手数料の少ない小規模案件を敬遠する傾向もあり、小規模事業承継というニッチ市場で存在感を高めるだろう。
一方、大企業のカーブアウトやPEファンドのエグジット、スタートアップM&Aといった高度な専門性が必要な大型案件は、従来通り独立系仲介会社や投資銀行が主導するのは間違いない。
棲み分けが進むと想定される理由は四つある。
第一に、案件規模と専門性の差である。大型案件ではバリュエーション、デューデリジェンス(DD)、PMI(買収後の経営統合プロセス)など高度な専門力が求められ、地銀が短期で追いつくのは難しい。
第二に、利益相反リスクという構造問題だ。仲介は売り手・買い手の双方から手数料を得る"両手取引"だ。地銀はメインバンクとして長期取引を持つケースが多く、本体の信用を毀損しかねない利益相反懸念が依然として残っている。
第三に、事業承継分野では地銀が最も相談を受けやすく、すでに地域企業との接点が圧倒的に多い。
第四に、M&A市場は拡大を続けており、プレイヤーの増加は同じパイの奪い合いではなく、得意分野に特化した仲介会社の機能分化につながりやすい。
売り手企業にとっては、地銀が仲介を担うことで、金融支援と承継計画を一体で設計できるメリットが大きい。地域事情や雇用維持に配慮したマッチングが期待できる点も強みとなる。
買い手企業にとっては、地銀経由で地域案件へのアクセスが広がり、事業戦略上の選択肢も増える。独立系仲介会社は大型・専門案件で引き続き強みを発揮するため、企業側は自社ニーズに応じて相談先を選びやすくなる。
地銀のM&A仲介子会社解禁は、地域の承継支援の底上げと市場の機能分化を同時に促す政策転換となる可能性が高い。案件の起点を押さえる地銀と、高度専門性を持つ独立系仲介会社が並存できれば、国内M&A市場は過当競争を回避して安定成長期に入ることになるだろう。
配信元:文:M&A Online
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