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ENERGY vol.16(2025年秋号)掲載

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Z世代の真の特徴~思春期化する若手社員の羽化を促す

昨年より幼く見える新人

「今年の新人は、学生気分が抜けない人が多くなった気がする」。管理職の方々から毎年のように耳にするこの言葉。社会人としての成熟度や振る舞いに「子どもっぽさ」を感じることがみなさんにもあるのではないでしょうか。

近年の新人にあたる2000年前後に生まれた若手は、Z世代と呼ばれています。インソースがまとめたZ世代の主な特徴には、次のようなものがあります。

  • ・失敗したくない気持ちが強い
  • ・何事も無駄なく最短で行いたい
  • ・同期はライバルでなく仲間
  • ・意義や目的を重視する
  • ・ワークライフバランスを重視する

これらは一見、大人びた合理性や高い協調性の表れのようにも映ります。しかし、実際の職場では、成熟した大人とは真逆の印象を持たれることも少なくありません。そう感じるのは、育ってきた時代や環境の違い、すなわちジェネレーションギャップだけが理由ではありません。心理社会的な観点から捉えなおしてみると、「幼さを感じる若手」の本質が見えてきます。

Z世代が抱える「未成熟さ」の正体

長寿化や社会の変化にともない、人の精神的な成熟のプロセスは長期化しています。Z世代が社会人になるタイミングは、彼らのライフサイクルの中でどのように位置づけられるのでしょうか。アイデンティティの概念を提唱した発達心理学者、エリクソンの理論を手がかりに見てみましょう。

エリクソンは、個人の心理と社会との相互作用といった観点から、人生を乳児期から老年期まで8つの段階に分けました。また各段階で達成すべき心理社会的課題と達成するために訪れる危機を示しています。実は、先に挙げたZ世代の特徴は、5番目にあたる青年期(思春期、アメリカでいうティーンエイジャー)の特徴と多くの部分で重なります。青年期前後の各段階の特徴は次の通りです。(図参照)

●児童期
  • ・役に立っているという感覚、仕事を達成させる喜び(勤勉の感覚)
  • ・不全感や劣等感(劣等感の危機)
●青年期
  • ・自分自身と、他人の眼に自分がどう映るかを比べる
  • ・理想と培ってきた役割や技能をいかに結びつけるか考える(アイデンティティの危機)
●成人前期
  • ・仕事し、交際し、結婚して家族をもつようになる
  • ・危険と感じられる力や人物を拒絶する(孤立の危機)

自分らしさを求める、他人の目を気にするなど、Z世代の若手は社会人となってもなお「自分は何者か」を模索し続けているといえます。今の管理職にあたる世代にとっては、中高生のころに経験した気持ちではないでしょうか。大人と子どもの境界に立つ思春期の心理が、社会人生活のスタートラインにまで長引いているのです。

遅れて「大人化」するZ世代の育成

青年期の特徴を色濃く持つ若手は、上の世代から見ると、社会人としての成長がゆっくりと感じられるかもしれません。しかし、それは子どもから大人への過渡期にある彼らが社会に適応するにあたり必要なプロセスです。だからこそ、焦らず丁寧に育成する姿勢が求められます。上司として指示・指導するだけでなく、大人の先達として悩みを聞き、相談に乗ることで、Z世代も着実に大人になっていきます。

子ども扱いでなく「挑戦の場」を

エリクソンは、青年期を「大人になるための役割実験」を積極的に行い、大人社会での居場所を模索する時期としています。具体的には、若手をあえてリーダーに任命する、若手中心のプロジェクトチームをつくるなどが有効な手立てです。幼く感じるからと子ども扱いするのではなく、手厚いサポートを前提に挑戦の舞台を用意することが、成長を後押しします。

育成の時間も投資と捉え未来を耕す

Z世代の若手が抱える青年期的心理を理解すれば、育成アプローチは自然と変わってきます。

今の若手の育成は、内定者教育から入社後まで、長期的な視点で計画する必要があるといえます。時に幼く感じる若手に社会人としての挑戦の場を提供し、じっくりと本物の大人へと育てる。それは、企業の未来そのものを耕す行為でもあるのです。

文/細谷 美宇

株式会社インソース
グループコンテンツ開発本部
クリエイティブ事業部  チーフクリエイター
東京学芸大学大学院修了
東京国立近代美術館、宮城県美術館で学芸員として教育普及事業を担当。学校向け鑑賞・体験プログラムの企画運営やボランティアコーディネーターを経験し、2024入社。コンテンツ開発職として研修テキスト作成、新作コンテンツ開発を行う

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