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ENERGY vol.17(2025年秋号)掲載

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経営戦略として、デジタルアカデミーを創設し、デジタル人財を育成する【清水建設株式会社】

清水建設株式会社DX経営推進室管理部長の丹治弘典様に、インソースデジタルアカデミー杉山最高顧問がインタビューしました。

経営基盤の強化に向けたDX教育

ーまずは貴社の経営戦略におけるデジタル人財の育成の意義・位置づけについてお聞かせください。

2024年に策定した中期経営計画<2024―2026>の中で「経営基盤の強化」のKPIとして、「DXコア人財120名育成、全部門配置」を具体施策に掲げています。並行して、中期DX戦略<2024―2026>も策定しており、その中では「業務プロセス改革の実行」「データを活かしきる経営」という2つの目標を掲げています。これらの目標達成に向けた重要な施策として、デジタル人財育成を位置づけています。

ー今回、当社がパートナーとして運営協力している「シミズ・デジタル・アカデミー」はデジタル人財育成の中核にあたりますか

中期DX戦略<2024―2026>の重点施策の1つである「人財の育成・採用」の一環として、2024年4月から「シミズ・デジタル・アカデミー」を開校し、目的やレベルに応じて3つのステップに分けてデジタル人財の育成に取り組んでいます。(図1参照)

図1:「シミズ・デジタル・アカデミー」デジタル教育の全体像

ー今回、当社をパートナーにお選びいただいた理由を教えていただけますか。

DXを全社で推進していく上では、これまで取り組んできた業務効率化はもちろん、今後はそこから得られたデータをビジネス拡大にどう活かしていくか、そこまで踏み込んでいく必要があります。複数社の候補先からパートナー企業を選定するにあたり、DX人財育成の実績があり、DXの本質に精通していること。加えて、他社との連携により幅広くコンテンツが提供できる、プラットフォーム的な側面を持つことに大きな魅力を感じ、今回貴社をパートナーに選定いたしました。結果、大変良かったと社内でも評価しています。

ー高く評価いただき、大変光栄です。今回、「DXコア人財育成」の教育体系づくりは大変ご苦労されたことと思いますが、プログラムのポイントや丹治様の想いについて教えてください。

教育には答えがなく、体系を模索する中で、当社の教育も世の中の標準に合わせるべきと考えました。実際に経済産業省のデジタルスキル水準をベースに当社の人財ロールに落とし込んでみた結果、「DXプロデューサー」「DXテクニカルプランナー」「ITテクニカルプランナー」の3つのタイプに分けることにしました。(図2参照)

図2:DXコア人財3つのタイプ

DXを学んだその先に

ー実際に1年間取り組まれた成果についてお話しください。

3カ年計画の1 年目である2024年度は第1期生として、21部門からDXプロデューサー24名、DXテクニカルプランナー23名の計47名の研修生が集まりました。アセスメント結果からも各人の成長を実感しています。また、研修の最後にはチーム毎の成果発表会を実施し、優秀チームは当社社長へのプレゼンテーションを行いました。実際に研修を受けた生の声を届け、社長からも高い評価をいただきました。

ー参加された方やこれから参加する方のモチベーションも上がりますね。

はい、研修修了後は1期生を対象に、PBL(Project Based Learning)にも取り組んでおり、学んで終わりではないことも体現出来ていると感じています。

ー研修を通じて、異なる部門間で研修生同士の新たな交流があったことも、全体最適の観点で、事業を横串で考えるきっかけになったのでないでしょうか。

おっしゃる通りです。まだまだ業務の標準化が十分に出来ていないという課題がある中で、業務プロセス改革を構築するためには、部門間の壁をなくし、標準化していくことが重要だと考えております。今回の研修は、部門間の交流を活発化させる良い機会になりました。

ー具体的な成果も上がり「シミズ・デジタル・アカデミー」に参加したいとの社内の声も大きくなっていると思います。次の構想はどのように考えられていますか。

1年目は、本社部門を中心に参加者を募りましたので、2年目からは全国の支店へと裾野を広げ、支店間の交流も出来たらと考えております。既に2期生の募集も開始しておりますが、反応も良く、嬉しく思っています。

また、経営陣のDXリテラシーを向上させる「エグゼクティブコース」にも取り組みたいと考えています。

共創で業界を牽引する

ー日本を代表するスーパーゼネコンである貴社のDXへの取り組みは、業界全体に好影響をもたらすと思いますが、いかがでしょうか。

企業の垣根を超えた共創によって、イノベーションを推進していくことは、当社の2030年に向けた長期ビジョンの中で目指す、「スマートイノベーションカンパニー」としての姿でもあります。それを具現化したのが、2023年9月に運用を開始したイノベーション拠点「温故創新の森 NOVARE(ノヴァーレ)」です。今回も研修会場として使用しましたが、ここを起点に業界の発展に貢献していきたいと考えております。

ーそのような価値ある取り組みに、今回ご一緒させていただけたこと、大変光栄に思います。当社は今後も経営目標実現に役立つ提案をさせていただく所存です。

丹治 弘典

清水建設株式会社 DX経営推進室 管理部長(※)

2025年取材時

本コラム掲載号の記事一覧

2025 AUTUMN

Vol.17 企業課題を解決

Vol.17は、「企業課題解決」がテーマです。労働人口の減少など企業を取り巻く環境が大きく変化する中で、 成長し続けるために経営戦略や人事戦略を改めて考えていくことが求められます。 本誌では、企業インタビューによるDX人財育成の事例や人的資本経営をサポートするソリューション事例をご紹介しております。

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