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ENERGY vol.16(2025年秋号)掲載

PICKUP

新人・若手世代の育成方法のアップデート

近年の新人の課題は「応用力」

毎年多くの新人社員の方に当社の研修を受講いただき、新人の傾向として受講者の様子を分析しています。近年の傾向は、強みは「指示通り確実に実行できること」、課題は「自ら考えて動く主体性や応力」です。講師からは「演習は正解を出すところまでで終わってしまう」といった声が聞かれ、学習したことを応用したり、深く考えたりする点に課題がある結果となっています。

増える新人・若手向けの研修

企業・組織側は、新入社員として期間が長い研修や複数テーマでの研修を企画することが増えています。近年の新人・若手の傾向をふまえた育成や離職対策としての取り組みが、企業・組織の研修計画あらわれていると感じます。

ゆっくり丁寧に寄り添う育成

Z世代の特徴として「大人になるスピードが遅くゆっくり成長する」という点があります。その特徴をふまえると、新人・若手の育成のキーワードは「ゆっくり丁寧に育てる」ということです。新人・若手の期間を育成期間として長くとらえ、内定者から3~5年目くらいまで長い目で見た研修計画を立てる必要があります。当社ではベーシックな新人研修として、「ビジネス基礎研修」をご提供しています、長期間での育成を見据え、「2年目のビジネス基礎研修」、「3年目のビジネス基礎研修」を新たに開発しました。1年目~3年目まで、それぞれのテキストに研修の振り返り用のセルフチェックシートつけるなど、3年間を通しての育成ができる仕掛けをつくっています。

疑似体験で学びを蓄積する

一方で、企業・組織としては、採用した新入社員に早期に戦力として活躍してほしいと考えるでしょう。現在の新人には、新人のうちに多くのことを研修として疑似体験させ、学びとして蓄積しておくのが効果的です。学んだことは実行できるという強みを生かし、発展的、実践的な内容を研修内容に盛り込むことで、早期戦力化につなげることができます。

実践重視で応用力を鍛える

当社ではシミュレーション型の研修の他に、ケーススタディを解きながら深く課題を考えていく「問題解決ワークショップ」の研修を1~5年目までの各年次で開発しております。例えば、「誤ってデータを消してしまったが、すぐには先輩には連絡がとれない」といったケースにおいて、何を判断し、どう行動するか、自分の行動やその理由もしっかりと考えていく内容です。1日のうちで5~6つのほどケーススタディをワークショップとして多様に深く考えることで、応用力の醸成をしていきます。

失敗も研修で先に経験させる

「失敗したくない」というのも近年の新人の傾向の一つですが、仕事をするうえで、失敗は避けて通れません。研修で失敗も先に経験することで、失敗への恐怖心を軽減させ、対応策を教えることができます。その点でも、正解が一つに定まらないシミュレーションやワークショップなどの研修で試行錯誤することが効果的であると考えます。

デジタルで得意分野をつくる

さらに、新人・若手の早期活躍で有効な施策の一つが得意分野を早くつくることです。デジタル分野は、新人・若手にとっては得意な人も多く不慣れであっても、早く覚えることができます。スキルが身についたことがわかりやすいことも特徴で、新人・若手にとって重要な「成長実感」を得られやすくもあります。また、デジタル分野は上司・先輩の世代には苦手とする人もいて、新人・若手がスキルをにつけることが、組織内での早期活躍につながります。早期に活躍してほしいという企業・組織側の想い、成長実感がほしいと考える新人・若手側の想い、双方の想いを叶えられるのがデジタル分野と言えます。

育成側の意識の変化も重要

新人・若手の育成にあたっては、育成する側の意識の変化も重要です。 指導者側向けの研修についても、年々重要度が増しています。初めて指導する方だけでなく、これまで指導者研修を受講済という方にも意識のアップデートが必要になっています。新人研修とセットでの計画をおすすめいたします。

当社のZ世代社員のリアルな声

新人・若手世代が、どのような育成を望んでいるかについて、当社のZ世代社員の声も紹介します。

経験不足による不安や戸惑い

私たちZ世代は、仕事の「意味」や「目的」を重視し、自分の成長を実感できることに価値を感じています。ただ、経験が浅いために不安を抱く場面も多く、最初から完璧にこなすことを求められると、少し身構えてしまいます。

望むのは「寄り添いながらも任せてくれる」育成スタイル

そんなとき、大きな支えとなるのは「失敗しても大丈夫」と背中を押してくれる環境や、気軽に声をかけられる先輩の存在です。小さな成功を積み重ねながら、成長を言語化したフィードバックをもらえると、それが確かな自信につながっていきます。

また、「どこまで任されているのか」といった行動範囲が明確だと、迷いなく業務を進めることができます。「自分らしさ」や強みを発揮できる場があれば、さらに力が湧きます。

若手が本当に力を発揮できるのは、一人ひとりに寄り添いながらも、本気で任せてくれる育成スタイルの中にあると感じます。

文/矢野 由香里

株式会社インソースクリエイティブソリューションズ 執行役員
九州大学文学部卒
情報誌の編集職、市場調査会社の企画職等を経験し、2015年入社。コンテンツ開発職としてこれまで1,000件以上の研修テキスト作成に携わり、新作コンテンツの開発を多数行う。2023年10月より現職。2025年4月より株式会社インソース総合研究所 特任研究員を兼務

本コラム掲載号の記事一覧

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Vol.16 Z世代・シニアと向き合う

Vol.16は、「Z世代・シニア人材」がテーマです。価値観の多様化が進むZ世代の育成やシニア人材の活用に課題を抱える企業も少なくありません。 本誌では、人事アンケートから見るZ世代、シニア人材の現状をご紹介します。また、Z世代の特徴を踏まえた育成方法や シニア層へのアンケートを通してシニア人材のリスキリング戦略をお伝えします。

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Vol.17 企業課題を解決

Vol.17は、「企業課題解決」がテーマです。労働人口の減少など企業を取り巻く環境が大きく変化する中で、 成長し続けるために経営戦略や人事戦略を改めて考えていくことが求められます。 本誌では、企業インタビューによるDX人財育成の事例や人的資本経営をサポートするソリューション事例をご紹介しております。

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