営業として5年後、10年後に輝くための「3つの羅針盤」
営業の仕事は、お客さまとの信頼関係の上に成り立っています。その第一歩として、「身だしなみを整える」「何事にも素直な姿勢で、感謝の気持ちを忘れない」といった心構えが重要であることは、言うまでもありません。これらは、すぐに実践できる基本的な姿勢としてぜひ大切にしてください。
本コラムでは、そうした基本を踏まえたうえで、さらに一歩踏み込みます。
これからあなたが長い営業キャリアを歩む中で、思うように成果が出ず壁にぶつかった時や、進むべき道に迷った時に、あなたを支え、導き続けてくれるであろう「3つの羅針盤」についてご紹介します。
羅針盤1:すべての土台となる「三方良し」の精神
「三方良し」とは
「三方良し」は「売り手よし、買い手よし、世間よし」という、近江商人の経営哲学として知られる言葉です。自分の利益(売り手よし)と相手の利益(買い手よし)が一致するのはもちろんのこと、その商いが社会全体にとっても良い影響を与えるべきだという考え方を示しています。
- 買い手よし:この提案は、本当にお客さまのビジネスや生活を豊かにし、成功に貢献できるものか
- 売り手よし:この取引は、自社に適正な利益をもたらし、継続的なサービス提供を可能にするものか
- 世間よし:この商いは、法令を遵守し、社会倫理に照らし合わせて胸を張れるものか
「三方良し」でお客さまとの信頼関係を築く
営業活動を行う中で、どうしても目先の数字や目標達成に意識が向かってしまう瞬間があるものです。この契約が取れれば目標を達成できるという気持ちが先行し、お客さまにとっての真の価値提供が二の次になってしまうと、どうなるでしょう。
たとえその場では契約に至ったとしても、お客さまが不利益を感じたり、「自分のことを考えてくれていなかった」という不信感を抱いたりすれば、長期的な関係は望めません。短期的な成功と引き換えに、営業にとって最も大切な資産である「信頼」を失ってしまうのです。
営業経験がまだ浅い方だからこそ、最初にこの考え方を核に据えることが肝心です。どのような提案をする時も、常に心の中でこの「三方良し」の天秤にかける習慣をつけましょう。
羅針盤2:「守破離」の「守」から始めよう
守破離とは、学ぶ・破る・離れるの三段階を経て、独自の境地を確立すること
新しいことを始める時、自分なりのやり方で工夫したいという意欲が湧くのは、自然なことです。しかし、営業の世界においては、その意欲をまず「真似る」ことに向けてみましょう。茶道や武道で用いられる「守破離(しゅはり)」という考え方が、あなたの成長を加速させるヒントになります。
「守破離」とは、修行における段階を示したものです。「守」は、師の教えや型を忠実に守り、完全に身につける段階。「破」は、師の型を破り、自分に合ったより良い型を模索する段階。「離」は、師の型から離れ、独自の道を確立する段階を指します。
上司・先輩から営業の型を学び、自分のものにする
営業としてのキャリアを歩み始めたあなたは、まさに「守」の段階にいます。あなたの周りにいる成果を上げている上司や先輩の仕事の進め方は、これまでの数えきれない成功と失敗の上に成り立った、いわば「勝つための型」です。その「型」には、お客さまの心を開く一言、最適な提案のタイミング、説得力のある資料の構成など、成果に繋がるエッセンスが凝縮されています。まずは、その上司・先輩の完全な模倣を目指してみてください。
商談での話し方はもちろん、声のトーン、メールの文面、時間の使い方に至るまで、徹底的に真似ていきます。我流で闇雲に試行錯誤を繰り返すよりも、成功者の「型」を真似て成功体験を積むほうが、成長への圧倒的な近道となります。
羅針盤3:腐らず、焦らず、諦めず
営業は、地道な活動の積み重ねです。特に最初のうちは、次々と断られたり、一生懸命準備した提案が響かなかったりと、成果が出ないことの方が多いかもしれません。そのような苦しい時に、ぜひ思い出してほしい心構えがあります。それは、「必ず誰かが見ているので、腐らない」ということです。
営業の評価は、契約件数や売上といった数字だけで決まるわけではありません。たとえ成果に結びつかなくても、お客さまの課題解決のために真摯に情報を集める姿、社内のメンバーに協力をお願いする際の丁寧な姿勢、誰もやりたがらない地味な業務を率先して引き受ける行動。そうしたあなたの日々のひたむきなプロセスは、必ず上司や先輩、そしてお客さままでもが見守っています。
「今日は目標件数の電話をかけることができた」「昨日より一件多くお客様を訪問できた」そのような行動した自分を認め、褒めることが、次の一歩を踏み出す力になります。
おわりに
ここまで、5年後、10年後に輝くための「3つの羅針盤」として、「三方良し」「守破離」「腐らない心」についてお伝えしました。これらのマインドは、日々の業務の中で意識し続けることが何よりも重要です。
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